平成9年2月10日より
経済コラムマガジン

普通の電話を使用。市外一律3分20円。国際電話や携帯電話へも割安通話。インターネットの音声帯使用により音質良好。



00/3/20(第155号)
インフレとデフレの功罪(その1)
  • インフレへの誤解
    本誌の「国債の日銀引受による経済対策資金の確保」と言う政策には、先週号で述べたように、インフレ(物価上昇)、金利や為替の変動そして財政規律の問題が伴う。ところでこのうち金利や為替の変動も、これもインフレに関係している。つまり本誌の提案した政策にまつわる問題は、インフレと財政規律にほぼ集約されると考えている。

    まずインフレを取上げる。筆者が不思議に思うのは、世間では単純にインフレ(物価上昇)が悪いことと決めつけていることである。実際、日銀などの世界の中央銀行の第一の政策目標は、インフレの防止である。世間の誰に聞いてもインフレは「悪」と答えるはずである。ところが筆者は、必ずしもインフレを悪とは考えない。今日、これは少数派の意見であろう。

    話を進める前に、まずインフレと言う現象をもっと具体的に考えてみる。インフレは通貨が大量に発行がなされ時、財やサービスの供給が不足して起る。たしかに単純に、インフレによって物価が上昇するだけなら、誰もが反対するはずである。
    もっとも筆者は、現在の日本経済は、今日失業と大量の過剰設備を持っており、またかつ日本経済の体質が物価上昇しにくい体質に変わっていると考えている。00/3/6(第153号)「資金供給の増大とインフレ」で述べたように、たとえ通貨の大量発行がなされても、簡単には物価上昇は起らないと考えている。

    インフレは、収入が一定に決まっているか、あるいは既に過去に金融資産を形成した者にとっては不利である。具体的には年金生活者や金利生活者に不利である。また公務員もどちらかと言えば不利である。
    しかしインフレによって単純に物価だけが上昇すると言うことはない。物価上昇は、通常、インフレによって経済活動が活発化した結果である。つまりインフレはこれから事業を拡大しようとする者や職を得ようとする人々には有利である。失業者にとっては二つに分かれる。インフレはこれから働く気のある者にとっては有利であり、働く気のないものにとっては不利である。

    インフレは単に物価が上昇するだけではない。インフレ時には、生産サイドにいる者にとっては、販売価格が上昇するのであるから、収入も増えるのである。またこの場合、販売数量も増加するケースも多いはずである。つまり働く者にとっては、物価の上昇率よりも収入の増加率が大きければ良いはずである。冷静に考えると、インフレはこのような人々にとって有利に働く。もちろん過去に借入金で設備投資や住宅購入を行った人々にとっても良いことである。
    このようにインフレを単体でその功罪を問うこと自体が大間違いである。インフレと「失業の減少」・「給料のアップ」と言う組合せか、デフレと「失業の増大」・「年金生活者や金利生活者の生活の安定」と言う組合せで問いかけをすべきである。

    しかし現象面から見た場合には、インフレは不利な立場にある。物価は全ての人々に影響するからである。たとえインフレで経済活動が活発になり、失業が減っても、自分が失業の当事者でないのなら、こんなことは関係ないと考え、物価上昇についてのみ文句を言うのである。したがってデフレで物価が下落する方が良いと考える人々も多いはずである。自分が失業する恐れがないのなら、デフレの方が有利である。デフレで企業倒産や失業が増えても、多くの人々にとっては他人ごとである。むしろ「他人の不幸は我が喜び」と言う意地悪い側面を人間は持っている。他人の不幸を見て、自分の幸運を確認するのである。テレビのワイドショーも他人の不幸な出来事を伝える方が視聴率が高いのである。


  • 日本におけるデフレの問題
    反対にデフレ経済には大きな問題がある。最大の問題は雇用問題である。筆者は、今後日本では、雇用が一番の深刻な問題になると考える。しかし依然失業者の割合は小さく、当事者でない一般の人々にとってはそれほど関心がないと思われる。そしてこのことが問題である。雇用問題は、単に経済の問題に収まらず、日本の社会を少しずつ蝕んで行く。気が付いた頃には手遅になっているのである。既にこの徴候は始まっているが、世間の関心が集まらないだけである。
    失業で特に問題となるのは、中高年と新卒者である。中高年の失業問題も深刻であるが、これは別の機会に取上げることにする。今回取上げるのは新卒者の就職難である。

    新卒者の就職の内定率が異常に低い。特に地方の高卒者の数値が低い。昨年12月時点の内定率は全国で50%台であるが、沖縄にいたっては30%台である。もちろんこの数値も卒業時には大きくなる。しかし傾向としてこの数値が年々低くなっていることである。注目されるのは、99年度はかなり大きな景気対策を行っても、内定率が前年よりかなり悪くなっていることである。年間0.6%くらいの経済成長では、とてもこの流れを止められないことを意味している。もちろんこのような状況では、内定したと言っても本人が納得した就職先でない場合が多い。したがって離職率も大きい。就職にあぶれた者の多くはフリータなどの不安定な職に就くか、あるいは失業状態のままである。

    問題は、フリータなどの職に就いている者の数が非常に増えていることである。筆者の感想では5年前くらいから急増している。現在でも相当の数になっている。そして今後、この数がどんどん増えていくことは必至である。採用側の企業の言い分は「新卒者を採用して、教育を施すほどの余裕がない」とか、「中高年をリストラするより新卒者の採用を絞る方が抵抗が小さい」と言うことである。このような論理がまかり通っているのである。

    不安定な職業に就いている者は、当座は良いが、このような職業では給料のアップはない。つまりこのような人々が増えていくと言うことは、将来高額商品が売れなくなることを意味する。もちろん原因はこれだけではないが、既に日本では新車が売れなくなっている。10年前600万台(軽自動車を除く)売れていたものが、最近では400万台まで落ちている。したがって自動車メーカはどんどん、国内の生産ラインを廃棄している。またフリータの収入ではとても「住宅」を購入できるはずがない。つまりこのままでは、将来日本の経済は縮小均衡に入らざるを得なくなるのである。

    エコノミストによっては、少子化によって若年層の雇用問題は5年後には解決すると言っている。筆者も、以前はそれに近い考えであった。しかし最近の新卒者の就職の様子を見ていると考えを大きく軌道修正する必要があると思われる。また少子化による解決には10年から15年かかると考える。つまり団塊の世代が一線から引退するまで、今日の傾向が続くのである。したがってこの傾向が5年前に始まり、今後15年続くとしたなら、これに該当する世代のかなり大きな割合の人々は、企業の正社員として働いた経験持たないことになる。

    全ての企業と言わないが、通常企業は新卒者を教育し、技術を与える。したがって企業に就職した者は、単に大きい収入を得るだけでなく、色々な知識と経験を得るのである。職を移る場合も、これが武器になる。さらに企業で働くことにより、広い人脈を持つこともできる。一方、フリータなどの不安定な職は単純労働が多く、得られる知識にも限界があるため、よほど本人が努力しないことには、次に条件の良い職に就くことは難しい。つまりデフレ経済が続く限り、今後の日本では、間を埋めることができない社会の階層の分化が顕著になる可能性が強いのである。



来週号では、引続きインフレとデフレの功罪について述べる。インフレよりデフレの方がずっと問題が大きいことを理解してもらいたいのである。


普通の電話を使うインターネット電話。市外一律3分20円、携帯電話へも割安。音質も良好。


00/3/13(第154号)「国債の日銀引受に関わる諸問題」
00/3/6(第153号)「資金供給の増大とインフレ」
00/2/28(第152号)「澱んだ資金の経済への影響」
00/2/21(第151号)「もう一つの累積債務の解決方」
00/2/14(第150号)「政府の累積債務に関わる問題」
00/2/7(第149号)「ペイオフ延期騒動と日経新聞」
00/1/31(第148号)「「ペイオフ強行派」への反論」
00/1/24(第147号)「「ペイオフ解禁」の延期」
00/1/17(第146号)「有力エコノミストの対談」
00/1/10(第145号)「新年度の経済を見通す」
99/12/20(第144号)「為替の話あれこれ(その1)」
99/12/13(第143号)「中堅以下の企業のリストラ」
99/12/6(第142号)「大企業のリストラ」
99/11/29(第141号)「商工ローンと日本人」
99/11/22(第140号)「あやしい常識」
99/11/15(第139号)「金融のさらなる量的緩和」
99/11/8(第138号)「為替変動と日銀」
99/11/1(第137号)「ニセ札とインフレ」
99/10/25(第136号)「もう一つの実質金利の実体」
99/10/18(第135号)「もう一つの実質金利」
99/10/11(第134号)「もう一つの調整インフレ」
99/10/4(第133号)「日銀の独立性(その2)」
99/9/27(第132号)「日銀の独立性(その1)」
99/9/20(第131号)「社会的欲求と日本経済」
99/9/13(第130号)「欲求と日本経済成長の関係」
99/9/6(第129号)「日本経済と欲求の限界(その2)」
99/8/30(第128号)「日本経済と欲求の限界(その1)」
99/8/9(第127号)「エコノミストの格付け(その3)」
99/8/2(第126号)「エコノミストの格付け(その2)」
99/7/26(第125号)「エコノミストの格付け(その1)」
99/7/19(第124号)「規制緩和と通産省」
99/7/12(第123号)「供給サイドの経済学」
99/7/5(第122号)「インターネットと日本経済(その2)」
99/6/28(第121号)「インターネットと日本経済(その1)」
99/6/21(第120号)「銀行員とリスク(その2)」
99/6/14(第119号)「銀行員とリスク(その1)」
99/6/7(第118号)「銀行のバブル期の行動」
99/5/31(第117号)「日本の銀行とリスク」
99/5/24(第116号)「需給ギャップと景気回復」
99/5/17(第115号)「経済の構造改革」
99/5/10(第114号)「サマータイムと日本人」
99/5/3(第113号)「地価動向と景気回復」
99/4/26(第112号)「お金持ちとリスク」
99/4/19(第111号)「日本のお金持ち」
99/4/12(第110号)「寡占と所得の分配」
99/4/5(第109号)「寡占市場の話」
99/3/29(第108号)「完全競争市場の話」
99/3/22(第107号)「独占市場の話」
99/3/15(第106号)「本誌の経済予想とその間違い」
99/3/8(第105号)「景気の現状(99年春)」
99/3/1(第104号)「立派な社会と景気回復」
99/2/22(第103号)「現代の日本経済と投資」
99/2/15(第102号)「需給ギャップと投資」
99/2/8(第101号)「99年度の経済を見通す」
99/2/1(第100号)「公共投資の将来を考える」
99/1/25(第99号)「今後の景気対策を考える(その2)」
99/1/18(第98号)「景気の見通しを考える」
99/1/11(第97号)「今後の景気対策を考える(その1)」
98/12/28(第96号)「不況の原因と消費税減税を考える」
98/12/21(第95号)「米国経済の光と影を考えるーーその2」
98/12/14(第94号)「米国経済の光と影を考えるーーその1」
98/12/7(第93号)「自自連立政権を考える」
98/11/30(第92号)「公共投資と経済を考えるーーその2」
98/11/23(第91号)「緊急経済対策を考える」
98/11/16(第90号)「公共投資と経済を考えるーーその1」
98/11/9(第89号)「「空気」を考えるーーその2」
98/11/2(第88号)「「空気」を考えるーーその1」
98/10/26(第87号)「景気対策論議を考える」
98/10/19(第86号)「為替レートの今後のトレンドを考える」
98/10/12(第85号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその3」
98/10/5(第84号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその2」
98/9/28(第83号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその1」
98/9/21(第82号)「為替レートのトレンドを考える」
98/9/14(第81号)「バブルの清算と公金投入を考える」
98/9/7(第80号)「公金投入の整合性を考える」
98/8/31(第79号)「政治と経済の混乱を考える」
98/8/10(第78号)「今回の不況の原因を考える」
98/8/3(第77号)「新政権の人事を考える」
98/7/27(第76号)「小淵新自民党総裁誕生を考える」
98/7/20(第75号)「橋本総理退陣を考える」
98/7/13(第74号)「マスコミの驕りを考えるーーその2」
98/7/6(第73号)「マスコミの驕りを考えるーーその1」
98/6/29(第72号)「参院選と経済を考える」
98/6/22(第71号)「為替介入の背景を考える」
98/6/15(第70号)「橋本総理と円安を考える」
98/6/8(第69号)「日本の金融を考える」
98/6/1(第68号)「経済への関心を考える」
98/5/25(第67号)「世論と経済政策を考えるーーその2」
98/5/18(第66号)「世論と経済政策を考えるーーその1」
98/5/11(第65号)「アンケートと経済政策を考える」
98/5/4(第64号)「今回の景気対策を考える」
98/4/27(第63号)「消費の限界を考えるーーその2」
98/4/20(第62号)「消費の限界を考えるーーその1」
98/4/13(第61号)「恒久減税を考える」
98/4/6(第60号)「今回の自民党の景気対策を考える」
98/3/30(第59号)「米国の対日経済要求を考える」
98/3/23(第58号)「新日銀総裁の就任を考える」
98/3/16(第57号)「今回の不況の深刻さを考える」
98/3/9(第56号)「日米の景気対策を考える」
98/3/2(第55号)「日経新聞と経済を考えるーーその2」
98/2/23(第54号)「日経新聞と経済を考えるーーその1」
98/2/16(第53号)「貸し渋りと景気を考える」
98/2/9(第52号)「政治と経済を考える」
98/2/2(第51号)「官僚と経済を考える」
98/1/26(第50号)「「小さな政府」を考えるーーその3」
98/1/19(第49号)「「小さな政府」を考えるーーその2」
98/1/12(第48号)「「小さな政府」を考えるーーその1」
97/12/22(第47号)「需要不足の日本経済を考える」
97/12/15(第46号)「景気の現状と対策を考えるーーその8」
97/12/8(第45号)「景気の現状と対策を考えるーーその7」
97/12/1(第44号)「京都会議と経済を考える」
97/11/24(第43号)「景気の現状と対策を考えるーーその6」
97/11/17(第42号)「景気の現状と対策を考えるーーその5」
97/11/10(第41号)「景気の現状と対策を考えるーーその4」
97/11/3(第40号)「景気の現状と対策を考えるーーその3」
97/10/27(第39号)「景気の現状と対策を考えるーーその2」
97/10/20(第38号)「景気の現状と対策を考えるーーその1」
97/10/13(第37号)「市場の心理を考える」
97/10/6(第36号)「公共事業とマスコミを考える」
97/9/29(第35号)「リクルート事件と経済を考える」
97/9/22(第34号)「ロッキード事件と経済を考える」
97/9/15(第33号)「住宅と貯蓄を考える(その2)」
97/9/8(第32号)「住宅と貯蓄を考える(その1)」
97/9/1(第31号)「労働組合と経済を考える」
97/8/25(第30号)「競争時代の賃金を考える」
97/8/18(第29号)「米国経済の生産性の向上を考える」
97/8/11(第28号)「米国の景気を考える(その2)」
97/8/4(第27号)「米国の景気を考える(その1)」
97/7/28(第26号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その2)」
97/7/21(第25号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その1)」
97/7/14(第24号)「香港返還と中国経済を考える(その2)」
97/7/7(第23号)「香港返還と中国経済を考える(その1)」
97/6/30(第22号)「日本の米国債保有を考える」
97/6/23(第21号)「投機と市場を考える」
97/6/16(第20号)「規制緩和と日米関係を考える」
97/6/9(第19号)「ビックバンと為替を考える」
97/6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」
97/5/26(第17号)「内需拡大と公共工事を考える(その1)」
97/5/19(第16号)「金利と為替を考える」
97/5/12(第15号)「規制緩和と景気を考える」
97/5/5(第14号)「為替の変動を考える」
97/4/28(第13号)「日本の物価と金利を考える(その2)」
97/4/21(第12号)「日本の物価と金利を考える(その1)」
97/4/14(第11号)「日本の土地価格を考える」
97/4/7(第10号)「当マガジン経済予測のレビュー」
97/3/31(第9号)「日本の株式を考える」
97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レートの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レートの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レートを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」

日常的に起こる経済問題をトーク形式で解説
日頃忙しいビジネスマンへのオンラインマガジン