- タイのバ-ツに続きフィリピンのペソも切り下げの方向である。そしてこの流れは他のASEAN諸国の通貨にも波及する勢いである。この原因をこれらの地域の中期的な景気循環で説明する向きもあるが、筆者はASEAN諸国が自国の通貨を米ドルにリンクさせていたことが一番の原因と考えている。米ドルが安かったうちは良かったが、ここ1、2年米ドルは高い水準で推移している。米ドルとリンクすることは、米国に製品を輸出する分には支障はないが、日本やヨ-ロッパ との交易条件を悪くしたのである。元々ASEAN諸国の製品は、技術力と言うより価格で持っていたのだから、通貨を高く維持すれば、経常収支が悪化するのは当然である。そこを為替投機筋に狙われたのである。
最近ではこれらの国も通貨を米ドルのリンクから離れ、フロ-トさせている。これが正解であろう。経常収支が黒字の中国や台湾さえ、黒字分で米国債を買って、自国の為替が高くならないようにしているのである。日本も結果的には、同様のことを行なっているのである。 自国の通貨が高い方が輸入物価も上昇しなくてメリットがあると言うエコノミストもいるが、これは間違いである。正確には「その国の生産性の向上の範囲での通貨は高くなってもかまわない」と言うべきである。 原料や部品を輸入してきて、それに付加価値をプラスして、製品を輸出する。その場合の付加価値を分解すれば、それは自国民の人件費になる。通貨を高く維持することは、人件費つまりコストを上げることになる。生産性のアップ分以上に為替が高くなれば、競争力がそれだけ失われることになる。 ASEAN諸国は外資の導入を図るために為替を高く維持してきたと言う解説もあるが、コストが上昇しては投資の対象地域としての魅力が薄れるのも事実である。以前から本誌では、ゆき過ぎた「円安」は周辺諸国の経済に悪影響を与えると主張してきた。筆者は、今回のASEAN諸国の通貨不安をさせたものの一つは、昨年の暮れからの「円安」と考えている。
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