- 森政権の誕生
今週号は予定を少し変更し、まず政局の話から始める。
小渕内閣が総辞職し、森政権が発足した。小渕内閣の経済政策は、概ね本誌も賛成できるものであった。それだけに小渕首相の退陣は残念である。一方、森政権の経済政策を現時点で占うことは難しい。ただ筆者の理解では、森氏は本来「積極財政論者」であり、小渕政権の政策決定の中心にいたことから、小渕政権の財政政策をほぼ継承するものと考えられる。ただし森首相のブレーンと思われる人々の中にはちょっと気にかかる人物が何人かいる。
金融不安の沈静化と景気動向の良化などにより、経済が多少持直したためか、財政支出による経済対策にはアゲンストの風が吹き始めている。このためか、小渕政権の終盤の経済対策は中途半端なものになってしまっていた。 失業者は今後も増えるはずである。はたして森政権が適切で大胆な政策を行えるかが注目される。
自由党はとうとう分裂してしまった。形の上では保守党が自由党から分離したように見えるが、実質的には、小沢一郎氏とその熱烈な信奉者が追い出されたかっこうになっている。次の選挙後に自由党はほとんど消滅してしまうと思われる。
このような状況は以前から予想されたことである。本誌98/12/7(第93号)「自自連立政権を考える」では、自由党の実権が小沢氏から野田幹事長(当時)を中心とした数名のメンバーに移っていることを述べた。1年4ケ月も前のことである。しかしそれ以降も、小沢氏は実権がないのに自由党の顔としてパフォーマンスを続けて来たのである。今回の分裂劇は、はしなくも実態が露呈したのである。
今回の分裂劇を「選挙目当ての分派行動」と解説する評論家が多いが、極めて皮相な見方である。もともと自由党は観念先行の政党である。経済政策では「小さな政府」が理想であった。しかし最近の日本経済は、金融機関への大規模な公的資金の投入や政府の信用保証、そして財政支出の増大で支えられているのが現状である。また自由党が強く主張していた「減税」がほとんど効果を生んでいない。このような現実を見て、自由党のメンバーは日本において、「小さな政府」が経済政策としていかに幻想であると言うことを思い知らされたのである。つまり「小さな政府」論の完璧な敗北である。
そして「小さな政府」論が幻想なら、なにも自民党から出て行く必要はなかったのである。日本では、経済学者やエコノミストはどれだけ間違ったことを言い続けても、失業はしない。しかし政治家は違う。選挙が待っているのである。 自由党が連立政権に参加して興味深かったのは、本来「小さな政府」論者であったはずの自由党のメンバーの方が積極財政を強く主張していたことである。むしろ加藤紘一氏のような自民党の政治家の方が「供給サイドの経済」と突然言い始め、財政支出の増大に反対していたのである。
今日、はっきりと「小さな政府」を主張しているのは、民主党と加藤紘一氏のような自民党の一部、そして自由党の残留組だけである。保守党は「小さな政府」の旗を降ろさないかもしれないが、実際の政治行動はもっと現実的なはずである。
- インターネットの利用状況
eコマースの話に進む前に日本でのインターネットの利用状況について述べたい。ネットの利用状況について、筆者は正確なデータを持っている訳ではない。したがってこれについては、色々な数値を元に予想する他はない。 もっともこの種の正確なデータを持っているものは誰もいないと考える。たしかにネットを使える環境にいる人数は、わりと正確に把握されていると思われる。しかしネットを使える環境にいる人間が、必ずしもネットを利用しているとは限らない。つまりネットの利用状況を正確に知ることは難しい。
感想で申し訳ないが、筆者には、iモードの利用者を除けば、最近の日本のインターネットの利用者数、あるいは閲覧者数の伸びはかなり鈍化していると思われる。マイナスとは言わないが、横這いと言う状況も有りうると感じている。とにかく筆者は、現実と世間で言われているバラ色の「ネット革命」とか「ネット新時代」と言うものとのギャップを感じている。
インターネットの登場以来、使える環境にいる人数は間違いなく増え続けている。現在も確実に増え続けている。 一方、利用者の増加数については過去2回のブームがあった。96年と98年後半から99年にかけてである。前者はウィンドウズ95、後者はウィンドウズ98の発売後である。これらのブームの期間中にネットの利用者は大幅に増加した。しかし使える環境にいる人数が増えているにもかかわらず、96年のブームの後は利用者の数は伸び悩んだ。一部には、一時的に減ったと言う情報もあった。
96年のブームの時には、インターネットで情報を発信したい者には「技術」がなく、一方ホームページを作る技術を持つ者には「発信する物」がなかった。したがって当時のホームページの内容は非常につまらなく、一時的にインターネットは飽きられたのである。しかしそれ以降、ホームページの質は急速に向上し、98年後半からのブームで再び大幅に利用者の数は伸び、今日に到っている。
今後、当分はインターネットの利用者数の伸びは鈍化すると思われる。次に利用者数が増えとすれば、それは第3次ブームと言うことになる。何がきっかけで次のブームが来るかはっきりとは言えないが、これまでと同様に新しいOSの登場に伴ってブームが起る可能性はある。この他に考えられるのは、コンテンツの飛躍的な向上や画期的なコンテンツの登場であるが、これらについては現時点ではちょっと予測することが困難である。しかし第3次ブームが起るとしても、これまでのような利用者数の急速な伸びは期待できないと筆者は考える。ポテンシャルのある者は既に、過去の2回のブームでインターネットの利用を始めていると考えられるからである。 もっとも携帯端末によるネットの利用者数は当分伸びると思われる。ただし携帯端末によるインターネットの利用とeコマースの関係がよく分からない。しかし筆者は、この分野のマーケットは当分それほど大きいものになるとは考えていない。
いずれにしてもeコマースの将来性を予測するには、インターネットを使える環境にいる人数ではなく、実際の利用者数の伸びを問題にすべきである。今日、さかんにeコマースの将来性をバラ色に語る識者が多い。しかしネットの利用者数の伸びを考慮すれば、日本におけるeコマースの経済的規模は、言われているほど大きなものにはならないと筆者は考える。
ある経済学者がテレビに登場し、「日本は通信費が高く、インターネットの利用が進まない」と言っている。しかし筆者はこれは事実と違うと考えている。またこの学者は、日本のインターネットの利用料は米国の5倍と言っているが、これも違うと思われる。よほど特殊なケースを比較した場合を除けば、5倍もの差があるはずがない。日本において、米国ほどインターネットの利用が進まないのは、以前から本誌で述べているように、日本での社会生活には、米国ほどインターネットが必要ないからである。
日本は通信費が高いと言われている。またNTTの接続料が国際的な問題になっている。たしかに日本は通信費は安くはない。しかしこれには為替レートが関係してくる。もし対ドルの円レートが150円くらいなら、日本の通信費や接続料はそれほど高いものにはならない。つまり円高が進むほどNTTの接続料の高さが目立つのである。
ソニーやトヨタ、そして本田が努力して輸出を増やせば、いずれ円高が進むことにる。以前から本誌で主張しているように、NTTのような純粋な国内向け企業も、競争は国内の企業だけに止まらず、円レートの変動を通じ、これらの有力企業と競争していることになる。NTTがどれだけ合理化を進めても、ソニーやトヨタ、そして本田がそれ以上の努力をすれば、一段と円高が進み、国際的にNTTの通信費は相対的に高くなる。つまり「接続料の引下げ」問題で、実質的にNTTは、これらの有力企業と競争すると言う極めて厳しい立場に置かれているのである。
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