- 商品相場の変遷
本誌がこれまでほとんど触れてこなかったのが、商品相場である。筆者も、個々の企業にとって商品相場は重要であるかもしれないが、経済全体の動きを見る場合には、物価を見ていれば十分であろうと言う感覚であった。それだけ商品相場を軽視してきたのである。せいぜい注目していたのは、原油価格ぐらいである。正直言って、商品相場を見る時のポイントもよく分らない。ところで昨年9月の同時多発テロ発生後、世界経済は一段と落込んだ。今日の経済は、その落込みからのリバウンドの過程である。多少商品市況が好転しても不思議ではない。しかしそれにしても最近の商品相場の動きがちょっと活発過ぎると感じたのである。
このような場合には、商品相場に関わる数値を表にしてみることが良いと思われる。まずここ数年の内外の商品相場の数値を取り上げる。夫々に基準や単位があるが、その説明は省略させてもらう。ところで商品相場そのものを解説した書物がほとんどないと言う事実には驚いた。本屋にも商品相場を適切に解説した書物がとにかくないのである。あるのは商品先物のテクニカル分析みたいなものばかりである。したがって今週号の内容が多少不十分であってもご容赦願いたい。
まず商品相場の動きを示す指数には色々ある。大体が石油や穀物などの一次産品だけの指数である。日経国際商品指数、ロイタ−指数、ダウ・ジョーンズ指数、CRB先物指数などが代表的である。例外的に日経商品指数は、一次産品だけでなく、一次加工品も加えている。また日経商品指数は円建て、ロイタ−指数はポンド建てであり、他は米ドル建てである。したがって日経商品指数とロイタ−指数は、対米ドルで為替変動の影響を受けることになる。
ロイタ−指数、ダウ・ジョーンズ指数は穀物や鉱物などが中心であり、石油が含まれていない。一方、日経国際商品指数とCRB先物指数には石油が含まれており、その比重は比較的大きい。日経国際商品指数はその4割の比重を石油が占めている。またロイタ−指数、ダウ・ジョーンズ指数は、採用商品それぞれのウエートは同じであり、それらの単純平均である。一方、日経国際商品指数は、採用商品毎にウエートが異なり、加重平均して指数を算出している。このような事柄を考慮すれば、筆者は、国際商品に関しては、日経国際商品指数が一番バランスが取れた指数と考える。
また表の中で、指数以外の商品は、筆者が適当に選んだ。NY原油期近が米国であり、H形鋼と金地金は日本での相場である。また日経商品指数は42種を使った。
内外の商品相場(暦年ベース)
| 日経商品 | 日経国際 | CRB先物 | NY原油 | H形鋼 | 金地金 |
| 96年平均 | 124.267 | 68.179 | 247.94 | 22.03 | 41.4 | 1,389 |
| 97年平均 | 117.694 | 67.614 | 241.90 | 20.61 | 41.8 | 1,321 |
| 98年平均 | 101.971 | 51.224 | 212.92 | 14.40 | 35.3 | 1,275 |
| 99年平均 | 103.233 | 53.415 | 194.78 | 19.30 | 31.1 | 1,054 |
| 00年平均 | 106.778 | 66.230 | 220.15 | 30.26 | 33.0 | 999 |
| 01年平均 | 100.218 | 58.591 | 205.97 | 25.95 | 35.8 | 1,091 |
| 先週末 | 101.637 | 58.799 | 201.64 | 26.21 | 37.5 | 1,307 |
この表からは、内外ともここ5〜6年の商品相場は下落傾向にあり、特に98年の下落は大きかったことが読取れる。筆者は、これは産油国の増産によって、輸出競争が激しくなり、OPECの価格維持する力が低下したためと考える。またこれに加え、アジアの通貨危機による景気後退によると考える。00年には商品相場は上がっているが、これは逆に原油代の高騰が影響していると考える。ちなみにナスダックの急落は、00年初頭からであり、米国の景気後退がはっきりしてきたのは翌01年からである。
それにしても日本のH形鋼の99年の落込みは大きい(もっとも鉄製品だけではないが)。所謂「鉄冷え」である。この頃から製鉄各社はリストラを急ぐようになった。また金価格の乱高下も注目されるところである。
しかしこの表からは、昨年9月の同時テロの影響が読取れない。そこで次は月毎の商品相場を表にしてみる。
内外の商品相場(月ベース)
| 日経商品 | 日経国際 | CRB先物 | NY原油 | H形鋼 | 金地金 |
| 01年8月 | 102.176 | 56.361 | 200.18 | 27.31 | 35.0 | 1,101 |
| 9月 | 100.376 | 56.798 | 195.36 | 25.69 | 35.0 | 1,113 |
| 10月 | 100.179 | 52.054 | 186.20 | 22.21 | 35.3 | 1,138 |
| 11月 | 99.203 | 49.194 | 188.41 | 19.67 | 36.0 | 1,121 |
| 12月 | 100.218 | 49.103 | 190.42 | 19.40 | 37.0 | 1,162 |
| 02年1月 | 100.928 | 50.732 | 191.44 | 19.73 | 37.0 | 1,240 |
| 2月 | 100.776 | 51.703 | 190.91 | 20.76 | 37.0 | 1,304 |
| 3月 | 101.155 | 56.320 | 201.86 | 24.44 | 37.5 | 1,279 |
| 先週末 | 101.637 | 58.799 | 201.64 | 26.21 | 37.5 | 1,307 |
この表を見る限り、内外で同時多発テロの影響の大きさがかなり異なっていることが分る。CRB先物指数が9月から、日経国際商品指数が10月からとかなり大きく下がったのに対して、日経指数はほとんど変化がないと言うことである。これは日経指数が一次加工品のウエートが大きいことが影響していると思われる。しかし日経国際商品指数とCRB先物指数は、とも3月には同時多発テロ以前の数値に回復している。
日経国際商品指数にいたっては、むしろテロ前の数値を上回っている。どうも石油だけでなく、他の商品価格も上昇しているものと思われる。これは米国の景気の回復をある程度示しているとも言える。ただしCRB先物は3月に入ってから急上昇しており、米国の商品相場の回復は、景気回復以外の要素があり、こちらの影響の方が大きいものと考えられる。しかしこれについては後ほど述べることにする。特に原油価格の高騰も目につく。3月から急上昇しており、そのうち商品相場全体に影響するものと考えられる。
それにしても日本の商品相場は弱い。円安が定着しており、本来ならもう少し上昇しても良いのであろうが、ほとんど変わっていない。デフレ経済が続く日本は、素材の価格は低迷しており、海外勢も価格が合わず、日本への売込みが困難と言う状況である。したがってこのような製品は、景気回復基調のアジアに流れていると言う話である。この表の数値はそれを裏付けているとも言える。
- 中東情勢と商品相場
どうも原油を始め、商品相場の動きが大きくなったのは3月に入ってからのようである。この様子を詳しく観るために、週毎の商品相場を表にしてみる。
内外の商品相場(週ベース)
| 日経商品 | 日経国際 | CRB先物 | NY原油 | H形鋼 | 金地金 |
| 2月8日 | 101.032 | 51.666 | 191.76 | 20.26 | 37.0 | 1.346 |
| 15日 | 100.678 | 52.432 | 191.58 | 21.50 | 37.0 | 1,313 |
| 22日 | 100.082 | 51.897 | 191.71 | 21.07 | 37.0 | 1,302 |
| 3月1日 | 100.803 | 52.772 | 195.05 | 22.40 | 37.0 | 1,310 |
| 8日 | 100.870 | 55.711 | 200.87 | 23.84 | 37.5 | 1,220 |
| 15日 | 101.130 | 57.124 | 203.49 | 24.51 | 37.5 | 1,248 |
| 22日 | 101.065 | 57.553 | 203.56 | 25.35 | 37.5 | 1,281 |
| 29日 | 101.155 | 57.621 | 201.86 | 26.31 | 37.5 | 1,328 |
| 4月5日 | 101.637 | 58.799 | 201.64 | 26.21 | 37.5 | 1,307 |
日経国際商品指数とCRB先物指数ははっきりと2月の末から上昇ピッチを速めている。これは景気回復と言った要素だけではとても説明できない。特に両方の指数とも石油の割合が大きく、石油価格の上昇の影響が大きいと考えられる。ちょうどこの頃から米国は「イラク攻撃」の根回し外交を中東各国を中心に始めた。またその後、イスラレエルのパレスチナ人居住区の攻撃を始め、一気に中東情勢が緊張した。今回の石油価格の上昇は、OPECが中東情勢の緊張を巧みに利用したと言う側面がある。産油国も、やっと石油価格を同時多発テロ前の水準に戻すことに成功したのである。
たしかに米国でのガソリンの販売が好調と言う話であるが、今は循環的に石油の不需要期である。たしかに2月半ばから毎週上げ続けてきた石油価格も、ここに来て一服状態である。本来の需要期は、冬場の灯油需要を見越した精製が始まる夏場からである。つまり世界経済の回復の度合と、中東を中心とした紛争の状況によっては、夏場に石油価格が再び高騰すると言う場面があり得ると言うことである。もっともその前に中東での緊張が高まれば、一時的に石油価格がさらに上昇すると言う場面も考えられる。
商品相場は、経済の活動レベルだけでなく紛争などの世界の情勢によって動く。特に産油国が集まる中東が舞台となれば、石油価格に影響する。このように経済を含めた世界の情勢が、商品相場に影響を与えるのは当然のことである。しかし特に今回商品相場を取上げたのは、商品相場の動きから逆に、今後の世界情勢の動きを予想できるのではないかと考えたからである。たしかに石油価格の動きを見ていると、なんとなく今後の状況が想像されるような気がする。ところで筆者は、米国によるイラク攻撃は、高い確率であると見ている。しかし直近の石油価格の動きを見ている限りでは、仮にこれがあるとしてもかなり先のことと思われる。
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