- 党員選挙
総裁選を総括すると言っても、人々の関心は薄れている。次の関心事は、総選挙であり、新民主党が総選挙でどれだけ活躍できるかである。しかし世の中人々の心の底を流れているものは連綿と続いている。もっと分りやすく言えば、総裁選で動いた力がまた次の総選挙で働くことになる。つまり総裁選を分析し、これを正しく理解することが、今後の総選挙の行方を占う上で大切である。
ここからは総裁選に関する筆者独自の分析であり、マスコミや政治評論家の分析とは大きく異なるかもしれない。総選挙での自民党員票の分析を中心に述べたい。まず重要なことは、党員選挙は基本的に組織選挙ということである。党員が各候補者に自由に投票するという形になっていない。
党員票は、職域と個人に別れるが、職域の方がちょっと多い。組織選挙と言ったのは、党員選挙は形式的に自由選挙であるが、地域や職域によって、投票に指示がある。いわゆる締め付けである。しかしこの度合も一様ではない。色々なケースがあり、ほとんど自由投票に近い所もある。また一堂に投票用紙を持ち寄り、同一候補者の名を書いて郵送するケースもあるようだ。ところで投票を指示したり、特定の候補者を示唆する立場の人、つまり指導的な立場の人にもさらにその上の方から指示が来る。しかしこの指示に単純に皆が従うとも限らないので、投票の様子は複雑である。指示に従わない票は浮動化するか棄権票となる。
投票を指示する人の思惑も色々とある。世話になったり、縁の有る国会議員の考えに沿った行動を取る人。次の選挙の闘いやすさを考えて投票を決める人。中には自分の政治信条で決めている人がいる。もちろん真面目に今日の政治情勢や経済状態を考え、どの候補者に投票するかを決める人もいる。
しかしこれは決して好ましいことではないが、権力を握っている側が投票に何らかの圧力を掛けるケースもあり得る。このような話は時々聞くが、この実態は見えない。しかし現政権側が選挙戦に優位なことは、ある面ではしょうがない。これに対して異議を申し立てて挑戦する側は、これを撃ち破るだけのパワーが必要である。前回の総裁選では、小泉ブームが起り、党員組織に力を持つ橋本派も防戦一方であった。組織選挙に勝つにはこのような相当大きなパワーが必要である。
筆者は、今回仮に党員組織に締付けがなく、全くの自由選挙が行われたなら亀井さんがトップであったと考える。亀井さんの獲得得票率は25%であったが、投票が自由なら、この数字はおそらく40から50%だったと予測する。しかしこれでは弱すぎるのである。挑戦者にこのような厳しい条件があるならば、60%以上を獲得する勢いが必要だったのである。たしかに選挙時期に合わせて株価が上昇したり、4ー6月の経済成長率がプラスになったりして、挑戦者にはこれらがアゲンストの風になった。しかし陣営は、このような不利な条件で闘うことを前提に、公約から見直す必要があるかもしれない。続きは来週号である。
- 総裁選と市場の動き
総裁選が終わって、為替が円高、株価が下落している。さらに長期金利は、一時高くなったが、その後低くなり、さらに直近ではまた少し高くなっている。しかしこれらの動きは総裁選と無縁ではない。
一番分りやすいのは、為替の推移である。今日、円相場は全て政府・日銀の為替介入で決まると言える。昔のように「市場では巨額の金が動いており、とても当局がコントロールできるものではない」といった無茶なことを言う人もいなくなった。円に関しては完全に管理相場になっている。日経新聞で、一般の人々が円レートを予想するコーナがあるが、これは全く無駄である。中国の元が米ドルに強引にペッグしているが、円も同じことをやっている。中国が批難されるのなら、日本も批難されるのである。
円は放っておけば、どんどん円高になる。経常収支が黒字であり、さらにその黒字幅が大きくなっており、円高になるのは当り前である。また物価上昇率はどの貿易相手国も低くなったといえプラスである。したがって物価上昇率がマイナスの日本の通貨の価値が、相対的に毎年上昇するのは当り前である。つまり円高傾向には合理性がある。
特に2年前の同時テロ勃発後、日本人の海外旅行者が減っている。その後もイラク戦争、SARS騒動で旅行者数が回復しない状態が続いている。このため旅行収支の赤字は減少し、経常収支の黒字がその分大きくなっている。さらに米国を始め、各国の景気も良くないため、資本の流出額も小さくなっている。これで円安を期待するのは無理である。
政府・日銀は118円をメドに、ずっと為替介入を行ってきた。今年に入って8月までに9兆円、さらに9月も1兆円の介入を行っている。異常な介入額である。特に8月頃には、為替介入に対しては米国から牽制する発言があったにもかかわらず、さらに9月に1兆円の追加介入を行っている。さすがに総裁選が終わり、G7で各国から変動相場制の機能を弱めると介入に批難が集まると、政府・日銀は介入を手控えている。すると途端に円高である(たしかにこれには投機マネーの流入の影響もある)。
国債価格もかなり動いた。4月になっても国債は買われ、利回りは低下を続けた。当時は、デフレ経済は今後も続き、資金の行き場がないのに金融緩和は続けられるという見通しが一般的であった。したがって20年、30年といった超長期の国債が買われ、それにつられて10年物の国債も買われた。20年国債の利回りが何と1%にもなった。一種の国債バブルの発生である。さすがに本誌で、20年も30年もデフレが続くはずがないと警告を発したつもりであった。
しかしそれ以降も国債は買われ続け、6月の初旬にはとうとう10年国債の利回りが0.5%を割込むほどになった。異常である。ところが6月の初旬に国債価格は天井をつけてからは、一転して今度は下落を始めた。国債利回りは一貫して上昇し、9月初めには1.6%を越えるところまで急上昇した。
今回の国債価格の動きには、株価の変動が関連していた。株価は4月頃からジワリと回復基調に入った。しかし株価の回復は日本に限ったことではない。世界中がデフレ傾向が顕著になり、各国が一斉にデフレ対策を行ったことが影響している。各国の金融緩和で世界中の株価が上昇したのである。特にイラク戦争が峠を越えるあたりから、株価は上昇を始めている。日本では、6月の初旬まで、国債と株式の両方が買われた。
しかし局面が変わったのが、国債価格が天井をつけた後である。それ以降、株価は上昇を続けたが、国債は下落を続けた。この大きな原因は、海外のヘッジファンドが日本の株式を買う一方、国債の先物を売るといった売買をずっと続けたことである。これは日本の景気が良くなるという見通しを持っている場合の売買である。また政策転換を見越した取引という見方もできる。しかし国内勢は、景気回復に全く自信がなく日本株を売る方に回っていた。
株価の上昇については、小泉再選をサポートする米国資本の仕業という噂も根強くある。しかし真相は分らない。たしかに政府・日銀による多額の為替介入も影響している。特に介入資金の非不胎化政策が採られた。これは日銀が米ドルを買い、円を市場に放出し、その円を回収しない方法での介入である。通常は、為替介入が終わったら、余剰資金を市場から回収している。この余剰資金の一部が株式市場に流入したと考えられる。
介入が行われていた為替を除き、この半年、市場はかなり大きく変動した。特に8月の後半から9月始めにかけての国債価格の下落、つまり長期金利の上昇はかなり激しかった。筆者は、9月の始め市場関係者に電話をし、事情を確かめた。ポイントは債券売りに「政権の交代や経済政策の転換が織込まれているか」という点であった。しかし市場関係者の答は「ほとんど織込まれていないでしょう」であった。
筆者は、それでは実際に政権交代があったら、債券市場は大変なことになると感じた。そこで国債と為替の動きの見通しと、それに対する対策を急遽レポートにまとめ、ある政治家の秘書に渡しておいた(かなりの分量になったので、この政治家が読んでくれたかどうか不明だが)。ところが小泉再選が確実と報道されるようになって、あれだけ一貫して下落を続けていた国債価格が、逆に上昇に転じた。
小泉再選が実現してから、為替は円高になり、株価は下落している。為替と国債価格(利回り)の動きは、前述したレポートの中で、小泉再選のケースで述べた通りの動きになっている。ただし国債価格は今週に入って奇妙な動きになっている。月曜日は小泉再選を受け上昇したが、それ以降ずっと売られている。商いが閑散とした中、わずかな売りで下落している。来月の新規発行の国債の条件が良くなるように、機関投資家が買いを控えているという解説がある。
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