平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




03/3/31(第291号)
経済再生政策提言フォーラム

  • シミュレーション結果
    さる3月27日、経済再生政策提言フォーラムが開催された。このフォーラムの会長は丹羽春喜大阪学院大学教授、理事長が外交評論家の加瀬英明氏である。出席メンバーは、30名弱の国会議員を含め、90名ほどであった(満席)。フォーラムは、主に「政府貨幣発行による積極財政政策」を政治家に提言することが目的である。この集まりは、1,2年に一度開催され、以前は故小渕首相にも提言を行ったことがある。今回は亀井前政調会長の講演がメインで、テレビも5局ほど取材に来ていた。筆者達は受付などの裏方である。

    そこで簡単に我々の活動状況を説明する。経済再生政策提言フォーラムはこのように不定期に開催される。このフォーラムには相当のメンバーが集まるが、政策実現のフォローが難しかった。そこで丹羽教授を中心に勉強会(丹羽経済塾)を毎月開き、政策の研究と啓蒙活動を行って来た。しかし丹羽経済塾はどうしても勉強会という性格から、政策を実現するには組織として限界を感じた。そこで丹羽経済塾のメンバーを中心に「日本経済復活の会」を立ち上げたのである。また活動には資金が必要であり、寄付金を募ることにした。寄付金を集めるとなると勉強会では具合が悪かったのである。

    しかし実現を目指している政策は同じである。したがって今後は、経済再生政策提言フォーラム、丹羽経済塾、日本経済復活の会の三つは一体となって、それぞれの特徴を活かしながら、活動を行ってゆくことになる。


    たしかに日本経済復活の会が始まって、活動の範囲が広がり、支援者も極めて多くなった。今日、「日本経済復活の会」は、小野盛司氏がシンクタンクのプログラムを使って行ったシミュレーション結果を用いて、「積極財政への転換の必要性」を説明して回っている。積極財政に転換しても、デフレギャップが大きい日本では、物価の上昇は限られる。むしろ経済が成長することによって、失業が減るといった良いことばかり起るのである。

    さらに重要なことは、積極財政に転換することによって、財政赤字は一時的に増えるが、積極財政を継続することによって、数年後にはむしろ財政状況が好転する。しかしこれは小野さんのシミュレーションだけの結果ではない。実は他の研究者が行ったシミュレーションでも、同様の結果が出ているのである。もちろん政府貨幣の発行が容認されるなら、もっと簡単に財政再建が実現するが、これは最後の手段である。

    たしかにシミュレーションプログラムの違いによって、成長率や効果のある政策(財政支出と減税とどちらの方が効果が大きいかなど)に違いが生じている。しかし積極財政に転換することによって、財政状況が好転するという点では同じ結果が得られている。

    しかしちょっと考えてみれば、これは当り前のことである。積極財政に転換すれば、失業が減り、設備の稼働率が上昇し、国民の所得や企業の利益は増える。そして財政政策の規模を一定値より一段と大きくすれば、所得や企業利益が急増するはずである。特に日本の累進構造の税体系を考えれば、税収もその辺りから急増するはずである。つまり税収が急増することによって政府の財政状況が良くなることは自明である。つまり一定規模以上の大きな財政政策を何年にも渡り行う必要があるということである。

    そしてこれと全く逆のことを行ったのが、橋本・小泉政権である。両政権の緊縮財政によって、財政は好転するどころか、むしろ累積債務は急増したのである。つまりこれと逆の政策を行えば良いのである。デフレ経済下で、緊縮財政を行うなんて本当にばかげている。しかし橋本・小泉政権の取巻きの霊媒士のようなエコノミスト達は、緊縮財政を行っても「構造改革」や「徹底した規制緩和」を行えば、経済は成長するといった「まじない」のようなことを言っていたのである。


    しかしこの霊媒士エコノミストが言っている経済成長率は、なんと「潜在成長率」のことである。現実の成長率のことではないのである。まさに「子供だまし」であるが、首相を含め多くの人々が簡単に騙されたのである。だいたい、緊縮財政の元で「潜在成長率」が大きくなること自体が怪しい(緊縮財政によって需要が減ることがはっきりしているのに、企業が新しい設備を積極的に導入するとは考えられない)。とりあえずそのことを別にしても、これだけデフレギャップが大きいのだから、潜在成長率が大きくなっても何の意味もない。

    しかし今日までの日本では、このような霊媒士エコノミストが幅をきかしていたのである。彼等のへ理屈を退けるには、シミュレーション結果を示すことが有効である。霊媒士エコノミストも「構造改革」や「徹底した規制緩和」を行った場合の、経済成長のシミュレーション結果を示せば良い。もっともそこで筆者達が「それは潜在成長率のことであり、現実の経済成長率ではないでしょう」と指摘すればお終いである。


  • 何となくそう思っている
    以前から申しているように、小野さんのシミュレーション結果を用いて、我々は積極財政への転換を色々な人々に訴えている。実際のところ、噂を聞き付け、説明に来てくれというケースが結構多い。一般の人々はもちろん、与野党の国会議員にも何回となく説明を行っている。経団連にも説明した。さらに先月には亀井前政調会長にも説明している。

    まだ記事になっていないが、何社かの新聞社にも説明している。他の記事と合わせて、小野さんのシミュレーション結果を使いたいという意向である。また先日、紹介者に連れられ、日銀にも説明に行った。

    日銀には筆者も同行し、3名で訪問した。日銀の政策委員会は、総裁・副総裁の3名と6名の審議委員で構成されている。この審議委員のうち2名の方にお会いでき、シミュレーション結果を説明することができた。大変興味を持ってもらった。もちろんシミュレーション結果だけでなく、金融政策全般についても話題になった。そして色々な意見交換もさせてもらった。しかしこれらについては、今のところ本誌には書けない。


    ところで色々な面で勉強になるのは、一般の人々への説明会である。率直な意見が出てくるからである。もちろん小野さんのシミュレーション結果に納得する人がほとんどである。「自分もそうだろうと思っていた」と皆さんおっしゃる。緊縮財政を行う度に、国の借金が増えているのであるから、逆のことを行えば良いと誰でも理解できるのである。

    しかし中にはいまだに、経済を成長させるためには「構造改革」や「徹底した規制緩和」が必要と頑固に主張する人々がいる。ほとんどが若い人々である。彼等は、個々の企業の経営と一国の国民経済と混同しているのである。

    このような人々には、いくら懇切丁寧に説明しても無駄である。カルトに洗脳されている人々と同じである。ところで彼等は決して「構造改革」や「規制緩和」の具体的な中味を言わない。むしろ正確言えば、「言わない」のではなく「言えない」のである。ただ「何となくそう思っている」のであり、深く考えた形跡が全くない。これはまさに一種の「思考の怠慢」である。筆者は、彼等に「具体的に構造改革や規制緩和の中味を説明してくれ」と詰問しても良いが、相手が泣き出すかもしれないのでそれは止めている。

    これ以外にも虚言・妄言の類に出会す。最近、よく聞くのが「鈴木宗男タイプの政治家が地方に無駄な公共事業をばらまいている。これが今日の日本経済の不調の原因である」という話である。発信源は誰なのか分らないが、これは極めて悪質なデマである。この類の話については本誌でも何回か取上げたことがあるが、そのうちもう一度取上げることにする。


    フォーラムで亀井前政調会長は45分くらいの講演を行った。聴衆の拍手に極めて力強いものを感じた。亀井氏に対する人々の期待がそれだけ大きいのである。実際、我々は色々な所に政策の説明に行くが、亀井前政調会長に期待する声が圧倒的である。不思議なことに他の政治家の名が出ることは全くない。今日の日本経済を理解している政治家は亀井氏しかいないという印象である。たしかに有名であるがピントがずれている政治家が多い。

    亀井前政調会長は、講演の最後に「この中に会社の経営者の方がいるかもしれない。後、6ヶ月だけ何とか辛抱してほしい」と発言していた。「6ヶ月後」とは実に重い言葉である。



来週号は、金融関係の話を取上げる予定である。

最低限の株価を維持でき、何とか3月決算も乗り切れそうである。しかし4月からの株価の動向が難しい。ここ数年は4月に株価が下がるケースが多かった。3月までの株価対策の反動である。今年もこのパターンがあり得る。ただ対策にかかわらず、株価は高くならなかったことで、下がるとしても限度があるとも思われる。しかし予測は実に難しい。

これからは日本の株価は、米国の株価動向の影響を受ける度合が大きくなると思われる。したがって当然、イラク情勢に振り回されることになる。米国の株価はイラク攻撃開始が接近した時点から上昇したが、長期化がはっきりしてきた時から下落に転じた。しかし面白いことに下落幅が案外小さい。

イラク攻撃を推進している勢力の一つは、03/3/17(第289号)「波乱の株式市場」で説明したように、「ネオコン」である。そして金融の中心のウォール街にはこの「ネオコン」に共鳴する人々が多い。筆者は、これらの人々が株の買支えを行っているのではないかと見ている。

28日予算が成立し、小泉首相の記者会見が行われた。しかしどうも記者会見ではなく演説会だったようだ(30分の記者会見のうち20分はこの演説であったーーー色々と質問されるとボロが出るからか)。会見の冒頭、首相は構造改革がいかに進んでいるかを延々と例示した。「低公害車の公用車への導入」「日本への観光客倍増計画」「高速道路の非常電話を1台250万円から40万円にコスト削減させた」などである。「笑い」を越えている。

とても一国の首相の発言とは思われない。「構造改革なくして成長なし」と念仏を唱えているが、構造改革の具体的な中味はこれらである。このような人物を80%以上の人々が支持していたというのだから、日本経済がデフレから脱却できるはずがない。さっさと辞めてもらう他はない。首相を辞めることが決まれば、株価は次の日からでも上がる。



03/3/24(第290号)「日本の有名経済学者達」
03/3/17(第289号)「波乱の株式市場」
03/3/10(第288号)「政府貨幣の理解」
03/3/3(第287号)「軽視される高橋是清の偉業」
03/2/24(第286号)「日本の清貧の思想」
03/2/17(第285号)「日本のデフレの原点」
03/2/10(第284号)「小泉首相の「もっと重要なこと」」
03/2/3(第283号)「スローパニック経済」
03/1/27(第282号)「所得を生むマネーサプライ」
03/1/20(第281号)「マネーサプライ政策の限界」
03/1/13(第280号)「データに基づく経済論」
02/12/23(第279号)「乗数値の低下と経済政策」
02/12/16(第278号)「零細企業・個人の借入金問題」
02/12/9(第277号)「ルーカスの子供達」
02/12/2(第276号)「日本のデフレギャップの怪」
02/11/25(第275号)「小泉政権の支持率の怪」
02/11/18(第274号)「セイニア−リッジ政策の推進(その3)」
02/11/11(第273号)「セイニア−リッジ政策の推進(その2)」
> 02/11/4(第272号)「外資系ファンドの実態」
02/10/28(第271号)「竹中平蔵大臣の研究」
02/10/21(第270号)「嵌められた話」
02/10/7(第269号)「銀座のデモ隊」
02/9/30(第268号)「末期的な経済政策」
02/9/23(第267号)「銀行の不良債権問題(その3)」
02/9/16(第266号)「10月号「諸君」の対談」
02/9/9(第265号)「セイニア−リッジ政策の推進(その1)」
02/8/12(第264号)「経済よもやま話」
02/8/5(第263号)「マスコミのチャイナースクール化」
02/7/29(第262号)「チャイナースクールの落日」
02/7/22(第261号)「中国の不当な為替政策」
02/7/15(第260号)「セイニアリッジ政策への反対意見」
02/7/8(第259号)「榊原慶大教授の文章」
02/7/1(第258号)「小泉政権の本音」
02/6/24(第257号)「小泉政権への批難」
02/6/17(第256号)「サッカーのワールドカップ大会」
02/6/10(第255号)「成功は失敗のもと」
02/6/3(第254号)「為替と物価」
02/5/27(第253号)「消費税の減税効果」
02/5/20(第252号)「小泉政権のデフレ対策」
02/5/13(第251号)「酔っぱらいの論理」
02/4/22(第250号)「生産力を生まない投資」
02/4/15(第249号)「商品相場と世界の動き」
02/4/8(第248号)「経済予測のレビュ-」
02/4/1(第247号)「ニュークラシカル派の実験」
02/3/25(第246号)「ニュークラシカル派の論理」
02/3/18(第245号)「日本の所得格差の動向」
02/3/11(第244号)「通常では行わないような経済政策」
02/3/4(第243号)「セイニア−リッジ政策への準備」
02/2/25(第242号)「資金の使途(その3)」
02/2/18(第241号)「資金の使途(その2)」
02/2/11(第240号)「資金の使途(その1)」
02/2/4(第239号)「確信犯(その1)」
02/1/28(第238号)「政策の実現性」
02/1/21(第237号)「国債の日銀引受け政策」
02/1/14(第236号)「経済政策の目標」
01年のバックナンバー

00年のバックナンバー

99年のバックナンバー

98年のバックナンバー

97年のバックナンバー

日頃忙しいビジネスマンへのオンラインマガジン