平成9年2月10日より
経済コラムマガジン


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97/9/22(第34号)
  • 当マガジンのネット上での表示が第32号からおかしくなっていると言う指摘を何人かの方からメ-ルで受けております。筆者のシステム環境では特に問題はないのですが、どうもウインドウズ上では問題があるようです。現象は、文章がうまく改行されず、横に長く表示されていることです。原因はまだ分かりません。もしこの原因が分かる方がいらっしゃるようでしたら是非ご連絡下さい。

ロッキ-ド事件と経済を考える
  • ロッキ-ド事件について
    佐藤孝行氏の総務庁長官就任で、政界は混乱している。氏はロッキ-ド事件に関与したと言うことで有罪が確定し、刑に服した(執行猶予付き判決であったが)。そうゆう人物が大臣になることの是非が問題となっているのであろう。ひょっとしたら、この号が出るまでには決着がついているかもしれない。
    筆者の意見は、法律で禁止されていない(過去に有罪判決を受けた者は大臣になってはいけないと言う決まりはないはずである)なら大臣に就任すること自体特に問題ではないと考えるからである。むしろ大臣に就任し、しっかり仕事をしてもらった方が良いと考えている。問題は総理大臣の政治的判断である。この事が裏目に出て、自民党の支持率が下がって政局運営が難しくなれば、判断ミスと言うことになるが、就任直後、何も仕事をしていない時点から「やめろ」と言うのも変な話である。さらに佐藤孝行氏が大臣になって自民党の支持率が低下すると言うなら、むしろ野党は喜ぶべきではないか。いつものことではあるが、日本の野党の行動も理解し難いのである。
    理解し難いと言えばこの「ロッキ-ド事件」ほど理解に苦しむ事件もめずらしい。表面化した範囲の事件の概要は「ロッキ-ド社が旅客機製造に進出し、トライスタ-と言う旅客機を日本の航空会社に売り込むために、日本の政治家等にワイロを送った」と言うものである。ワイロを受け取った中心人物が田中角栄元総理と言われている。しかし、この事件が明るみに出た発端は、この贈収賄事件に係わる書類やメモがまとめて米国のSEC 、つまり米国証券取引委員会に届けられたことであった。これは運んでいたトラックの運転手が届け先を間違えてSECに持ち込んだと言う話である。こんな事は有りえないことであり、極めて妙なことである。裁判も異例づくめであった。当事者であるワイロを送った側のロッキ-ド社の関係者は誰も裁判に出廷していないのである。ロッキ-ド社の関係者は刑事責任の免責を条件に、証言を行なうと言うものであった。このため日本の検事が米国に赴き、尋問を行ない調書を作成した。そしてこの反対尋問もできない調書が証拠に採用され、裁判は進行したのである。
    佐藤孝行氏の総務庁長官就任の決定した日のニュ-スでは、立花隆氏のコメントが注目された。立花隆氏は田中金脈事件以来、田中角栄元総理に関する取材を継続的に行なってきた。当然この「ロッキ-ド事件」にも詳しい。話はちょっとずれるが、特に職務権限についての氏の見解は面白いと思われた。氏は「職務権限がなくても実質的に影響力を及ぼしたなら、それは罪になる」と言う考えである。ちょうど「無免許の人間が車に乗って事故を起こした場合に、事故を起こした罪に無免許で車に乗ったと言う罪が加算されるように、贈収賄の罪に職務権限がないものが権限を行使したと言う罪が加算されてしかるべきである。職務権限がないから無罪と主張するのは、無免許のため車にのれないはずだから、事故を起こせないと主張するのと同じである。」と言う考えである。これには筆者も賛成である。
    ニュ-ス番組のコメントでは、その立花隆氏は「自民党が長老の支配が今だ強い」とコメントしたが、佐藤孝行氏と「ロッキ-ド事件」については何も触れなかったのである。たしかに放送でカットされた可能性もあるが、ひょっとすると立花隆氏は「ロッキ-ド事件」自体の本質は、マスコミでの取り上げられ方とはかなり違うと考えているのかもしれない。

  • ロッキ-ド事件の経済への影響
    ロッキ-ド事件の経済に及ぼした影響は、旅客機製造業界で寡占化が進んだことである。ロッキ-ド社はこの事件以降、旅客機の製造を止め、旅客機製造から撤退してしまった。そして数年前に日本ではトライスタ-は現役を引退した。意外なことは、関係者は「トライスタ-は良い旅客機であった」と言っていることである。たしかにトライスタ-は騒音を押さえる設計になっており、環境を考えた需要者指向の発想で造られた旅客機である。たしかに、空港が都市部に近接している日本には向いている旅客機だったかもしれない。
    旅客機製造業界は、MDがボ-イング社に吸収合併され、ますます寡占化が進んでいる。ほとんどボ-イング社の独占状態と言って良い。この状態が本当に良いことなのか、筆者は疑問である。
    実際、日本のように人口密度が高く、空港に適する土地が限られている国に対しては、その実情に合った旅客機が製造されてしかるべきと考えられるのである。日頃から考えるのだが、これだけ色々な技術が進歩していながら、今だに何千メ-トルも滑走路がないと安全に止まれないと言う旅客機しかないと言うのも不思議である。どの国も米国のように土地が余っているわけではない。これが、メ-カがユ-ザのことをあまり考えていないと言うことが原因ならば、まさしくこれこそ寡占の弊害と言えるであろう。

  • ロッキ-ド事件の周辺
    ここからの話は、どれだけロッキ-ド事件に関係しているか不明である。しかし当時の政治状況がある程度この事件の背景になっていた可能性もまた否定できないのである。
    ロッキ-ド社はニクソン大統領との関係が深かった。ニクソン大統領のスポンサ-であったことも十分考えられる。そしてこの大統領と田中角栄元総理の境遇は良く似ている。どちらも「力」があり、かなり思いきった政策を行なったが、両方ともスキャンダルで表舞台から失脚した(もっとも田中角栄元総理は陰で力を長い間保持したが)。また、両者の経歴は決して平坦ではなかった。そして両者ともエスタブリッシュメントの立場の人からは「うさんくさい危険な人物達」と見られていたのではないか。
    例えばニクソン大統領は、突然共産党が支配する中国と国交を開き、周囲を驚かせた。田中角栄総理は、北方領土の交渉の進展を条件にソ連のチュメニ油田の開発への協力を約束してきた。当時は気がつかなかったが、これは意外と重大なことではなかったかと考えている。米国の保守的な人々にとって、当時のソ連は冷戦の相手国であり、「悪魔の住む国」であったろう。そこに同盟国であるはずの日本の首相が出かけて行って、戦略物資である「石油」の開発に協力すると言う約束をしてきたのだから、これらの人々が田中角栄総理に対して相当大きな不信感を持ったとしても不思議はない。日本人が元々戦略的な思考が苦手なのか、当時このような事態を考える人は皆無に近かったし、また日本マスコミもほとんど報道しなかった。つまり日本は米国の反応に気が付かなかったのである。
    田中角栄元総理は、考えられているより、ずっと「愛国者」的な人物ではなかったかと筆者は考えている。オイルショック前の当時は、世界の石油はメジャ-の支配下にあった。そこで、米国からの真の独立を確立するには、まず自前でエネルギ-を確保が必要と考えたのではないか。また、筆者は田中角栄と言う人物が「石油」と言うものに異常に思い入れが強かったのではないかと考えている。氏については、国際感覚が欠落しているとよく言われたが、このソ連への接近だけは、筆者には、かなり「確信犯」的要素が感じられる(もっともチュメニ油田の石油をパイプラインで日本に送ると言うアイディアは、途中寒いシベリアを通るため、油質にもよるが技術的に難しいと思われるが)。筆者にも、これらのことがロッキ-ド事件の背景にあったととても断言できないが、あまりにも妙な事件だったので、ストリ-の一つとしては面白いかもしれないと考えているのである。
    ロッキ-ド事件は表向きには単純な出来事として理解されているが、我々が知っていることは、真相の数パ-セントではないか。マスコミも、ロッキ-ド事件では端役に過ぎない佐藤孝行氏の大臣就任の是非だけに注目すると言うのもおかしいのではないか。むしろ今回の騒動は良い機会だから、ロッキ-ド事件の本質についてもう一度取材し直してほしいものである。それにしても、マスコミは、日頃から「政治は官僚に支配されており、毎年変わる大臣なんてお飾りだ。だから是非とも政治改革が必要だ。」と言っておきながら、最近になって急に「大臣と言う大事なポスト」と言い始めるのである。まったく、マスコミ関係者は自己不信に陥ることはないのであろうか。



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