平成9年2月10日より
経済コラムマガジン




02/11/4(第272号)
外資系ファンドの実態
  • 「ちょろい」国民
    銀行の不良債権処理を巡って、外資系のファンド、つまり「ハゲタカファンド」が話題になっている。その一つであり、長銀の買収で名を馳せたのが、米系ファンドのリップルウッドである。このファンドは、この他に宮崎のシーガイアやコロンビアなどを手掛けている。しかし正確に言えば、長銀の買収を行ったのは、リップルウッドではなく、ニュー・LTCB・パートナーズ(以後LTCBと略)と言うことになっている。

    リップルフッド自体がファンドであるが、LTCBも投資組合と言う形をとったファンドである。LTCBには、リップルウッドの他に、外国の他の投資会社や三菱商事などの日本の企業が出資している。しかし買収の主体はあくまでもリップルウッドであり、買収交渉もリップルウッドが行った。


    この長銀の買収劇には色々なことがあった。これに関して月刊文芸春秋の平成12年5月号に、経済ジャーナリストの小田淳氏が「長銀売却 初めて暴く「国辱」の真相」と言うタイトルで文章を載せている。


    まず民主党の岩國哲人氏の平成12年2月初めの予算委員会の質問を紹介している。岩國氏は「LTCBの保有する長銀株を将来売却した場合には、その譲渡益の課税権はどこの国にあるか」と質問した。これに対して越智金融再生委員長は「もちろん日本にある」と答えた。しかしこの回答は違っていたのである。LTCBはオランダに設立された投資組合で、日本とオランダの間の租税条約では、匿名組合の分配金に関して明文規定がなく、日本には課税権はない。

    また岩國氏は、あれだけの公金を投入して(実質的にリップルウッドのコストはゼロ)、2年後には500億円の業務利益を生む会社が税金ゼロで売却されると指摘していた。さらに長銀のファイナンシャル・アドバイザー(FA)のゴールドマン・サックスが長銀と日本政府に譲渡益課税についてどのような説明をしていたのかを詰問した。

    ちなみにリップルウッドのナンバー2のクリス・フラワーズ氏は、なんとゴールドマン・サックスの元共同経営者である。またゴールドマン・サックスが長銀から受取ったアドバイザー料は6億円であったが、長銀の資産を算定した報告書を、新生長銀に55億円で買取らせたと言う話である。むちゃくちゃである。


    LTCBが実質的に負担したのは「のれん代」のたった10億円だけである。この他にLTCBは、一株400円で1,240億円出資している。逆に日本は、預金保険機構が平成10年に行った、「第一次資本注入」の見返りとして得た一億株の優先株のうち約4分の1を無償償却した。さらに資本充実のため、2,400億円負担して議決権のない「優先無額面株式」を受取っている。また国費で総額8,000億円の貸倒引当金を計上している。そして長銀の不良債権は3兆円と算定されていたが、半分の1兆5,000億円は整理回収機構に売却・分離された。この結果、日本政府は長銀に4兆円注ぎ込むことになった。

    この他に、政府は不良債権に対する「瑕疵担保責任」を期限付きで認めた。これは債権が二割以上価値が下がった場合、日本政府が原価で買い戻すと言う特約である。つまり新生銀行は、危ない会社を期限内に倒産に追込めば良いのである。そしてこれによって新生銀行には大きな貸倒は発生する可能性が皆無となった。さらに長銀が保有していたトヨタなどの優良株を市場で売却して、資本増強に充てることも決まった。この含み益が当時、2,500億円から2,750億円であった。

    つまり新経営陣の手腕などは関係なく、新生長銀は始めから超優良銀行としてスタートしたのである。ところで4つのグループが買収に名を上げていたのに、何故リップルウッドに決まったのかが問題である。たしかに政府関係者にも、国内勢に決まってほしいと言う希望を持っていた人も多かったと思われる。しかしどう言う訳か、最初からリップルウッドが買収に成功すると言う雰囲気があったと筆者も感じている。

    憶測で物を言うのも問題である。そこで小田淳氏の記述の中で、リップルウッドの買収に関して名が挙がっている法人と個人の名を列記してみよう。米シティーグループ、ボルガー元FRB議長、サマーズ前財務長官、東京海上、八城元シティ・バンク在日代表、三菱商事、槙原三菱商事会長、今井前経団連会長、樋口経済戦略会議議長など、実に錚々たるメンバーである。また筆者が気になるのは、どうしても米シティーグループと無名のリップルウッドとの関係である。そして米シティーグループと言えば、ルービン元財務長官の再就職先である。

    日本のメディアやマスコミは、ケチな疑惑や汚職の追求には異様に熱心であるが、金額の桁が二つも三つも大きくなるととたんにしゃがみこんでしまう。むしろ「構造改革」「不良債権の処理を急げ」と、外資系ファンドがいかにも喜びそうなことばかりを言っているのである。もし外資のファンドから経済的な利益を貰わないでこのようなことを言っているのなら、日本人は本当に「ちょろい」国民である。


  • 「間抜け」な人々
    「税金がゼロ」と言う話を別にしても、日本は外資のファンドに対してガードが甘い。そしてこれだけ日本の金融機関が疲弊していては、企業の買収に積極的になれるはずがない。長銀の買収には、一時東京海上が買収に名乗りを上げたが、「格付けが下がる可能性がある」と言う声が社内で起り、これを断念している。このように今日の日本では、銀行や企業の買収は外資のファンドの一人舞台である。そして競争と言っても、外資同士の競争が激しいだけである。


    たしかに日本の企業も外資に買収された方が、再生しやすいのは事実である。これは認めるべきであり、一方、日本人の企業再生技術は未熟である。これまで日本では、企業の買収を「乗っ取り」と捉え、あまり良いイメージを持っていなかった。むしろ企業は互に株を持合って、外部からの支配を拒んでいたのである。このような日本の風土では、企業の再生の技術が発達するはずがなく、まともには外資と競争にならない。優位な点は、日本語が通じることぐらいである。

    しかし傾いた企業が、外資に買収されるか、日本のファンドや企業に買収されるかによって、従業員や下請企業への対応には違いが生じると思われる。たしかに外資の方がドライであるが、再生に成功する確率は大きい。一方、日本のファンドや企業は、一言で言えば「甘い」のである。

    筆者の知っている大企業は、最近、店主の要請で特約店を買収し、これを子会社にした。ところが従業員のボーナスがあまりにも少ないことを知って、ボーナスを増額したと言う話である。もちろん従業員は大変喜んだと聞く。日本の企業は「甘い」と言われようと、これは実に日本的な話である。つまり従業員や下請企業にとっては、日本の企業が買収に名乗りを挙げてもらった方が幸せになる確率が大きそうである。しかしそのような元気のある大企業が日本ではめっきり減っているのが現実である。


    日本の企業はこれまでも、企業の業態を変えながら発展してきた。例えば大手の繊維会社で、いまだに全面的に繊維に頼っている所は皆無と思われる。それぞれの企業は、繊維関連と言われながら、新素材や化粧品と言った製品が主力商品になっている。これはそれぞれの企業が、需要の変化に合わせて業態を変えて来たからである。また製造業全般を見ても、生産部門の自動化で余った人員を事務部門や営業部門が受け入れるといったことを行い、人員の整理を最小限に止めて来た。

    しかしこのようなことができたのも、日本の経済が成長しており、資産価格も上昇し、企業にもリスクを取る余裕があったからである。今日のように10年以上も経済の不調が続けば、企業の方もマインドが萎縮している。とにかく日本流の企業の再生システムと言うものが実績を収めるようになれば、理想的と考える。そのためには日本経済の需要を拡大させて、これをサポートすべきである。手段はある。しかし今日の経済政策は全く逆のことを行っている。むしろ「企業を追込み、業績の悪い企業をどんどん整理すれば、新しい産業構造になる」と、とんでもないことを言っている経済学者やエコノミストが多いのである。まったく経済の実状を知らない人々である。これは外資系ファンドの宣伝文句である。


    これだけ経済の不調が長く続いてい割には、意外と企業の破綻は少ない。これは日本の企業が大きな含みを持っていたいたことと、まだまだメイン銀行が取引先を見捨てていないからである。もっとも取引先を破綻させては、自己資本が毀損すると言った、銀行側の事情も考えられる(上場企業の倒産は年の前半目立ったが、それ以降少なくなった)。いずれにしても少なくともこれまでは、長銀を除き、外資系ファンドにとって魅力のある大型の出物がなかったのである。したがって彼等は、今日、破綻した企業の「ちまちま」した不動産物件を転売して小さな利益を積み上げているのが現状である。

    したがって内閣改造で金融担当相になった竹中大臣の政策方針に、外資が大きな期待を持ったのも当然である。大銀行の国有化後の売却も魅力であるが、切り捨てられる企業も多くなり、彼等にとって買収企業の選択肢が大きく広がるのである。このことが、日本経済や日本国民にとって本当に良いことなのか疑問である。外資は破綻企業をタダのような金額で買収し、その企業に簡単なお化粧を施して(日本人経営者にはできないドライな手法で)、それを高く転売する。たしかに企業が再生に成功する可能性が大きく、単純でばかなエコノミストは、全て外資に企業の再生をまかせろとまで主張する。しかしこれによって切り捨てられる従業員や下請は、結局、放り出されるか、あるいは回り回って彼等を税金で面倒を見ることになる。つまり日本国民の負担で、外資は転売益を得ているとも言えるのである。ただそれが見えにくいだけである。

    ダイエー救済への批難など、田原総一郎氏を始めとしたマスコミ陣の論調は、外資系ファンドにとって極めて好都合である。また何の展望もないまま、銀行や企業の整理を推進することに、竹中大臣を筆頭に、マスコミ、一部の政治家や官僚、そして財界人までもが血眼になっている。彼等が外資から何らかの利益を受けてこのようなことをやっているのなら納得するが、何も貰わず行っているのなら実に「間抜け」な人々である。

    税金がタダとか、簡単に洗脳されやすい国民性と言い、本当に間抜けな国民だから、外資が喜んでやって来るとも言える。そしてどう言う訳か、日本国民を窮地に追込むような論調、つまり外資系ファンドが喜びそうな事ばかりを主張しているのが、日経新聞を始めとした日本のメディアである。筆者の周りでは、特に日経新聞の評判は「ボロクソ」である(最近の日経の論説や論評は、本当に我々と同じ日本人が書いているのかと疑問に思われる)。このように商売がしやすい日本に外資系ファンドが集まってくるのも当然である。

    話は変わるが、中国の窃盗団が問題になっている。彼等に言わせると、本国の中国と違い、日本の警察は親切で、捕まっても待遇が良いと言う話である。そして彼等は、行動する時には日本人を巻き込むケースが多いと聞く。初めは中国人の方も「日本人はプライドが高く、とても日本人が仲間に入ってくるとは思わなかった」と言う。しかし金さえ出せば簡単に手伝ってくれると知って驚いているそうである。実になさけない話である。とにかく日本は、外からの攻撃には極めて弱く、脳天気と言おうか全く無防備である。


    ところが5月29日の日経の夕刊によれば、モルガン・スタンレー系の複数の不動産ファンドの不良債権売買に伴う所得に対して、国税庁から180億円の申告漏れを指摘されている。追徴税額は約60億円である。これらの不動産ファンドは、利益を一旦オランダの法人に移し、このオランダ法人から、利益の分配を受ける形にしていた。ちなみにオランダの投資組合に落ちる所得は、たいてい多国籍のファンドに還流されるため、オランダ政府も税を捕捉できていないと言う話である。要するに外資系ファンドは、いつも悪どい商売を行っているのである。
    国税庁は、オランダの法人を実態のないダミー会社とし、これを使った「課税回避」と認定したようである。モルガン・スタンレー側は、これを不服として異議を申し立てている。いずれにしてもようやく「一矢を報いた」と言う感じである。

    リップルウッドのケースにこれを当てはめると、LTCBがオランダに設立された投資組合である。ポイントはこのLTCBが実態のある会社なのか、それとも実態のないダミー会社と認定されるかである。来年の2月で3年間の株式の譲渡制限期間が終了する。つまりリップルウッドは、新生銀行の株式を自由に譲渡できるようになる。税務当局がどう判断するかが注目される。またそれまで小泉政権が延命しているのかも見物である。

    まず外資系ファンドが、喜んで日本にやって来る状況を直す必要がある。税法の改定もその一つである。オランダに投資組合を作ると言う方法は、その道の人々には常識になっている(日本の企業も使っているらしい)。これなどは簡単に改正できそうなものであるのに、どうしてやらないのか理解できない。経済学者や若い政治家・官僚がおかしいのはしょうがない。彼等の中には、米国に留学し、変な経済学を学び、洗脳されて帰って来た人々が多いのである。時々ハバード米CEA委員長みたいな人物が発言し、「ネジ」を巻けば、またマインドコントロールが蘇るのである。それにしても何故、この人物はこのように日本に異常に関心を示すのか全く理解できない。自分の国の経済を心配した方が良い。



セイニア−リッジ政策についてまだ誤解している読者がいる。この政策に対して賛成・反対を別にして、より正しく知ってもらいたいものである。来週号では、これをまた取上げる。

筆者は、今、「モラトリアム」の実効性を調べたいと思っている。しかしなかなか資料とデータが手に入らない。読者の方で、適切がデータの入手法やデータそのものをご存じの方がいたなら、是非教えてほしい。バブル期前後に企業や個人が長期で借りた金額や毎年の返済額や金利などの数値である。一番知りたいのは、毎年の返済額である。長期借入金は、不動産投資を含む事業資金と住宅融資である。連絡先はaqua@adpweb.comである。

国債の利回りが久しぶりに1%を割ってきた。無責任に国債の暴落懸念を風潮してきた人々は、これをどう釈明するのだ。これはこのような人々の意見が政策に反映され、経済がとてもまずい方向に行っているサインではないか。

膠着状態であった為替が少しずつ円高になってきている。どの国も不安を抱え、資本は行く場に迷っており、この水準では、円安・円高どちらにも動く可能性がある。筆者には、米国の利下げ観測に加え、物価下落と外需依存を強めている日本経済を考えて、円高になる確率が大きいと思われる。政府・日銀の介入レベルがポイントになりそうである。

とにかく、株式市場や為替市場に介入することによって、延命されているのが小泉政権である。「人々に不幸だけを与えている小泉政権」は今や死に体であるが、どう言う訳か、どうしてもこの政権を延命させたい勢力があるようだ。一体目的は何なのであろうか。

塩川財務大臣は、「株価が50円以下の企業は、救いようがない」とボケた発言をしたようだ。小泉政権発足時には、50円以下の企業はほとんどなかった。だいたい小泉政権は、発足当初は絶対にマイナスの経済成長率にさせないと宣言していたではないか。自分達の公約違反には口をつぐみ、他人の責任だけを追求するとは「何様」になっているのだ。「ハルマゲドン」を起こしているのは、自分達ではないか。

総合デフレ対策で雇用対策を行うと言う。その財源を聞いてびっくりした。数年前に計上された雇用対策予算600億円のうち500億円以上が未消化になっており、これを使うと言うのである。つまりこれまで雇用対策と言って来たが、何もしてこなかったのである。「政府は、企業の整理が必要であり、それには雇用対策と言ったセーフティーネットが必要というが、そのセーフティーネットを壊しておきながら何がセーフティーネットの構築だ」と、ずっと本誌は主張してきた。まさにこれが証明されたのである。一人の雇用も作れない政府が、産業の再編などとんでもないことである。まず今の政府に、雇用対策など決してできないことを認識すべきである。したがって重要なことは、できる限り企業倒産を防止することである(もっとも小泉政権には全く期待していない。さっさと辞めることが、株価対策であり、雇用対策である。)

「銀座のデモ隊」には、共鳴するところがどんどん増え、東京都以外からの参加の問い合わせも来ていると言う話である。問題は、規模が大きくなって次回予定の集会とデモの準備が大変になって来ていることと、資金(おそらく会場費)である。連絡先はinfo@ibasen.comである。



02/10/28(第271号)「竹中平蔵大臣の研究」
02/10/21(第270号)「嵌められた話」
02/10/7(第269号)「銀座のデモ隊」
02/9/30(第268号)「末期的な経済政策」
02/9/23(第267号)「銀行の不良債権問題(その3)」
02/9/16(第266号)「10月号「諸君」の対談」
02/9/9(第265号)「セイニア−リッジ政策の推進(その1)」
02/8/12(第264号)「経済よもやま話」
02/8/5(第263号)「マスコミのチャイナースクール化」
02/7/29(第262号)「チャイナースクールの落日」
02/7/22(第261号)「中国の不当な為替政策」
02/7/15(第260号)「セイニアリッジ政策への反対意見」
02/7/8(第259号)「榊原慶大教授の文章」
02/7/1(第258号)「小泉政権の本音」
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02/6/3(第254号)「為替と物価」
02/5/27(第253号)「消費税の減税効果」
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02/4/15(第249号)「商品相場と世界の動き」
02/4/8(第248号)「経済予測のレビュ-」
02/4/1(第247号)「ニュークラシカル派の実験」
02/3/25(第246号)「ニュークラシカル派の論理」
02/3/18(第245号)「日本の所得格差の動向」
02/3/11(第244号)「通常では行わないような経済政策」
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02/1/21(第237号)「国債の日銀引受け政策」
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