平成9年2月10日より
経済コラムマガジン

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00/5/8(第161号)
インターネットと株式市場
  • 予言者の話
    今週号は、筆者が昔に読んだことのある経済小説の一節から始める。ところで残念ながら、筆者はその小説の題名と著者名を記憶していない。(連休中、それについて色々調べたが、結局分からなかった。ご存じの方がいたら是非教えてもらいたい。)
    ある証券会社のセールスマンの話である。彼は、顧客の前でこれから急騰する株を予言し、見事にそれを当てるのである。今風に言えば「株のカリスマ予言者」である。

    もちろんこれには「種」がある。彼は全国の株価情報を提供しているシステムの情報を事前に入手しているのである。具体的には証券会社が使っている「クイック」の情報である。「クイック」の端末は証券会社の店頭に置かれており、誰でもそれを操作して現在の株価や出来高をチェックすることができる。この予言者は、事前にこのクイックの情報を得ているのである。
    株を買おうとする者は、まず買おうとする株の株価や出来高をこの「クイック」端末を使って調べる。あるいは証券会社の係員が「クイック」を使って、顧客に情報を提供する。つまり「クイック」を使ってデータを調べられる件数が極端に増えた株は、その時点以降、取引が急激に増える可能性が強いのである。データを調べられる件数が増える場合には、「買い」と「売り」の双方があるが、常識的に「買い」のケースが圧倒的に多いと考えられる。

    この小説の予言者は、「クイック」による銘柄別の検索データを入手し、「来るぞ。来るぞ。」と言って、急騰する銘柄を見事に当てるのである。
    しかしこれはあくまでも、小説、つまりフィクションの世界の話である。「クイック」は日経新聞の子会社のシステムであり、このデータが部外に漏れることは考えられない。またこの小説の時代には、このようなデータを収集するシステムもなかったと考えられる。

    ところがインターネットの登場で状況は一変している。株価を検索できるサイトはいくらでもある。オンラインの証券会社のサイトがこれを提供しているのは当然としても、それ以外でもいくつものサイトで株価を検索することができる。中には1日のアクセス数が数十万に達するサイトもある。そしてサイトの主宰者がその気になってシステムを構築し、データを収集し、それを株式投資に利用すれば、かなり高い確率で利益を得ることができると考えられる。

    問題は、はたしてこのようなサイトのデータを使った株式売買が、インサイダー取引やデータの不正使用に該当するかと言うことである。筆者は、国によって当局の対応に違いがあるのではと思っている。米国では、インサイダー取引にはならないとしても、データの目的外無断使用と言うことで問題となるかもしれない。一方、日本では、ひょっとすると検討すらされていないのではと考えている。

    またサイトにデータを目的外に使用する可能性があることを明示すれば、この問題がクリヤできるかもしれない。いずれにしてもこのような行為はグレーゾーンにあると考えられる。冗談ではあるが、このような方法が全く合法的と言うのなら、筆者も出資者を募り、このようなサイトを構築し、株式投資に利用したいものである。

    話はちょっと変わる。00/4/17(第159号)「Eコマースの将来性(その2)」で述べたようにインターネットを使った通信販売などは、参入障壁が低く、利益を上げることは難しい。つまり誰でも思いつくような商売は儲からないのである。インターネットは、むしろここまで述べてきたような「合法」か「違法」かすれすれの商売に向いていると筆者は考えている。ちなみに米国の代表的なEコマース各社は、売上高は伸びているが、「イーベイ」を除き赤字額が拡大している。


  • ナスダックジャパンのスタート
    前段ではインターネットを使ったデータ収集の話をしたが、もちろんインターネットを使ったインサイダー取引も問題になる。最近、米国ではFTC(米連邦取引委員会)がインターネットのデータの不正使用と言うことでナスダックの登録企業をいくつか摘発している。そしてこれらの会社の株価は急落している。これ以外にもサーバに不正侵入し、M&A情報を盗み出し、これを使って株式投資で莫大な利益を得たグループも摘発されている。もちろんネットを使った犯罪は、インサイダー取引にとどまらない。

    インターネットに関係していなくとも、米国ではインサイダー取引や不正取引は深刻な問題である。大手監査法人「プライスウォーターハウス」の幹部2,698人のうち、過去2年に最低一回のSEC ルールの違反などを犯したと自己申告した者は、実に1,301人にものぼると今年の始めに報道された。さらに職員の無作為に選び出しによる、ルール違反の推定発生率は86.5%である。つまり大半のメンバーがルール違反の取引を行っていることになる。もちろん監査法人と言うことになれば、インサイダー取引が行われたことも十分考えられる。また他の監査法人でも同様のルール違反が行われていることは容易に連想される。

    しかし米国は、株取引のルールがはっきりしている国である。調査官も十分とは言えないまでも沢山いる。一方、日本は法整備が遅れているだけでなく、監査体制はとても貧弱である。これではインターネット時代の株式取引にとても対応できない。

    東証の理事長が民間人になるか、それとも大蔵省の官僚出身者がなるかをマスコミは問題にしていた。しかし筆者は、これはどうでも良い問題と考える。問題は東証理事長としてどのような働きをするかと言うことである。もちろん理事長だけで全ての問題が解決するはずがない。
    それにしても、ここ数年の間に東証一部に新規上場した企業や企業の従業員が問題を起こすケースが目立つ。そしてそのような企業の株価が異常に高かったのも特徴である。しかしこれらの企業の体質については、おそらく多くの人々が上場前から知っており、問題が生じることも皆が薄々感じていたはずである。そして筆者は、東証がこれまで通り、基準を満たしたからと言って上場を単純に認め、次々にそれらの企業が問題を起こすのなら、東証には役員自体がいらないと考える。


    日本では、上場している企業の子会社を上場することを何の抵抗もなく行われている。中には子会社の株価が上昇して、時価総額が大きくなり、これに対する親会社の持ち分が親会社自体の時価総額より大きくなると言う全く矛盾した現象も現れている。一方、米国では子会社の価値は親会社の株価に反映されているものとして、子会社の株式を公開しないのが一般的である。

    どうも日本では平気にこのようなことが行われているのは、株式を公開すること自体が異常なメリットを生むためと考えられる。この原因は色々考えられるが、日本の株式の公開市場の働きがいびつと言うことと、日本では慢性的な資金余剰があるためと筆者は考えている。
    日本では、株式の公開基準が段階的に低くなっており、今後も多数の株式の公開が予定されている。そして最近の株式公開は、どう見ても株式を公開することによる莫大な利益だけが目的としか考えられないケースが目立つと筆者は見ている。また子会社でなくとも、出資している会社の株式を公開することも同様の矛盾を含むと考えるべきである。

    重要なことは、株式を公開する企業の株主に莫大な利益があると言うことは、逆に公開後、それらの株を購入する者は、大きな損を被る危険性があると言うことである。たしかに公開後も株価が上昇を続けるのなら問題はない。しかし東証のマザーズに上場した企業の株価に見られるように、現実はそうなっていない。もちろん株式投資は自己責任で行われるものである。したがって株式投資には、ムードに流されない冷静な判断力がますます必要になってくる。

    ところで6月にナスダックジャパンがスタートする。ここにソフトバンクグループは、自らが出資している会社を何百社も公開(新規登録)することを計画している。ソフトバンクは上場会社である。つまり米国の株式市場では絶対に見られない行動を行おうとしているのである。しかし不思議なことにこれを問題にするマスコミは皆無である。また前段で述べたようなインターネット上のデータの取り扱いも、日本でははっきりしていない。このような状況で、ソフトバンクと言う民間企業が強く関与しているナスダックジャパンがスタートする。マスコミも東証理事長の人事と言ったつまらない事柄ばかりを問題にするのではなく、日本の株式市場が抱えるもっと本質的な問題を追求すべきである。



来週号では、最近活動が活発となってきているNGOと経済のグローバル化について述べることにする。


普通の電話を使うインターネット電話。市外一律3分20円、携帯電話へも割安。音質も良好。


00/4/24(第160号)「米国の株式市場の行方」
00/4/17(第159号)「Eコマースの将来性(その2)」
00/4/10(第158号)「Eコマースの将来性(その1)」
00/4/3(第157号)「「日銀による国債の引受」政策」
00/3/27(第156号)「インフレとデフレの功罪(その2)」
00/3/20(第155号)「インフレとデフレの功罪(その1)」
00/3/13(第154号)「国債の日銀引受に関わる諸問題」
00/3/6(第153号)「資金供給の増大とインフレ」
00/2/28(第152号)「澱んだ資金の経済への影響」
00/2/21(第151号)「もう一つの累積債務の解決方」
00/2/14(第150号)「政府の累積債務に関わる問題」
00/2/7(第149号)「ペイオフ延期騒動と日経新聞」
00/1/31(第148号)「「ペイオフ強行派」への反論」
00/1/24(第147号)「「ペイオフ解禁」の延期」
00/1/17(第146号)「有力エコノミストの対談」
00/1/10(第145号)「新年度の経済を見通す」
99/12/20(第144号)「為替の話あれこれ(その1)」
99/12/13(第143号)「中堅以下の企業のリストラ」
99/12/6(第142号)「大企業のリストラ」
99/11/29(第141号)「商工ローンと日本人」
99/11/22(第140号)「あやしい常識」
99/11/15(第139号)「金融のさらなる量的緩和」
99/11/8(第138号)「為替変動と日銀」
99/11/1(第137号)「ニセ札とインフレ」
99/10/25(第136号)「もう一つの実質金利の実体」
99/10/18(第135号)「もう一つの実質金利」
99/10/11(第134号)「もう一つの調整インフレ」
99/10/4(第133号)「日銀の独立性(その2)」
99/9/27(第132号)「日銀の独立性(その1)」
99/9/20(第131号)「社会的欲求と日本経済」
99/9/13(第130号)「欲求と日本経済成長の関係」
99/9/6(第129号)「日本経済と欲求の限界(その2)」
99/8/30(第128号)「日本経済と欲求の限界(その1)」
99/8/9(第127号)「エコノミストの格付け(その3)」
99/8/2(第126号)「エコノミストの格付け(その2)」
99/7/26(第125号)「エコノミストの格付け(その1)」
99/7/19(第124号)「規制緩和と通産省」
99/7/12(第123号)「供給サイドの経済学」
99/7/5(第122号)「インターネットと日本経済(その2)」
99/6/28(第121号)「インターネットと日本経済(その1)」
99/6/21(第120号)「銀行員とリスク(その2)」
99/6/14(第119号)「銀行員とリスク(その1)」
99/6/7(第118号)「銀行のバブル期の行動」
99/5/31(第117号)「日本の銀行とリスク」
99/5/24(第116号)「需給ギャップと景気回復」
99/5/17(第115号)「経済の構造改革」
99/5/10(第114号)「サマータイムと日本人」
99/5/3(第113号)「地価動向と景気回復」
99/4/26(第112号)「お金持ちとリスク」
99/4/19(第111号)「日本のお金持ち」
99/4/12(第110号)「寡占と所得の分配」
99/4/5(第109号)「寡占市場の話」
99/3/29(第108号)「完全競争市場の話」
99/3/22(第107号)「独占市場の話」
99/3/15(第106号)「本誌の経済予想とその間違い」
99/3/8(第105号)「景気の現状(99年春)」
99/3/1(第104号)「立派な社会と景気回復」
99/2/22(第103号)「現代の日本経済と投資」
99/2/15(第102号)「需給ギャップと投資」
99/2/8(第101号)「99年度の経済を見通す」
99/2/1(第100号)「公共投資の将来を考える」
99/1/25(第99号)「今後の景気対策を考える(その2)」
99/1/18(第98号)「景気の見通しを考える」
99/1/11(第97号)「今後の景気対策を考える(その1)」
98/12/28(第96号)「不況の原因と消費税減税を考える」
98/12/21(第95号)「米国経済の光と影を考えるーーその2」
98/12/14(第94号)「米国経済の光と影を考えるーーその1」
98/12/7(第93号)「自自連立政権を考える」
98/11/30(第92号)「公共投資と経済を考えるーーその2」
98/11/23(第91号)「緊急経済対策を考える」
98/11/16(第90号)「公共投資と経済を考えるーーその1」
98/11/9(第89号)「「空気」を考えるーーその2」
98/11/2(第88号)「「空気」を考えるーーその1」
98/10/26(第87号)「景気対策論議を考える」
98/10/19(第86号)「為替レートの今後のトレンドを考える」
98/10/12(第85号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその3」
98/10/5(第84号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその2」
98/9/28(第83号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその1」
98/9/21(第82号)「為替レートのトレンドを考える」
98/9/14(第81号)「バブルの清算と公金投入を考える」
98/9/7(第80号)「公金投入の整合性を考える」
98/8/31(第79号)「政治と経済の混乱を考える」
98/8/10(第78号)「今回の不況の原因を考える」
98/8/3(第77号)「新政権の人事を考える」
98/7/27(第76号)「小淵新自民党総裁誕生を考える」
98/7/20(第75号)「橋本総理退陣を考える」
98/7/13(第74号)「マスコミの驕りを考えるーーその2」
98/7/6(第73号)「マスコミの驕りを考えるーーその1」
98/6/29(第72号)「参院選と経済を考える」
98/6/22(第71号)「為替介入の背景を考える」
98/6/15(第70号)「橋本総理と円安を考える」
98/6/8(第69号)「日本の金融を考える」
98/6/1(第68号)「経済への関心を考える」
98/5/25(第67号)「世論と経済政策を考えるーーその2」
98/5/18(第66号)「世論と経済政策を考えるーーその1」
98/5/11(第65号)「アンケートと経済政策を考える」
98/5/4(第64号)「今回の景気対策を考える」
98/4/27(第63号)「消費の限界を考えるーーその2」
98/4/20(第62号)「消費の限界を考えるーーその1」
98/4/13(第61号)「恒久減税を考える」
98/4/6(第60号)「今回の自民党の景気対策を考える」
98/3/30(第59号)「米国の対日経済要求を考える」
98/3/23(第58号)「新日銀総裁の就任を考える」
98/3/16(第57号)「今回の不況の深刻さを考える」
98/3/9(第56号)「日米の景気対策を考える」
98/3/2(第55号)「日経新聞と経済を考えるーーその2」
98/2/23(第54号)「日経新聞と経済を考えるーーその1」
98/2/16(第53号)「貸し渋りと景気を考える」
98/2/9(第52号)「政治と経済を考える」
98/2/2(第51号)「官僚と経済を考える」
98/1/26(第50号)「「小さな政府」を考えるーーその3」
98/1/19(第49号)「「小さな政府」を考えるーーその2」
98/1/12(第48号)「「小さな政府」を考えるーーその1」
97/12/22(第47号)「需要不足の日本経済を考える」
97/12/15(第46号)「景気の現状と対策を考えるーーその8」
97/12/8(第45号)「景気の現状と対策を考えるーーその7」
97/12/1(第44号)「京都会議と経済を考える」
97/11/24(第43号)「景気の現状と対策を考えるーーその6」
97/11/17(第42号)「景気の現状と対策を考えるーーその5」
97/11/10(第41号)「景気の現状と対策を考えるーーその4」
97/11/3(第40号)「景気の現状と対策を考えるーーその3」
97/10/27(第39号)「景気の現状と対策を考えるーーその2」
97/10/20(第38号)「景気の現状と対策を考えるーーその1」
97/10/13(第37号)「市場の心理を考える」
97/10/6(第36号)「公共事業とマスコミを考える」
97/9/29(第35号)「リクルート事件と経済を考える」
97/9/22(第34号)「ロッキード事件と経済を考える」
97/9/15(第33号)「住宅と貯蓄を考える(その2)」
97/9/8(第32号)「住宅と貯蓄を考える(その1)」
97/9/1(第31号)「労働組合と経済を考える」
97/8/25(第30号)「競争時代の賃金を考える」
97/8/18(第29号)「米国経済の生産性の向上を考える」
97/8/11(第28号)「米国の景気を考える(その2)」
97/8/4(第27号)「米国の景気を考える(その1)」
97/7/28(第26号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その2)」
97/7/21(第25号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その1)」
97/7/14(第24号)「香港返還と中国経済を考える(その2)」
97/7/7(第23号)「香港返還と中国経済を考える(その1)」
97/6/30(第22号)「日本の米国債保有を考える」
97/6/23(第21号)「投機と市場を考える」
97/6/16(第20号)「規制緩和と日米関係を考える」
97/6/9(第19号)「ビックバンと為替を考える」
97/6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」
97/5/26(第17号)「内需拡大と公共工事を考える(その1)」
97/5/19(第16号)「金利と為替を考える」
97/5/12(第15号)「規制緩和と景気を考える」
97/5/5(第14号)「為替の変動を考える」
97/4/28(第13号)「日本の物価と金利を考える(その2)」
97/4/21(第12号)「日本の物価と金利を考える(その1)」
97/4/14(第11号)「日本の土地価格を考える」
97/4/7(第10号)「当マガジン経済予測のレビュー」
97/3/31(第9号)「日本の株式を考える」
97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レートの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レートの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レートを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」

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