平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




02/11/25(第275号)
小泉政権の支持率の怪
  • ボロボロの政権
    世の中では、本当に不思議な事が起る。小泉政権の高い支持率もその一つである。現在でも、68%から69%と極めて高い水準である。政権発足当時から、わずか10%しか下がっていないと言うことになる。筆者には全く信じられない数字である。

    小泉政権が発足した当時は、これまでにない新しいタイプの宰相登場と言うこともあり、期待する声も大きく、支持率が高いことは納得できた。ネットの各サイトでも支持する意見が多かった。しかし筆者は、当時に発表されていた支持率についても疑問を持っていた。

    さらに一時、内閣支持率は90%に達したとも言う。小泉首相の悪口を言うと、狂信的なファンから攻撃されると言う話もあった。しかし本誌は、小泉氏が首相になるずっと以前から、この人物を否定的に捉えた文章を掲載している。もちろん政権発足当時から、小泉政権の政策をけなしていた。しかしそれに対して攻撃するようなメールを一通も受取っていない。むしろ筆者の意見に賛成するメールばかり頂戴している。また不思議なことに筆者の周りでは、当時から支持している者はほとんどいなかった。支持している人も「なんとなく」とか「何かやってくれるのではないか」と言った消極的なものであった。

    まず支持率が80%とか90%に達していたと言う数字自体が信じられない。世の中には、10%や20%くらいの人々は、自民党の政権にどうしても反対するものである。ましてや公明党との連立にも違和感を持って人がいるはずである。したがって80%とか90%と言う数字は、そのような人々以外の全ての人が小泉政権を支持していることになる。そのようなことは絶対にないと考える。


    しかしここでの問題の焦点は、「今日でも70%弱の支持率が維持されている」と言うことである。小泉政権発足依頼、経済ははっきり下降している。昨年度はマイナス成長であり、失業者も増えている。倒産も最悪のペースで増えており、上場会社の破綻数も史上最多である。社会を見ても自殺者は依然多く、犯罪も増え続け、刑務所も満杯である。さらに来年からは、健康保険の本人負担増などによって社会保険の負担が増える。また資産デフレが続いており、借入金のある人は大変である。特に素人の竹中金融担当相が銀行に無意味な圧力を掛けたため、銀行は貸出金の回収をさらに急ぎ、10月以降、銀行借入を巡ってパニックが起っている。

    ところで一般の人間が経済に興味を持つと言っても、肌身に感じる数字は限定される。為替とか長期金利と言っても、日々の動きに関心がある人は少数派である。これらにはそれらの仕組が複雑なことも作用している。また経済成長率や失業率と言ったマクロの数字も関心を示す人が限られる。やはり人々が経済の現状を実感するのは、株価と物価の動きぐらいである。しかし物価の方は、ずっと下落しているためか、今のところ人々はそれほど関心を示していない(生産者や供給側にとっては深刻であるが)。一方、株価は、経済の動きを映すものとして人々の注目を集めるものである。たしかに株価が大きく下落すると、途端に、テレビが経済の情勢を取上げる。したがって政府も公的資金を使い株価の維持に必死である。

    しかし肝腎の株価もバブル期崩壊後の最安値を更新中である。これは自民党の夫々の政権の間の株式の時価総額の動きである。宮沢-43,橋本-59,小淵+161,森-77,小泉-131(単位:兆円)。この数字は10月の株価の急落時のものである。ダウ採用の主要銘柄は公的資金が買支えているため、それ以降、日経平均はそれほど下がっていないが、その他の銘柄が相当下落している。したがって小泉政権発足後の株式時価総額は、131兆円のマイナスより、さらに下がっているはずである。

    とにかく小泉政権発足以来株価はボロボロである。株価は今年の3月の決算対策のための株価上昇を除き、上がったことがないのである。つまり肝腎の株価もこのような悲惨な状態である。つまり小泉政権の経済運営が滅茶苦茶なことは誰もが承知のことである。では一体誰が小泉内閣を支持しているのかが問題になる。テレビに登場する解説者は色々言っているが、ピンと来るものがない。皆適当な事を言っているのである。そうではない。支持率調査自体に大きなトリックがあると考えるべきである。


  • バアさんと猫
    今日、世間で言われている支持率は、主にテレビ局の調査によるものと思われる。まず内閣の支持率を頻繁に公表するようになったのは、最近の話である。フジテレビ系「報道2001年」は、毎週番組の最後に、内閣の支持率を流している。問題は、この調査の信憑性である。

    これだけ頻繁に調査すれば、手間と経費がかかるはずである。おそらくテレビ局は、調査を調査会社に「丸投げ」していると思われる。調査の回数が多いと言うことは、それだけ一回の予算も少ないはずである。ここが問題である。最近、筆者が聞いた話では、内閣の支持率の調査では同一人物に聞いていると言うことである。調査会社としても、経費を安くするため、同一人物にアンケートを行っていると言うことは十分考えられるのである。また専門の調査会社に依頼しているならまだしも、コールセンターみたいな所に頼んでいるなら最悪である(ちなみにテレビ朝日が、テレコングと言って、番組中に時々電話アンケートを行っているが、これはコールセンターを使っている)。

    テレビ局の調査は、「無作為の人々に電話でアンケートに答えてもらっている」ことになっている。しかし無作為と言っても、電話帳の中から対象者を無作為にピックアップしているものと思われる。一見、この方法が偏りがないように思われるが、実際は全く違う。このような方法は、今日ではとんでもない結果を招くと考えるべきである。

    おそらく電話調査は昼間行われていると思われる。経費を掛けないとしたなら、わざわざ夜や土日に行っているとは考えにくい。まず電話調査と言っても、相手は固定電話に出る人と考えて良い。ところが今日の日本の場合、平日の昼間に「家」にいるのは「バアさんと猫」くらいのものである。つまり調査会社は「バアさん」を相手にアンケートを採っていると言うことである。つまり調査対象の母集団自体に、とんでもない大きなバイアスがあると言うことである。

    今日、小泉政権の経済政策で苦しんでいる人が、ほとんどテレビ局の調査では対象外になっている可能性が強い。失業して電話代が払えず、電話を止められている人はもちろん対象外である。つまり電話アンケートに答えるている人々は、「株」を持っていない、「失業」の恐れのない、「住宅ローンの返済」に苦しむこともない人々が多いのである。むしろ過去の貯えや年金で生活している人々は、今日のように物価が下落していることを歓迎している。まさにこのような人々が平日の昼間に「家」にいるのである。

    ところで今日、真昼に電話帳の番号に電話しても、電話に出る人の数自体が少ない。仕事で出かけている人を除いても、留守電にしている人や、発信者の番号を確認する人が増えている。また変な電話セールスに迷惑を受けた人は、電話帳への掲載を断っている。つまり電話に出る人は、どうしても警戒心の薄いおバアさんとおジイさんが多くなるはずである。さらに電話調査を行う方にとって手間を省くには、一度でも調査に協力してくれた人に、繰返して調査することである。これは十あり得ることである。どれだれ失政を続けても、小泉政権の高支持率に変化がないのは、このような仕組があるからと筆者は考えている。

    支持率調査だけでなく、マクロ的な数値を正確に調べることは技術的に難しい。どうしてもどこかで割切る必要が出てくる。しかし調査結果に重大な影響が生まれるような割切りは問題である。まず調査結果がおかしいと思ったら、調査方法に問題がないか吟味してみるのが常識である。小泉政権に対する支持率が、政権発足当時とほとんど変わりがないなんて絶対に考えられないはずである。


    アンケートについては、4年以上も前に、98/5/11(第65号)「アンケートと経済政策を考える」で取上げたことがある。アンケートには、どうしてバイアスが伴うものであり、注意が必要である。またアンケートで導き出された民意も操作された結果と言うこともあり、民意と言われているもの自体が誤りと言うことがある。質問仕方で調査結果を左右することもできる。しかしテレビ局の内閣支持率調査の問題は、それ以前のお粗末なものである可能性が強い。このような杜撰な調査を元にしては、「小泉政権が人気があるとかないとか」と言うこと自他が議論の対象にもならない。

    無作為調査で内閣の支持率を、比較的正しく調査しようとしたなら、住民票の順番でサンプルを選び、その人々にあらかじめ葉書などを送って、調査に対する協力要請を行うことから始める必要がある。そして調査委員が自宅を訪問し、調査を行い、協力者には粗品くらいは置いてくるのが普通である。もちろんここまでやれば、一つのサンプルに掛かる費用は、何千円、時には何万円にもなる。しかし正しいデータを本当に得ようとすれば、これくらいするのが当然である。

    もっともこのような理想的な調査も、最近では住民票が簡単に閲覧できなくなったり、調査対象者の不在率が高くなったりしており、だんだん難しくなっている。しかしワンコールが100円とか200円と言った、電話の調査で内閣支持率がインスタントに分るはずがない。上述したように実態と大きくかけ離れたデータが得られるだけである。また電話での調査結果は、質問の仕方でどれだけでも操作できる。また支持率の高いサンプル群と低いサンプル群を用意すれば、公表する支持率を簡単に変えることができる。

    さらにテレビ局のいい加減な調査結果が頻繁に公表され、これが他の調査にも影響を与える。つまり日本人の付和雷同的な国民性を考えると、比較的正しく調査されているアンケート調査対象者にも、少なからず影響を与えていると考えられるのである。「皆が支持しているのだから私も支持にしておこう」と考える人が結構いるのである。内閣の支持率調査については、まだまだ述べたいことがあるが、これはまた別の機会にする。


    不思議なことに小泉政権は人気のある政権と言うことになっている。本人もその気になっている。自民党の実力者の中には、2年後の衆参同一選挙を小泉人気で乗り切ろうと言うとんでもないことを考えている人もいるようだ。

    筆者の客観的な印象では、世間の人々は、小泉政権に何も感じない人とボロクソに言う人に分れている。ネットの多くのサイトでは竹中大臣とワンセットで、彼は徹底的にばかにされている。少なくとも政権発足時のような熱烈な小泉ファンは皆無になっている。70%近いの支持率なんて100%あり得ない。そして逆に小泉政権に強い憎しみを持った人々が急増している。過去の政権では経験のないことである(橋本政権の末期にはこれに近い状態であった)。このような人々には、テレビ局のいい加減な支持率が公表される度に、やり切れない思いが募っているはずである。今日、世間には、自分達の訴えが届かないと言った閉息感で満ちている。ちょっと危険な状態と言える。

    テレビ局の内閣支持率を本当のことと思い込んでいる国会議員も多いはずである。このような間抜けな国会議員は、正月に地元に帰って支持者の生の声を聞いてびっくりするはずである。自民党はサンプル数が少なくても良いから、独自に支持率調査を行うべきである。



内閣府(旧経済企画庁)の公表している、GDPギャップ、あるいは需給ギャップとかデフレギャップと言われるものの数値が、実態から大きくかけ離れている。多くのシンクタンクもこの数字を使っていることもあり、世論形成に大きな問題が生じている。経済政策がずっとおかしいのもこのことが大きな原因である。来週号は、これを取上げる。

補正予算の作成によって、国債発行30兆円枠と言う小泉政権の公約は大きく崩れている。本誌も、税収が大きく落込むことから、絶対に無理な公約と以前から指摘してきたところである。しかしいまだに小泉首相一人が「方針の変更ではない」と言い放っている。全く現実を見ようとはしない、根っからいい加減な人物である。筆者の感想では、日本史上最低の首相である。さっさと辞めてもらいたい。

今度の補正予算の規模は、「2010年に財政のプライマリーバランスを回復することを念頭に置いている」と、首相は財政当局の作ったシナリオ通り答えている。橋本政権が緊縮財政政策を始める時には、5年後くらいにプライマリーバランスを回復すると言っていたはずである。このようにいい加減な話をする時にいつも持出されるのが、このプライマリーバランスの話である。しかし今日の経済や社会の状況が続けば、2010年頃には、日本経済は壊滅状態になっていると思われる。プライマリーバランスの話どころではなくなっているのである。



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