平成9年2月10日より
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来週号で本年は最後です。新年は1月15日からの発行を予定しています。


00/12/11(第189号)
経済問題論議の混乱
  • へっぽこ経済学者
    先々週久しぶりにテレビ朝日系列の「朝まで生テレビ」を観た。最初テーマは「加藤グループの造反劇」であったが、途中から日本の経済対策に話が移っていった。与党は、まだ経済の回復は十分ではなく、補正予算などによる景気の支援策が必要と言っている。一方、野党はこれまでの「バラマキ財政支出」では限界がある。むしろ財政再建に一歩踏出せと言う意見である。つまり双方とも従来の主張を繰返しているだけである。

    ただ自民党の議員の中には、現在の与党の経済政策に否定的な、むしろ民主党に近い考えの者もいる。このような考えを持つ議員は、加藤グループに限られていないのである。したがって自民党の政策は、これらの議員の意見を配慮した妥協の産物である。つまり中途半端な経済政策である。何回も言うが、小淵政権の後半からこのような政策がずっと続いており、森政権になってはその傾向が顕著である。補正予算の規模を見ても、今日の財政運営は緊縮型に傾いている。しかしそのような財政政策でさえ、「バラマキ」と非難されているのである。

    このような経済運営を続けることはまずい。したがってむしろ一度民主党が中心の政権を作って、彼等に自分達が主張している経済政策をやってもらい、失敗してもらった方が手っとり早いと筆者は常々考えている(半分冗談であるが、半分は本気である)。しかしその方が早く方向転換ができるのである。

    とにかく経済運営に関するマスコミ、世論、政治家の考えが完全に混乱している。やはり小淵政権が誕生した頃の経済危機が再来しない限り、経済政策の転換は無理と考える。


    それでも番組の途中には、「土地の下落」が根本の大きな問題であり、この傾向を止める施策が必要と言うまともな意見も出始めた。これには民主党の若手が「今でも日本の地価は適正価格より高い」と反論していた。
    たしかに土地の収益力を見れば、現在の地価がまだ高いことは認める。しかし適正な地価になるまで、経済の不振を放置しておけば、適正な地価に下がった時分には、さらに適正な地価は低くなっているはずである。筆者は、この議員が満足する水準まで下落した時には、日本経済は壊滅状態になっていると予想する。当然適正な地価水準も経済の活動水準に影響を受けるのである。

    筆者も話題がいよいよ核心に迫ったと思ったとき、パネリストであるへんてこな経済の教授が「しかしインフレになってはこまるし・・」と口を挟んだ。これで場の雰囲気が変わった。予想通りこの後、議論は迷走し始めた。筆者も急に眠くなって、寝てしまった。このへっぽこ経済学者の一言がこの場の議論を壊してしまったのである。

    筆者は、前から主張していることであるが、議論をするには、まず自分の主張の前提条件を明らかにして行わなければ意味がない。これを互に明らかにせずに議論をするから、100万年間議論を続けても結論が出ないのである。

    例えばこの議論の場合には、「インフレ」が良いことなのか悪いことなのかを明らかにすべきである。さらにインフレが悪いとしても、年率でどれくらいのインフレが悪いのかを明示すべきである。少なくとも「インフレは絶対にだめ」と言う前提では、採用できる経済政策には限度がある。議論が迷走するのも当然である。


    経済の世界では色々な問題がある。一つの問題を解決しようとすると、別の問題を悪化させる可能性がある。ところが時々全ての問題を解決する方法があると主張する人々が出没する。ちょっと昔なら「プロレタリアート独裁」「世界同時革命」と言った主張である。今日なら「小さな政府」論がこれである。「小さな政府」が実現できるなら、全ての問題は解決すると堅く信じている。そして共通して言えるのは、このような考え方の人々は、自分達が一番賢く、反対に問題を一つ一つ解決して行こうとする人々を「ばか」と思っている。自分達こそが前衛と言う信仰である。

    ところで筆者は、「今、経済で何が一番の問題」かと言うことをまず議論すべきと考える。筆者は、「雇用問題」を最重要と考える。中高年者の雇用問題もさることながら、現在の若年層の就職難が将来に及ぶ重要な問題である。

    仮に雇用問題を解決しようとすると、どうしてもインフレを伴うかもしれない。しかしインフレが起っても、解決しようとする問題の方が重要で優先される場合には、インフレを容認すべきである。もちろんインフレを容認すると言っても、どこまで容認されるかが次の問題である。参考までに筆者は、すくなくとも欧米のような2〜3%くらいの物価上昇は最低容認すべきと考える。実際は、もっと高い物価上昇を伴う経済政策でなければ、地価の下落傾向に歯止めはかけられないと考えているが。

    「インフレ」が困るかどうか、あるいはどの程度までのインフレなら許容されるのかは、このようなへっぽこ経済学者が決めることではない。問題は、どの経済政策の選択が国民にとって好ましいかと言うことである。これは政治家が責任を持って判断することである。もっとも今のところ「経済で何が一番の問題」と言うことについてのコンセンサスが得られていないことが、経済論議の混乱の原因の一つではある。


  • 経済崩壊のもう一つのシナリオ
    最近、平日の真昼間に奇妙な長い人の行列を見る。パチンコ屋の新装オープンの日である。驚くのはほとんど全員が若い人々である。ひと頃昔は年配の人もいたが、最近はあまり目立たない。どうも従来のパチンコからパチスロに人気が移っているいるのが原因のようである。パチスロの方が勝負が早いと言うことで、特に若い人々が好むようである。パチンコ屋もこれに対応し、パチスロ台の割合を大きくして新装オープンを行う。したがって行列に若い人が目立つことになる。

    しかしこれだけ大人数の若者が平日の真昼間にパチンコ屋に並ぶと言う光景は、昔なら絶対に見られないことである。若い人々の中には大学や専門学校の学生もいると思われるが、かなりの割合でフリータが混じっていると思われる。ところでフリータと言う言葉が一般的になって10年間くらい経つであろうか。一時的と思われた社会現象が、むしろ定着し、拡大しているのである。アルバイトと言うものが、正業につくまでの一時的な仕事と考えられたが、今日のようにずっとアルバイトを続ける若者がこんなに増えるとは思われなかった。

    新卒者の就職難は依然深刻である。高卒はもとより、大卒も厳しい。地方では大卒の内定率が50%くらいである。さらにこれだけ就職難であるから、「ろくな就職先」がないのが実態である。正社員になった者も、就職先に満足している者が少なく、一旦就職しても離職するケースが多い。今後もフリータが増えることは確実である。

    フリータがどんどん増えることは様々な問題を生む。まず「ろくな就職先」がないと言うことは、当然、中高生の物の考え方や行動に影響を与える。将来は同じフリータと言うことになれば、こつこつ努力するよりも、毎日を楽しく過ごした方が良いと考える。またフリータの仕事は主に単純労働である。そしてどれだけ経験を積んでもアルバイトの時給が上がることはほとんどない。

    日本人が高い所得水準を維持していくには、自分の行う仕事の付加価値を高める必要がある。しかしフリータは、正社員のように企業内で継続的に教育を受けると言う環境にない。つまり将来もずっと単純労働を続けることになる。つまり今日日本で起っているフリータの増加傾向は、将来の日本全体の所得水準の維持を難しくする。所得格差が大きくなるだけでなく、日本の所得水準全体が下がる可能性があるのである。


    今日、経済の最重要問題と考えられていることがピントから大きく外れている。先週号で取上げた「財政の破綻」(日本の国債の利回りは世界で一番低いのにどうして財政が破綻するのだ)とか、今週号で取上げたへっぽこ経済学者が主張する「インフレ」(地価の下落が続き、物価も下げ続けている日本で心配するのは、インフレではなくデフレである)は、よほどのことがない限り起らない事柄である。問題はそのようなことではない。むしろこのような起りそうないことをことさらに問題にすることが原因となって、かえって本当の問題の解決を困難にしているのである。

    中長期的な大問題はここで取上げたフリータの増加や過度の所得格差の拡大である。財政の破綻で経済が破綻すると言うことはないが、フリータの増加や過度の所得格差の拡大によって社会が破綻し、その結果経済が破綻すると言うことはあり得る。ところがこのような問題は、メディアではほとんど取上げない。問題が緩慢に進むため、人々が気がつかないのかもしれない。しかしこのような問題を放置しておけば社会は確実に「しっぺ返し」を受けることになる。筆者の感想では社会の破綻は色々なところで既に始まっている。「しっぺ返し」が始まっているのである。大都市では、本来憩いの場である公園がホームレスに占領されている。これも「しっぺ返し」のほんの一例である。



フリータの増大は、ちょっと解決が困難な中長期的な問題である。そして短期的な問題は、金融不安の再燃である。来週号では、これを取上げる。国債利回りもとうとう1.5%台に低下した。なお、来週号は今年の最終号である。

森改造内閣がスタートした。筆者は、どうしても納得のいかない閣僚が二人いる。一人は橋本元総理である。この人物は、失政の責任を取って、政治家を辞めるべきだった人物である。このような政治家を閣僚に任命する森首相の考えと言うものがなさけない(意図が分かるだけに)。もう一人は、柳沢金融再生委員長である。柳沢氏は「ペイオフの再延期」はしないと断言している。とにかく日経新聞に誉められるような政策を進めるようなら、日本経済もお終いである。

また日本の政界には「改革」「改革」の嵐が吹き始めた。このような動きは、意味がないだけでなく、現実に起っている問題の解決にかえって邪魔になる。日本政界では、力がなく、党内基盤のない政治家ほど、政権延命のため「改革」を唱えたがる。昔は三木、海部元首相であり、最近では橋本元首相である。とにかくマスコミを味方につけたいのである。


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00/12/4(第188号)「シミュレーション分析の見方」
00/11/27(第187号)「面白い言葉二題」
00/11/20(第186号)「日本のエリート考」
00/11/13(第185号)「急がば回れ」
00/11/6(第184号)「「国債の日銀引受」への評価」
00/10/30(第183号)「財政問題の究極の解決法(その2)」
00/10/23(第182号)「財政問題の究極の解決法(その1)」
00/10/16(第181号)「巨額財政赤字騒動の不思議」
00/10/9(第180号)「財政赤字とマスコミの扇動」
00/10/2(第179号)「日本の需給ギャップ」
00/9/25(第178号)「経済成長率の話」
00/9/18(第177号)「日銀の独立性をめぐる誤解」
00/9/11(第176号)「日銀の独立性の怪しさ」
00/9/4(第175号)「ゼロ金利とマスコミの論調」
00/8/28(第174号)「今後の株価の動向」
00/7/31(第173号)「日本における「IT革命」」
00/7/24(第172号)「日銀から通貨庁へ(その2)」
00/7/17(第171号)「日銀から通貨庁へ(その1)」
00/7/10(第170号)「政府の経済への関わり」
00/7/3(第169号)「昨今の話題(その1)」
00/6/26(第168号)「効果ある失業対策」
00/6/19(第167号)「総選挙と「無党派層」」
00/6/12(第166号)「本当の「セーフティーネット」」
00/6/5(第165号)「日本の産業構造と失業」
00/5/29(第164号)「GDPと政策目標」
00/5/22(第163号)「グローバル化と市場の競争」
00/5/15(第162号)「経済のグローバル化とNGO」
00/5/8(第161号)「インターネットと株式市場」
00/4/24(第160号)「米国の株式市場の行方」
00/4/17(第159号)「Eコマースの将来性(その2)」
00/4/10(第158号)「Eコマースの将来性(その1)」
00/4/3(第157号)「「日銀による国債の引受」政策」
00/3/27(第156号)「インフレとデフレの功罪(その2)」
00/3/20(第155号)「インフレとデフレの功罪(その1)」
00/3/13(第154号)「国債の日銀引受に関わる諸問題」
00/3/6(第153号)「資金供給の増大とインフレ」
00/2/28(第152号)「澱んだ資金の経済への影響」
00/2/21(第151号)「もう一つの累積債務の解決方」
00/2/14(第150号)「政府の累積債務に関わる問題」
00/2/7(第149号)「ペイオフ延期騒動と日経新聞」
00/1/31(第148号)「「ペイオフ強行派」への反論」
00/1/24(第147号)「「ペイオフ解禁」の延期」
00/1/17(第146号)「有力エコノミストの対談」
00/1/10(第145号)「新年度の経済を見通す」
99/12/20(第144号)「為替の話あれこれ(その1)」
99/12/13(第143号)「中堅以下の企業のリストラ」
99/12/6(第142号)「大企業のリストラ」
99/11/29(第141号)「商工ローンと日本人」
99/11/22(第140号)「あやしい常識」
99/11/15(第139号)「金融のさらなる量的緩和」
99/11/8(第138号)「為替変動と日銀」
99/11/1(第137号)「ニセ札とインフレ」
99/10/25(第136号)「もう一つの実質金利の実体」
99/10/18(第135号)「もう一つの実質金利」
99/10/11(第134号)「もう一つの調整インフレ」
99/10/4(第133号)「日銀の独立性(その2)」
99/9/27(第132号)「日銀の独立性(その1)」
99/9/20(第131号)「社会的欲求と日本経済」
99/9/13(第130号)「欲求と日本経済成長の関係」
99/9/6(第129号)「日本経済と欲求の限界(その2)」
99/8/30(第128号)「日本経済と欲求の限界(その1)」
99/8/9(第127号)「エコノミストの格付け(その3)」
99/8/2(第126号)「エコノミストの格付け(その2)」
99/7/26(第125号)「エコノミストの格付け(その1)」
99/7/19(第124号)「規制緩和と通産省」
99/7/12(第123号)「供給サイドの経済学」
99/7/5(第122号)「インターネットと日本経済(その2)」
99/6/28(第121号)「インターネットと日本経済(その1)」
99/6/21(第120号)「銀行員とリスク(その2)」
99/6/14(第119号)「銀行員とリスク(その1)」
99/6/7(第118号)「銀行のバブル期の行動」
99/5/31(第117号)「日本の銀行とリスク」
99/5/24(第116号)「需給ギャップと景気回復」
99/5/17(第115号)「経済の構造改革」
99/5/10(第114号)「サマータイムと日本人」
99/5/3(第113号)「地価動向と景気回復」
99/4/26(第112号)「お金持ちとリスク」
99/4/19(第111号)「日本のお金持ち」
99/4/12(第110号)「寡占と所得の分配」
99/4/5(第109号)「寡占市場の話」
99/3/29(第108号)「完全競争市場の話」
99/3/22(第107号)「独占市場の話」
99/3/15(第106号)「本誌の経済予想とその間違い」
99/3/8(第105号)「景気の現状(99年春)」
99/3/1(第104号)「立派な社会と景気回復」
99/2/22(第103号)「現代の日本経済と投資」
99/2/15(第102号)「需給ギャップと投資」
99/2/8(第101号)「99年度の経済を見通す」
99/2/1(第100号)「公共投資の将来を考える」
99/1/25(第99号)「今後の景気対策を考える(その2)」
99/1/18(第98号)「景気の見通しを考える」
99/1/11(第97号)「今後の景気対策を考える(その1)」
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