平成9年2月10日より
経済コラムマガジン


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97/2/17(第3号)
日本の金利水準と為替レ-トを考える
  • あるテレビ番組で司会者が最近の「円安ドル高」の原因をゲストのエコノミストに尋ねる場面があった。驚くことに、そのエコノミストは「今後アメリカの金利の上昇が予想され、資金が日本からアメリカに流れているから」と答えていた。
    筆者の理解では、金利の上昇は「債券の下落」と「株式の下落要因」を意味することから、そんな所に資金が流れて行くとは考えられない。つまりこの説明はまちがっている。
    そもそもここ2、3年の為替レ-トの動きが、それほど両国の金利差に影響を受けているのか、筆者は疑問を持っており、そのことを本日は検証してみる。

  • ただ、残念なことに筆者ような「街のコラムニスト」には、適当なデ-タを簡単に手に入れることできない。仕方がないので「日経の景気指標の数字」を使用する。厳密な比較にはならないが大体の傾向はわかると考える。使う数字は日本は長期金利として日経公社債インデックス(国債の利回りの数字がないので)、物価指数として消費者物価上昇率(前年比)、米国は長期金利として30年国債の利回り、物価指数として消費者物価上昇率(前年比)である。それぞれの金利から物価上昇率を差し引いた実質金利と円レ-トの推移を表にすると次の様になる。(日本は94、95年は年度ベ-ス、96年は暦年ベ-ス。米国は全て暦年ベ-ス。)
     
    日本米国
    長期金利物価上昇率実質金利長期金利物価上昇率実質金利円レ-ト
    944.80.44.47.92.65.399
    953.4-0.13.55.92.83.196
    963.10.62.56.62.93.7114


  • 表を見る限りでは、たしかに日本の金利は低いが、物価の上昇率も小さいので、実質金利は米国のそれよりちょっと低い水準である。また米国の長期金利を30年国債の利回りを使ったが(10年国債の数字が載っていないため)、もし10年国債の数字で比べたらこの差はもっと小さいものとなっていただろう。ともあれ昨今の円安傾向に日米の金利差がほとんど影響を与えていないことがわかる。では次に最近の円安の原因を考えてみよう。

  • 理屈の上では、資本取り引きがなければ、日米の為替レ-トは両国の物価上昇率(この場合は卸売物価指数が適当)の差だけ円高になるべきところが、逆に円安になっているのであるから、よほど大きな力が働いていると考えられる。では考えられる要因を列記してみよう。
    1. 行き過ぎた円高の反動による調整過程の円安(筆者はこれが一番の要因であり、ベ-スになっていると考えるが、それにしてはちょっとその調整期間が長すぎるように思われる)
    2. 名目では高金利の米国債の購入やドル建外貨預金への資金シフト(為替リスクさえなければ高利回りが期待できる)
    3. リストラで競争力を付けたといわれる米国企業の株式への投資(筆者は、たしかに米国の企業の収益力は強くなっているを認めるが、マスコミなどで言われているほど強くなったとは思わない。事実、企業の収益率のアップ率に比べ株価のアップ率が大きすぎ、近々大きな調整は避けられないだろう。昨年の暮れにFRBのグリ-ンスパン議長が当時の株価が「経済の実態より高すぎる」と発言し、一時的に株価が下落した。この発言に対し軽率であると非難が集まったが、筆者は、発言内容自体については極めて常識的と考えている。)
    4. まったくの憶測であるが、「政府から金融機関などに米国債を積極的に買うよう要請」があった
    5. 米要人のドル高容認発言(円高で傷を負った日本経済へのプレゼントとも考えられるが、狙いは物価上昇を抑えることであろう)
    筆者は単純に、1番の円安要因(行き過ぎた円高の反動)がはっきりしていたので、機関投資家が為替リスクを心配することなく米国の国債や株式に投資を増やすことができ、その結果、さらに円安が進んだと考えている。特に最近の資金の流れは、米国の債券だけでなく株式にも向かっている。とにかく国内の低金利(実質金利はけっして低くないが)で運用先難の資金(運用目標が実質でなく名目で示されているのがもはや実態に合わないのだ)が、継続的に米国に向かっていたのがこれまで円安の原因である。

  • 理論的には日本の方がの物価上昇率が低い(この場合は卸売物価指数が適当。日米の差は毎年3~4%。)わけでであるからベ-スでは毎年競争力が強くなっているはずである。したがって円の為替レ-トが適正水準より安くなり、政府の経済政策に変化がなく、業界の自主規制がなければ輸出が急増するのは目に見えている。この点ついては本誌の第1号をご覧下さい。


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97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」