- 一体どこがマニフェスト
総裁選も既に終盤戦である。おそらく党員・党友の投票の行方もほぼ決まっていると思われる。議員票は、多少党員・党友票の行方に影響される。しかしこの党員・党友票の行方がほぼ決まったとしたなら、やはりこちらもほぼ固まったと言える。マスコミでは小泉優勢と伝えられているが、蓋を開けてみるまで分らない。
選挙戦も過熱している。亀井静香勝手連のホームページ亀井静香勝手連のホームページhttp://www.nb-j.co.jp/katterenへの攻撃も日増しに激しくなっている。この様子については、選挙戦が終わってから説明するつもりである。今回の選挙戦は、ものすごい怪文書が飛び交うなど異常な様相を呈している。怪文書の一つの目的は、有力議員の立候補を取り止めさせることが目的である。
今週号は、候補者のマニフェスト、つまり公約の比較を行うつもりでいた。ただ亀井・高村・藤井の三候補の公約はよく似ている。そこで反小泉の代表として亀井氏の公約を取上げ、それと小泉氏の公約を比較する予定でいた。しかし小泉陣営の公約はなかなか公表されず、ようやく世間に出てきたのが告示日当日の8日であった。
マニフェストの比較と言っても、難しい。当初、北川前三重県知事が提唱していたような、しゃれた英国風の公約、つまりマニフェストを各陣営が作るものと想定されていたが、とんでもない結果になっている。かろうじて律儀にこれに近いものが作られたのは、亀井陣営だけである。多色刷り7ページのパンフレットには、公約やご本人の経歴までしっかりと紹介されている。公約も英国のマニフェストをかなり意識したものである。
たしかに藤井氏や高村氏の両氏の立候補者は、出馬が直前に決まるというハンディーがあった。公約を掲載したパンフレットの作成がようやく間に合ったという状況である。特に高村氏には、他派閥から立候補に対して執拗な妨害が行われ、立候補の条件をクリアーするのに手間取り、白黒刷りのパンプレットを作成するのが精一杯であった。
しかし非常に奇妙なのは、小泉陣営である。小泉氏が立候補することは、どの候補より先に分ってており、公約やパンフ製作に十二分な時間があったはずである。しかしテレビで見る限り公約を掲載したパンフは、A4用紙一枚である。とてもちゃちなものである(ようやくコピーを知人からFAXしてもらったが、「これは何だ」というしろものである。ちょうど選挙のポスターを思い浮かべてもらえば良い。)。
さらに、それさえも一般に目にすることはない。驚くのは小泉首相のホームページがないことである。たしかに一時ブームとなった官邸のホームページはあるが、今度の総裁選に向けた本人のページがないのである。一体これはどうしたことか。たしか小泉氏の周りには、竹中大臣を始めIT革命の虚像をまき散らした人々が、多数跋扈しているはずである。このように彼等は、いかにIT革命というものが、虚像だったということを自ら証明しているようなものである。
彼等は、小渕・森政権の時に、IT革命によって数百万人の雇用が生まれる。したがって今必要なことは、通信の規制緩和であり、補正予算ではないと、財政支出を強く牽制していた。そして今度は、介護などのサービス産業で500万人の雇用が生まれると、こりずに荒唐無稽な発言を繰返している。
新聞報道によれば、小泉陣営の公約は、直前になって郵政事業民営化の細かい手順(学者グループが作成したものと考えられる)などが削られ、反対に影も形もなかったはずの「中小企業対策」が、急遽付け加えられたという話である。とんでもない話である。たしかにこのような泥縄的な公約の作成は、「公約を守れなかったことは大したことではない」という、小泉首相の暴言と完全に符号することは間違いない。
- 公約の比較
こんな杜撰で幼稚な小泉陣営の公約であるが、一応できる範囲で、亀井氏の公約と比較をすることにする。しかし公約で大事なポイントは一つだけである。両者の経済・財政政策における大きな相違である。これを簡単に記すると次のようになる。
小泉・・2,010年代始めに(7年後)プライマリーバランスの均衡を目指す。2006年に名目2%超の経済成長を目指ざす。方法は、財政財政ではなく、構造改革、規制緩和や税制改革などである。
亀井・・「景気回復なくして、財政改革なし」。プライマリーバランス均衡 は景気回復後、10年計画で実施する。一時的に財政赤字が増えても、これによって経済が成長(名目で2〜3%の成長)し、税収が増える。さらに無利子国債の活用も考える。
大きなデフレギャプが存在する日本では、構造改革で経済は成長しない。問題は、需要であり、これは規制緩和や税制改革(減税ではない)では生まれない。したがって小泉陣営の7年後のプライマリーバランスの均衡という公約は、全く手段がないということになる。要するに小泉氏は、何もしなくても自然と財政状態が良くなると言っているのと同じである。また「2006年に名目2%超の経済成長」と言っているが、これはパンフに掲載されているのではなく、急遽付加えられたものであり、口頭で述べられているのに過ぎない。この数値は経済諮問会議が策定した目標である。トータルに判断すれば、これらは全く公約の名に値しないしろものである。
これで思い出されるのが、橋本内閣のもとで97年の暮れに成立した「財政改革法」である。これによって2,003年度までに、国と地方の財政赤字の合計が、GDPの3%以下に抑えることを目指した。しかし03年度とはまさに今年度である。
今年度は補正予算を組まなくとも、既にGDPの7%の赤字である。これに補正予算(小泉首相は行わないと言っているが)や地方の赤字を加えれば、財政の赤字はどれだけ膨らむか分らない。そしてこの原因は税収の減少である。経済が縮小し、税収が減る中でどうやって7年後にプライマリーバランスが回復するのだ。「財政改革法」は成立して、直ぐに凍結されたば実にばかばかしい法律であるが、小泉政権はその愚かな路線を再びなぞっているのである。人々は「財政改革法」のドタバタ劇をもう忘れたようである。
一方、亀井氏は、「日本経済再生3カ年計画」を提示し、3カ年は財政のブレーキは踏まないとかなり具体的な政策を掲げ、経済と財政の再建の道筋を示している。遊休状態の生産設備と失業者を活用することが、日本の国民所得を増やし、税収を増加させるのである。さらに無利子国債の活用を公約に盛り込んだことは画期的である。
小泉政権が一番の公約としている、郵政事業や道路公団の民営化などは、小さな行政改革の話である。そして重要なことは、民営化が国民にとってどのよのようなメリットがあるかどうかである。まず行うことは、どのようなメリットがあるかを示すことである。民営化委員会が言っているような「道路公団を民営化すれば、高速道路の料金を一割安くなる」とは一体どういうことだ。将来、高速道路の料金はタダにするということが、国と国民の間の了解事項だったはずである。
このように両者の公約を比較すれば、政治に対する姿勢の違いというものがはっきりする。小泉首相は、完全に政治をなめている。もっと言えば、国家・国民をなめ切っているのである。操作されていようと、支持率が高ければ、公約なんてどうでも良いという態度である。「2,010年代始めにプライマリーバランスの均衡」と言ういい加減な公約はこの典型である。
|