平成9年2月10日より
経済コラムマガジン

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本年は今週号が最後です。新年は1月15日からの発行を予定しています。

00/12/18(第190号)
第二次金融不安の可能性
  • 金融不安の要因その1
    来年の2,3月頃に第二次金融不安が起る可能性について、筆者は以前から考えていたが、始めて本誌で触れたのは、先々月の00/10/30(第183号)「財政問題の究極の解決法(その2)」である。最近では、色々なメディアで金融不安の再燃を危惧する記事や特集が目立ってきている。週刊東洋経済では「2月危機説」を特集していた。しかし内容を読む限りでは、何故2月に危機なのか分からないものであった。

    生保の破綻などで、漠然とした金融に対する不安は誰でも持っている。銀行に資本注入が行われたが、これで金融不安が解消されたとはとても思われない。根本の問題が解決されていないからである。この根本の問題と言うところが、人によって見解が違う。前述の東洋経済を始め、ほとんどのマスコミのは、問題の先送りが原因としている。彼等は、ハードランディング路線を採用し、よって良い銀行だけが残れば、信用不安もなくなると言う考えである。このような考えが根強くあるのはたしかである。しかしこの考え方がかえって金融問題を解決のつかないものにしている。

    筆者の考える根本の問題は、単純である。地価の下落傾向である。言い方を変えれば、地価の下落を止められない経済活動水準の低さである。バフル崩壊が金融不安の元とすれば、地価が上昇すれば、かなりの問題は解決するのである。上昇しないとしても、下落傾向に歯止めがかかれば、金融不安への対処は容易になる。反対に地価の下落したまま、悪い銀行を整理しても、その次には、これまで良いと言われていた銀行が悪くなるだけである。実際、銀行はリストラに努め、業務利益は出しているが、予定以上に不良債権が増加しており、利益の確保が難しくなっている。これは地価の下落が止まらないため、新たなる不良債権が次から次へと発生しているからである。ゼネコン、ノンバンク、流通と言った経営不安を囁かれている企業の多い業界も、不振の根本原因は地価下落による資産の減価である。


    マスコミが来年の2,3月に金融不安が起るとしている根拠は、いくつかに集約される。一つはゼネコンなどに対する債権放棄などによるこれまでの救済策が限界に来ると言う見通しである。実際、地方銀行の中には大手のメイン銀行の呼掛けに応ぜず、債権放棄を拒否するところが出てきており、再建計画が躓きそうになっている案件もある。

    もう一つは持ち合い株式の売却による株価の下落である。持ち合い株式の売却にはいくつかの事情がある。銀行は、資本注入の際の経営改善計画の中で、持ち合いの解消を当局から指示されている。さらにBISの資本の計算では株式の含み損益を加味することになっている。株価が安定、あるいは上昇を見込める株式なら良いのだが、業績が良くなる見込みのない会社の株式は早めに処分したいと考えるのが当然である。
    また2,002年度からの時価会計の導入されることも影響している。銀行だけでなく企業も、持株の株価の変動が財務諸表の数字の変動リスクとなることを避けるため、持株を減らしたいと考えている。実際、9月の中間決算では、多くの企業が持ち合い株式の時価評価を前倒しで行っている。

    持ち合い株式の売却額の予測は難しい。一説では、銀行は持株70〜80兆円のうち、3,4割と言われている。一方、事業法人の方も10〜20兆円ほどの株式の解消売りが予想されている。合計で40兆円くらいになる。ちなみに9,10月の株式相場の下落は、持ち合い株式の売却も影響していると言われている。しかしどの程度の解消売りがなされたのかは不明である。ただ現在のところ持ち合い株式の解消はほとんど進んでいないのが実態である。もっとも解消売りのタイミングは、来年の2,3月にだけに行われるものではなく、一年以上続くものと考えられる。

    株式の売却圧力は他にもある。おなじみの決算対策売りである。特に予想より決算が悪かった銀行の株式売却が注目される。持ち合い解消売りと区別がつきにくいが、利益が出ている株式が対象となろう。この他に、契約解除に伴い、必要な資金を調達するための生保の株式売却が注目される。

    特に最近、買い戻しのクロス取引による益出しを公認会計士が認めない。つまり有価証券売却益を計上するには株を売りっ切りにする必要がある。この株式は市場に出回ることになる。問題は、1兆円にとても届かない今日の株式市場の取引水準では、これらの売却をとても消化できないことである。
    金融不安の一つの大きな要因は、これらの株式売却圧力によって株価が大きく下落することである。これによって銀行の不良債権償却の有力手段であった株式売却益の確保が、非常に難しくなる可能性が強い。そして株価の下落が予想されるならば、下がる前に株式を売ってしまえと言うことになり、かなり早い段階から株価の下落が始まることも考えられる。

    景気の先行きも暗い。夏場に各種機関は経済成長率の見通しを上昇修正した。しかし本誌はそんなに甘くはないと主張していた。やはりここに来て下方修正するところが出てきた。景気については良い材料がない。これまでは輸出と設備投資に頼る景気回復であった。しかし輸出は頭打ちである。たしかに対ドルでは円は多少安くなったが、ユーロが安くなっているため、実効為替レートはかなり高くなっている。さらに米国の景気拡大も緩やかになる。どんどん輸出を伸ばせる環境にない。

    一方、設備投資は増えてはいるが、最終需要が増えないのであるから、これ以上の伸びは期待できない。小さい明るい材料は、高金利時代の郵便貯金の満期到来が続くことと、原油高に伴う産油国のオイルマネーの行方くらいである。
    1%とか1.5%の成長率と言っても、物価の下落率と同じ値である。つまり名目では依然ゼロ成長が続いているのである。さらに政府や日銀が調査対象としているは比較的経営が安定している企業である。その他の中小零細企業の業績が悪いのであるから、最終的な数字は下方修正される可能性が強い。


  • 金融不安の要因その2
    前段で述べたことは、一般的に言われている2,3月金融不安説の原因に筆者の考えを加えたものである。しかし筆者は、この他に重要な不安要因を指摘したい。2,002年4月に開始が予定されている「ペイオフ」である。「ペイオフ」ついては、本誌も00/1/24(第147号)「「ペイオフ解禁」の延期」から3週間に渡り取上げ、「ペイオフ」は延期ではなく、白紙撤回すべきと主張してきた。
    2,002年4月に「ペイオフ解禁」と言えば、先のことと考えがちであるが、預金の多くは1年定期である。つまり実質的には、来年4月に「ペイオフ解禁」が開始されると考えるべきである。

    「ペイオフ解禁」に関する大きな問題は、預金者が「ペイオフ」のことをよく知らないと言うことである。知っていても十分な知識を持っているとは言えない。せいぜい1,000万円を超える預金については100%保証されないと言うことぐらいである。自分は500万円しか預金がないから大丈夫と言った過った認識を持っている。しかし一旦「ペイオフ」が実施されると、預金額の多寡を問わず、預金は全額凍結される。ただし仮払いが認められているため、60万円(以前の構想では20万円であった)まで引出すことはできる。残りについては、ペイオフの精算業務終了を待たなければならない。この期間が3ケ月なのか半年、あるいは1年以上なのかやってみなければわからない。つまり1,000万円以下であっても、仮払分を除けば、自由には使えないのである。

    「ペイオフ」については国民のほとんどが正しくは理解していない。したがってアンケート調査をすれば、「ペイオフ」に賛成するものが2,3割もいるのだから驚かされる。実際、世界で「ペイオフ」をやっている国なんかない。以前米国では、日本には存在しないような小さな金融機関で「ペイオフ」を実施したことがある。しかしその煩雑さで、それ以降「ペイオフ」は行ってはいない。国民はこのようなことを知らず、「ペイオフ」は国際的に普通なことと想わされている。


    4月が近付くにつれマスコミが「ペイオフ」を取上げ、解説がなされ、人々は実態を知ることになる。金利はほとんどゼロであって、人々は金庫がわりに銀行に預けているのに、1,000万円までしか保証されないのである。自己責任で預ける銀行を選べと言っても、どうやって銀行の安全性を調べるのであろうか。まさか自分で銀行の財務諸表を取寄せて分析でもしろとでも言うのか。さらに1,000万円まで保証していると言っても、直ぐに引き出せるのは60万円までであり、残りはいつになるのか分からないのである。「ペイオフ」の実態が知られると、預金はかなり移動することが容易に想像できる。

    4月近付くにつれ、週刊誌などのメディアが、「危ない銀行」と言う特集を喜んで組むはずである。現在「危ない生保」と言う記事が出回り、危ない生保の解約が集中し、その順番で生保が破綻している。ちょうど同じことが銀行でも起る可能性が強い。さらに生保より預金の方が人々に与える影響はずっと広く強いと考えられる。経営基盤の弱い銀行や信組は要注意である。

    金融庁は銀行に「ペイオフ」の対応策の実施を要求しており、さらに今月対応状況を一斉に調査する。しかしこの中で「ペイオフ対応商品や制度の開発」を促すと言うことが一項目となっている。これは一体どう言う意味なのか。そもそも「ペイオフ」は預金者の自己責任で銀行を選び、リスクも自分でかぶると言うのが根本の発想のはずである。そしてこれによって金融機関の合理化を促すと言うシナリオであったはずである。「ペイオフ対応商品や制度の開発」はこれに真っ向から矛盾する発想である。

    「ペイオフ対応商品や制度の開発」の具体的なものとしては、「夜間に投資信託の自動振替する預金」や「提携銀行が互に保証する制度」、さらに「保険」などが考えられている。しかし一部の人々がこれを利用すれば、残りの人々の損失負担がそれだけ増えることになる。また銀行の提携と言っても、どの銀行からも相手にされないところが出てくるはずである。さらに最悪の場合には提携によって銀行の連鎖倒産の発生もあり得る。また「保険」と言っても、誰が保険料を負担するのか。それが預金者の負担と言うことになれば、預金者は始めから投資信託でも買った方が良い。実際、米国でも以前銀行の経営不安が起って、預金が投資信託に移動し、今日の米国株価高騰のスタートとなった。

    実際、日本で起ると予想される現象は、一部の銀行と郵便局への資金の集中と国債の購入であろう。今日の国債利回りの低下傾向もこの走りと筆者は理解している。

    筆者の来年2,3月の金融不安の根拠は前段で述べた株価の問題に加え、この「ペイオフ」である。しかしほとんどのマスコミはこの「ペイオフ」の問題を取上げない。それは日経新聞を始めほとんどのメディアが前回の「ペイオフ解禁延期」にものすごい反対をしたからである。また竹中平蔵氏を始め、経済学者やエコノミストのほとんどが「ペイオフ解禁延期」に凄まじく反対していた。さらに民主党や加藤紘一氏や政策新人類と言った政治家も強く反発していた。これらすべて経済オンチの人々である。今さら「ペイオフ解禁」が問題とは言えないのである。

    今「ペイオフ」については無気味な沈黙が続いている。誰か「ペイオフ解禁再延期」あるいは「ペイオフ白紙撤回」を言出す人の登場を待ってかのようである。またもや亀井政調会長に頼ると言うことになるのか。



次の経済コラムマガジンは1月15日を予定している。テーマは、それまでの間に大きなことが起らないとしたなら、今週号の続きである。

ようやく 消費税の表示が「内税」に統一することになった。これは本誌がずっと主張していたことである。価格表示を最終的に必要な金額で表すことは当然のことである。当時、税金金額を消費者が意識すべきと言った「観念論者」や実務から離れた経営者団体の主張で外税表示が決まったのである。「ペイオフ」の例に見られるように、このような「観念論者」やエリートと言われている人々が世の中をおかしくするのである。この構図は戦前から一つも変わらない。

森首相には大きな失政はないと、これまで本誌は主張してきたが、橋本元首相と柳沢氏の入閣人事は大失政になる可能性が強い。ただし柳沢氏については、「ペイオフ」の対応が大きなポイントである。

最近、当コラムの内容をレポートなどに使いたいと言うご要望がよくある。出典を明らかにしてもらえば、ご自由に使っていただいて結構である。
それでは良いお年を!!


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00/10/16(第181号)「巨額財政赤字騒動の不思議」
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99/4/12(第110号)「寡占と所得の分配」
99/4/5(第109号)「寡占市場の話」
99/3/29(第108号)「完全競争市場の話」
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99/3/15(第106号)「本誌の経済予想とその間違い」
99/3/8(第105号)「景気の現状(99年春)」
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99/2/22(第103号)「現代の日本経済と投資」
99/2/15(第102号)「需給ギャップと投資」
99/2/8(第101号)「99年度の経済を見通す」
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