平成9年2月10日より
経済コラムマガジン


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97/6/9(第19号)
  • 先週号6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」は好評を博したのか、アクセス数もかなり増えた。筆者が先週号でそのように考えたのは、日本では、経済政策としての「内需拡大策」がうまく実現せず、単にバブルを生んだだけと言う問題意識からである。今後、再び日本に内需拡大を求める声が大きくなると思われる。しかし現状では、これに応えようとしても、またうまく行かない確率が高い。
    バブル発生を回避し、かつ「内需拡大」を進めるには「地方経済の活性化」、そしてそのための地方と大都市圏を結ぶ交通インフラの整備と、大都市圏の土地の有効活用である。特に後者については、そのため郊外に伸びる交通インフラの整備が必要となる。しかし、これを達成するには長い時間と莫大な費用が必要となる。まずいのは費用の大部分が土地の買収に消えることである。さらに住民の立ち退きが難しい。このことを考えるとほとんど実現性はない。
    これらをまとめて解決するのが深い地下、つまり「大深度」の利用である。このようなアイデイアが仮に実現できたとしたら、年収の3年分くらいのお金で80坪くらいの土地付きの住宅がだれにも購入できる可能性がある。
    現在、大都市圏では集合住宅つまりマンションが売れているが、これらは色々将来問題となる可能性がある。場所や建て方によっては、何十年後には資産としての価値 がなくなっているかもしれなし、またこうゆうところはスラム化することも考えられる。やはり、日本では土地問題を解決し、土地付きの優良な住宅を容易く入手できるような政策が必要である。
    いずれにしても「住宅」については「内需拡大」の決め手であり、これについては後日また述べたい。


  • 諌早湾の干拓事業がもめている。不思議なことに地元は賛成しているのにその他の人々が反対しているのである。その善し悪しを別にして、筆者が注目しているのは、その費用の安さである。1,800haで800億円であり、坪当り13,500円くらいである。防潮堤の費用1,500億円をプラスしても、坪4万円以下である。「関西新空港」などに比べるとけた違いに安いのである。いかに「干潟」と言うものが、ムツゴロウの生息にも向いているが、干拓にも向いているかの証明である。
    諌早湾は有明海につながっている。これらの海は外海との交流が極端に少なく、まわりの川から流れてくる土砂が堆積しやすい構造になっている。つまり建設された防潮堤の外側には新しい「干潟」がまたでき、そこにはまたムツゴロウが住むことになるのであろう。時間が過ぎれば、いずれまたそこが干拓の適地になると言うことである。
    長崎県の経済は長期間低迷している。また、全体的に平地が極端に少なく結構地価は高い。低迷している長崎県にあって唯一経済的に伸びが見られ、人口も増えているのはこの諌早市から大村市にかけてである。
    できあがる干拓地は全部農業に使う予定らしいが、筆者はある程度は宅地として売却し、干拓費用の大半を回収した方が良いと考える。もっとも、現在の農地と交換して、そこを宅地にする方法も考えられるが。
    筆者は、もちろん開発については環境とのバランスの上で進めるべきと考えている。しかし今回の反対派の中には「公共工事」そのものに反対と言う人間が多いようである。地元から見れば極めて無責任な連中と映るであろう。今後「公共工事」にからみ色々問題が起こった時には、またテレビの映像としてこの諌早湾とムツゴロウが映し出されることも十分予想される。その度に関係者はやりきれない思いを再びすることになるのである。


ビックバンと為替を考える
  • 金融ビックバンの第一段として、来年の4月から「外国為替管理法」の「新改正法」、つまり「新外為法」が施行される。これにより国の内外を行き来する資金の流れがより自由になる。また、国内においても為替の取り引きが自由になる。問題は、このことによって資金の流れがどうなって、為替水準はどうなるかである。経済に与える影響としては、「資金の流れ」自体より「為替水準」の動向の方が大きいであろう。
    大方の論者の見方は、「日本から大量の資金が流れ、大幅の円安になる」と言うことらしい。具体的な数値を挙げている人もいる。為替取り引きを自由化した時の諸外国の例から、日本ではマネ-サプライの5~6%、つまり38兆円くらいの資金が流出すると予想している。経験的には1兆円資金が流出すると「円」が1円安くなることから、為替レ-トは160円くらいになると言うことらしい。他の人もだいたいそのように考えているようだ。
    筆者は、法律の施行後しばらくはある程度の資金流出が起こる可能性については否定しない。しかしそんなに円安になるような事態は想定できない。125円でも「円が安すぎる」と経常収支の黒字拡大を懸念する日米両国の政府が「160円の円安水準」を放置するはずがない。だいたい、来年の4月頃の世界の金融市場の状況がはっきりしない現時点で資金の流れを予想することは難しい。
    そして、筆者は、ある場合や条件によっては逆に「円高」、つまり日本に資金の流入があるのではないかと考えているのである。そしてこれが今週号のテ-マである。

  • 日本からの大量の資金流出を予想する人々の論拠は次の通りである。
    1. 内外の金利差がある
    2. 海外市場の方が魅力的な金融商品を持っている
    3. 海外では利子に源泉税がない
    4. 海外には有価証券取り引き税がない市場がある
    5. 日本人でリスク低減のため資産の分散を図る人が出てくる
    しかし、筆者は、これらについて、最後の「資産の分散」を除きあまり論理的ではないと考える。まず、「内外の金利差」であるが、これについては本誌では為替リスクを考えると論理的におかしいと繰り返し主張してきたことである。理論的な説明は本誌5/19(第16号)「金利と為替を考える」を参照願いたい。実際、今年に入って「金利差がある」と言って行われ、実行された大量の「外債投資」や「外貨預金」がこのところの「円高」で大損していることから実証済みである。理論と実際の資金の流れが違うので、その矛盾が蓄積され、どこかで破綻するのである。こう言うことは過去に何度も経験済みである。
    2番目の「魅力的な金融商品」についても、同じようなものが国内でも販売されれば、それほど積極的な理由にはならない。だいたいハイリタ-ンの商品はハイリスクであるのが普通である。
    次に「利子の源泉税」である。たしかに日本は源泉方式を採る数少ない国の一つであるが、外国の場合は源泉税のかわりに現地の税務当局に「申告納税」を行うことになる。さらに、これに加え日本国内で総合課税の申告が必要になる。もちろん二重課税回避から外国で収めた税額は納税額から控除されるが、ト-タル的に有利になると限らない。始めから脱税が目的なら別であるが、通常は利子に源泉税がかからないから有利と考えるのは間違いである。特に、大蔵省は個々の資金の動きについて、毎月銀行から報告を受けることにしている。これに関連し、これまで課税逃れとの指摘が多い「ゼロク-ポン債」についても証券会社に「支払調書提出」を義務づけると言う方針から、ビックバンに備えた「課税逃れ防止策」の全体の体系だけは整えられつつあると言える。
    有価証券取り引き税についてはちょっと難しい。たしかにこれが低い市場やない市場に取り引きが流れる可能性はある。しかし、その外国の市場で「日本株」の取り引きが活発でなく、取り引きが成立しないケ-スが多い場合はそこは魅力的な市場とは言えないであろう。これについては、現時点ではわからないことが多いので、多くは語れないが、あまり大きな影響はないと思われる。

  • 筆者は、このように「新外為法」によって日本から流れる資金は、理屈の上ではそんなに大きくないと考えている。しかし、最近までの「外債投資」や「外貨預金」のブ-ムのように、世間では理屈を超えた行動がよく起こるものである。つまりマスコミなどによって作られるム-ドとか「空気」言うものがある。また、そう言う「空気」を作り出すのに手助けするエコノミストや解説者がじつに多いのである。
    来年の4月以降の為替動向を占うにはこの「空気」と言うものの動向に注視する必要がある。さらに目先筋と言った人々がこれに先回りして、「円売りドル買い」の行動を採ることも十分に考えられる。

  • 世間の見方と違って、筆者は、「新外為法」により、場合によっては、日本に資金が流入して来て、結果的に「円高」になることもありうると考えている。なぜなら「新外為法」により、資金は流出しやすくなるのは事実であるが、反対に流入もより自由になるからである。日本の市場が魅力的と考える外国人もいるはずである。
    筆者が日本の市場が良いと思われる点は「預金の払い戻しの保証がある」ことである。日本を除けば、外国では銀行が倒産した場合、「ペイオフ」が適用されるのが普通である。つまり最高保証額を超える分は全額までは保証されないのである。日本も原則は「ペイオフ」である。1,000万円以上の預金は保証されていない。昨年成立した「金融三法」の一つ、「預金保険法の改正」では1,000万円以上の預金については、保険事故が起こる度に預金保険機構が検討し、適当な保証割合を決めることになっている。
    ところが、この法律は成立したものの、その施行は2,001年の4月からである。それまでは暫定として「金融秩序の維持を目的とした場合には、保証割合を大蔵大臣が決める」ことになっている。実際、これまでの銀行・信組の倒産では、預金保険機構が貸付と言う形をとって、利息を含め100%の保証を行っている。それも預金保険の対象外のCDや外貨預金も払い戻しの対象にしているのだ。驚くのは、最近起こったある長期信用金庫の危機の際には、有価証券である「金融債」の保証を真剣に検討されたほどである。つまり2,001年までは日本の預金は事実上100%保証されていることになる。一応、この措置は2,001年までと言うことになっているが、その時点でまだ金融機関の不良債権問題が片付いていない場合には、この措置が延期されないとも限らない。
    このような預金に対する手厚い保護措置は世界に類をみないものである。日本の中にいてはこのことのメリットは感じられないかもしれないが、外国から見ればとても魅力的なことであろう。そして、この点が、筆者が「為替の自由化によって海外から大量の資金が流入する可能性がある」と主張する根拠である。

  • 資金の動きはその持ち主の性格を反映するものである。ハイリタ-ンを求める場合はハイリスクをいとわないし、反対に堅実な運用を心掛ける場合は低いリタ-ンで我慢するものである。世の中には最も臆病な資金と言うものがある。つまり利息はほとんどなくても、安全であることが第一と言う資金である。つまり安全と言う観点から見れば、少なくとも2,001年までは邦銀に預金することがベストである。
    ただ、このタイプの資金は為替リスクも嫌うかもしれない。しかし、「新外為法」が施行され、世間で言われているように日本から資金が流出し、為替がある程度「円安」になり、「為替リスク」が減少すれば、どっと日本に流れてくる可能性がある。
    また、この流れは、その時点の欧米の金融市場の状態にも関係してくるであろう。欧米の金融機関の信用状況が問題になってくるのである。特に米国では銀行に対する信頼が完璧ではない。むしろ経営の安定とした一般企業の方が信頼されている。だから資金は預金に回るより、株式投信を通じ株の購入に向かいやすいのである。
    おりしも米国の市場は活況を呈している。しかし、筆者は、これにはかなりバブルの部分が含まれていると考えている。ジャンクボンドや不動産への投資も活発らしい。最近M&Aをおこなった企業の「格付け」が下がるケ-スが増えている。通常、M&Aを行った場合は、「間接費の減少」とか「市場支配力の強化」と言ったシナジ-効果を認め、「格付け」が上がるのが普通である。よほど現在の株価が、実体より高すぎると格付け機関が見ている証拠であろう。
    このバブルめいたものが壊れるとしたら「いつ頃か」と言うことである。これが「新外為法施行」の前と言うことになれば、日本に逃避してくる資金のボリュ-ムもそれだけ大きくなるであろう。

  • 幕末の頃、日本から大量の「金」が海外に流出した。原因は、当時日本では「銀」の「金」に対する交換比率が諸外国より良かったのである。したがって外国勢が自国では交換価値の落ちる「銀」を大量に持ち込み、日本で「金」と交換し、この「金」を持ち去ったのである。当時の日本人はこれに気が付かなかったのである。国際的な投資に慣れている連中は、常にその国では気が付かれていない有利な点を見つけるのが実にうまい。つまりグロ-バル・スタンダ-トからはずれていて、かつ有利な所を見つけ、これを利用するのである。日本においてはこの「安全」と言うものがこの一つに該当するであろう。



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97/6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」
97/5/26(第17号)「内需拡大と公共工事を考える(その1)」
97/5/19(第16号)「金利と為替を考える」
97/5/12(第15号)「規制緩和と景気を考える」
97/5/5(第14号)「為替の変動を考える」
97/4/28(第13号)「日本の物価と金利を考える(その2)」
97/4/21(第12号)「日本の物価と金利を考える(その1)」
97/4/14(第11号)「日本の土地価格を考える」
97/4/7(第10号)「当マガジン経済予測のレビュ-」
97/3/31(第9号)「日本の株式を考える」
97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レ-トの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レ-トの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レ-トを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」