平成9年2月10日より
経済コラムマガジン

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00/11/27(第187号)
面白い言葉二題
  • 一週間前の日経新聞
    森政権に対する不信任案騒動もあり、最近テレビを見る機会が多かった。今週号は、テレビ番組の中で聞いた、筆者が面白いと思った言葉を取上げることにする。まず「一週間前の日経新聞の論説」と言う表現である。自民党のベテラン議員が、加藤元幹事長の日頃の発言を評してこう言っていたのである。もちろん加藤氏の評論家的発言に対する痛烈な皮肉である。筆者が面白いと思ったのは、特にこの「一週間前」と言う部分である。


    話は変わるが、日経新聞の毎週月曜には景気指標のページがあり、ここに日経の編集委員が順番に論説風のコラムを載せている。井本省吾と言う編集委員は、ここに10月9日の「ミニバブルの小さな足音」のタイトルで、日本経済に今後バブルが発生する可能性を示唆する文章を載せている。

    井本氏は、その根拠として都心の一等地で、一億円を超えるマンションが即日完売の状況であることを揚げている。さらに百貨店で金のアクセサリーが突然売れ始めていることを取上げている。そして最後には「企業業績の回復をテコに株価が二万円に向かい、杉並、世田谷から郊外に住宅価格の上昇は波及する」と不動産関係者の話を引用している。

    たしかにリストラを迫られ、多くの企業が都心の一等地の土地を売却し、そこに高級マンションが建設され、それらのマンションの売行きが良いことはよく報道されている。そして都心の一部では地価の下落が緩慢となっている。しかしこれは都心での土地の放出と言った特殊な要因の産物である。筆者は住宅価格や地価がドンドン上がってバブル経済が再現する状況とはとても思わない。土地の公示価格や基準地価格の推移を見ても、そのような徴候はない。いずれにしてもそのうち、民間の9月時点の地価動向が調査結果が出ると思われるので、それを見ればはっきりするであろう。

    金のアクセサリーが売れているからバブルの徴候と言うのも無理がある。金色のファッション雑貨が売れていることは、日経流通新聞の記事で知っていた。しかし筆者は、これは流行の波が速いファッション界の一時的現象と理解している。
    筆者は、経済の事を取上げているのに、日経の多くの編集委員の書く文章は、客観性や科学性が著しく欠けていると昔から思っている。金製品の売上がそんなに増えているなら当然金の輸入量が増えているはずである。調べれば簡単に分かるはずである。少なくとも筆者は、金の輸入量が急増していると言う話は聞いたことがない。

    「株価が二万円に向かう」と言う話もひどい。一体何が根拠なのか。10月9日と言えば、連日株価が下落していた頃である。一番楽観的な株式関係者でも、年末の株価の予想は17,000円から18,000円であった。

    11月20日の景気指標のページのコラムのタイトルは「バランスシートのきしみ声」である。滝田洋一と言う編集委員が書いている。連日の株価の下落で東証一部上場の時価総額が三月末に比べ、76兆円も減少しており、企業や銀行のバランスシートを直撃していると述べている。そして銀行が、貸し渋りや貸し出し残高の圧縮に動いていることを取上げている。最後は、金融機能早期健全化法に基づく資本注入制度は来年三月末で期限切れとなっており、株式市場は、もう時間がないと告げていると指摘している。


    なんと一ヶ月ちょっとで日経新聞の論調が一変しているのである。日経の主張が極端に変わることは、これまで本誌が何度も指摘している。「住専問題」「財政再建」「減税による景気対策(あれだけ減税の方が公共事業より効果があると言っていたのに、今日減税には一言も触れない)」「ゼロ金利解除(最初は解除に反対だったのに、直前になると解除は当然と言いはじめた)」と数えるときりがない。今後は、「補正予算は不要」と「ペイオフ解禁の延期はけしからん」と言っていたことがどうなるか注目される。

    加藤元幹事長と取巻きの「政策新人類」の言っていることは、日経新聞の論調そのものである。そのせいか日経新聞の方も、世間の見方と異なり、今回の加藤氏たちの行動にも好意的な論調である。むしろ「これで経済と財政の構造改革が遅れる」と言った調子である。

    しかし実に日経は論調を簡単に変えるのである。わずか一週間の間に論調が変わる。こんなに頼り無くいい加減な日経と同じ主張を政治家が行っているから、彼等が自民党の主流派からばかにされるのである。ちなみに11月20日と言えば、加藤氏達がクーデターを起こそうとしていた当日である。既に日経は論調を変え始めているのである。

    日経の編集委員の書く文章には大きな特徴がある。文章が、ほとんど他人の意見や伝聞をつなげた(都合の良いところだけを取ってきている)構成になっていることである。まさに他人の意見を編集しているのである。もちろん読む方は、当然それを日経新聞の主張や論調として受取る。しかし日経の編集委員は、あくまでも自分自身が言っているとは考えていないらしい。したがって自分達の主張していたことがまずくなったら簡単に論調を変えることができる。変わらないないのは「小さな政府」と言う妄想だけである。


  • デヴィ夫人の法則
    テレビのワイドショーでデヴィ夫人の2冊目の著作を取上げていた。デヴィ夫人は以前、タレントや有名人に対する辛口のコメントで綴った本を出版しており、これがベストセラーになった。今回はその第二段である。内容は、前回とほとんど変わらず、対象となる人物が増えているらしい。筆者は本の中身に興味がないが、ワイドショーでこれを取上げたアナウンサーの解説が面白かった。そのアナウンサーは、デヴィ夫人がターゲットとして取上げる人物と取上げ方には、一定の法則があると言うのである。これが「デヴィ夫人の法則」である。

    夫人は著書の中で主にタレントを辛辣に批評している。ところが少数ではあるが、持上げている人物もいる。そのアナウンサーによれば、非難されるか褒められるかの基準あり、それがまさに「デヴィ夫人の法則」と言うことになる。彼によれば「デヴィ夫人の法則」は単純である。非難の対象になるのは「落ち目のタレント」であり、反対に褒められるのは「今勢いのある人」である。なるほどと納得させられる。

    しかしよく考えてみれば、「デヴィ夫人の法則」は、マスコミ、特に日本のマスコミの政治家の取上げ方にも共通して言えることである。「勢いのある政治家」と「落ち目の政治家」の取り扱い方が全く違うのである。

    森総理も失言騒動をきっかけに、連日マスコミに叩かれぱなしの状態が続いた。こんなことが何故問題になるかと言うことまで取上げられた。週刊誌の中吊り政党である民主党には、週刊誌のネタで攻められるしまつである。若い新聞記者からは「総理の資質」について質問されると言う屈辱的な体験もした。一旦落ち目になると、カサにかかって攻撃するのが日本のマスコミの特徴である。まさに「デヴィ夫人の法則」が日本のマスコミ界の体質そのものである。

    森政権は、小淵政権の政策を継承しているだけである。たしかに大きな得点はないが、大きな失政もない。そのような政権もマスコミへの対応が悪いと支持率が15%になってしまう。不支持率が75%の政権が問題と加藤氏は倒閣の理由にしているが、支持率なんてマスコミの対応で大きく変わるのである。

    加藤氏が幹事長であった橋本政権は、経済政策で大きな失敗をいくつも続けた。これらについては本誌がスタートした4年前から指摘続けてきたことであり、筆者ははっきり覚えている。興味のある方は本誌のバックナンバーを参照してもらいたい。この結果大型の金融機関の破綻も続き、経済もどん底に落ちた。失業と自殺者は急増し、今だに当時の後遺症で経済は低迷している。したがって橋本政権は退陣するだけでなく、政権を支えた主なメンバーは責任を取り、政治家を辞めるべきであった。もちろん加藤氏も政治家を辞めるべき人物の一人である。しかし彼等は責任を感じるのではなく、反対に次の小淵政権の政策の非難を続けていたのである。

    加藤氏は森総理がスポーツ観戦をしているのを見て、倒閣を決心したと言っているが、いかにもマスコミを意識した発言である。しかし加藤氏達の失政は、国民の犠牲を伴うものであった。客観的に考えると、スポーツ観戦くらいで、倒閣しなければならないとは、国民に実害を与えたこの政治家もどうかしている。

    マスコミは、加藤氏の騒動をきっかけに、非難の対象を森首相自体から自民党全体にシフトを始めている。「デヴィ夫人の法則」が痛手を負っている自民党の方に適用されるのである。このような状況が続けば、必要な大胆な経済政策を進めることは無理である。

    筆者は、改造後の内閣は極めて困難な経済・金融状況に直面すると予想している。これまでの政策の大転換(ペイオフの白紙撤回など)がはたして次の内閣で実行できるか疑問である。例の「問題の先送り」とマスコミの大合唱が起り、野党や党内の加藤グループの政策新人類が猛反発するはずである。しかしそれを実行しなければ自民党政権は行き詰まる可能性が強い。やはり筆者が主張していたように、一旦民主党、自由党そして加藤氏のグループに政権を委ねた方が賢明だったと思われる。



来週号は、財政再建がなによりも重要と主張する経済学者が行っているシュミレーションのいい加減さを取上げる。

国債利回りが一つのメドである1.7%をあっさり割込み、11月24日は1.651%と上昇ピッチを上げている。ちょっと無気味な感じである。米国のように株式市場からの資金流入で債券が買われるのとはちょっと違うようである。筆者は、やはり金融不安の再燃を市場が折り込み始めていると考える。筆者は来年2,3月の金融危機を予想していたが、市場はもっと早く動き出したとも考えられる。筆者の意見は、政府は「ペイオフ凍結ないしペイオフ白紙」「資本注入制度の存続」と言った方向への政策の転換である。月曜からの国債利回りの動向が注目される。


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00/11/20(第186号)「日本のエリート考」
00/11/13(第185号)「急がば回れ」
00/11/6(第184号)「「国債の日銀引受」への評価」
00/10/30(第183号)「財政問題の究極の解決法(その2)」
00/10/23(第182号)「財政問題の究極の解決法(その1)」
00/10/16(第181号)「巨額財政赤字騒動の不思議」
00/10/9(第180号)「財政赤字とマスコミの扇動」
00/10/2(第179号)「日本の需給ギャップ」
00/9/25(第178号)「経済成長率の話」
00/9/18(第177号)「日銀の独立性をめぐる誤解」
00/9/11(第176号)「日銀の独立性の怪しさ」
00/9/4(第175号)「ゼロ金利とマスコミの論調」
00/8/28(第174号)「今後の株価の動向」
00/7/31(第173号)「日本における「IT革命」」
00/7/24(第172号)「日銀から通貨庁へ(その2)」
00/7/17(第171号)「日銀から通貨庁へ(その1)」
00/7/10(第170号)「政府の経済への関わり」
00/7/3(第169号)「昨今の話題(その1)」
00/6/26(第168号)「効果ある失業対策」
00/6/19(第167号)「総選挙と「無党派層」」
00/6/12(第166号)「本当の「セーフティーネット」」
00/6/5(第165号)「日本の産業構造と失業」
00/5/29(第164号)「GDPと政策目標」
00/5/22(第163号)「グローバル化と市場の競争」
00/5/15(第162号)「経済のグローバル化とNGO」
00/5/8(第161号)「インターネットと株式市場」
00/4/24(第160号)「米国の株式市場の行方」
00/4/17(第159号)「Eコマースの将来性(その2)」
00/4/10(第158号)「Eコマースの将来性(その1)」
00/4/3(第157号)「「日銀による国債の引受」政策」
00/3/27(第156号)「インフレとデフレの功罪(その2)」
00/3/20(第155号)「インフレとデフレの功罪(その1)」
00/3/13(第154号)「国債の日銀引受に関わる諸問題」
00/3/6(第153号)「資金供給の増大とインフレ」
00/2/28(第152号)「澱んだ資金の経済への影響」
00/2/21(第151号)「もう一つの累積債務の解決方」
00/2/14(第150号)「政府の累積債務に関わる問題」
00/2/7(第149号)「ペイオフ延期騒動と日経新聞」
00/1/31(第148号)「「ペイオフ強行派」への反論」
00/1/24(第147号)「「ペイオフ解禁」の延期」
00/1/17(第146号)「有力エコノミストの対談」
00/1/10(第145号)「新年度の経済を見通す」
99/12/20(第144号)「為替の話あれこれ(その1)」
99/12/13(第143号)「中堅以下の企業のリストラ」
99/12/6(第142号)「大企業のリストラ」
99/11/29(第141号)「商工ローンと日本人」
99/11/22(第140号)「あやしい常識」
99/11/15(第139号)「金融のさらなる量的緩和」
99/11/8(第138号)「為替変動と日銀」
99/11/1(第137号)「ニセ札とインフレ」
99/10/25(第136号)「もう一つの実質金利の実体」
99/10/18(第135号)「もう一つの実質金利」
99/10/11(第134号)「もう一つの調整インフレ」
99/10/4(第133号)「日銀の独立性(その2)」
99/9/27(第132号)「日銀の独立性(その1)」
99/9/20(第131号)「社会的欲求と日本経済」
99/9/13(第130号)「欲求と日本経済成長の関係」
99/9/6(第129号)「日本経済と欲求の限界(その2)」
99/8/30(第128号)「日本経済と欲求の限界(その1)」
99/8/9(第127号)「エコノミストの格付け(その3)」
99/8/2(第126号)「エコノミストの格付け(その2)」
99/7/26(第125号)「エコノミストの格付け(その1)」
99/7/19(第124号)「規制緩和と通産省」
99/7/12(第123号)「供給サイドの経済学」
99/7/5(第122号)「インターネットと日本経済(その2)」
99/6/28(第121号)「インターネットと日本経済(その1)」
99/6/21(第120号)「銀行員とリスク(その2)」
99/6/14(第119号)「銀行員とリスク(その1)」
99/6/7(第118号)「銀行のバブル期の行動」
99/5/31(第117号)「日本の銀行とリスク」
99/5/24(第116号)「需給ギャップと景気回復」
99/5/17(第115号)「経済の構造改革」
99/5/10(第114号)「サマータイムと日本人」
99/5/3(第113号)「地価動向と景気回復」
99/4/26(第112号)「お金持ちとリスク」
99/4/19(第111号)「日本のお金持ち」
99/4/12(第110号)「寡占と所得の分配」
99/4/5(第109号)「寡占市場の話」
99/3/29(第108号)「完全競争市場の話」
99/3/22(第107号)「独占市場の話」
99/3/15(第106号)「本誌の経済予想とその間違い」
99/3/8(第105号)「景気の現状(99年春)」
99/3/1(第104号)「立派な社会と景気回復」
99/2/22(第103号)「現代の日本経済と投資」
99/2/15(第102号)「需給ギャップと投資」
99/2/8(第101号)「99年度の経済を見通す」
99/2/1(第100号)「公共投資の将来を考える」
99/1/25(第99号)「今後の景気対策を考える(その2)」
99/1/18(第98号)「景気の見通しを考える」
99/1/11(第97号)「今後の景気対策を考える(その1)」
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