平成9年2月10日より
経済コラムマガジン

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00/3/13(第154号)
国債の日銀引受に関わる諸問題
  • 為替と金利の動向
    本誌の「国債の日銀引受による、財源確保」と言う政策に、読者の方から意見が寄せられている。一番は予想通り先週号で取上げた物価上昇(インフレ)に対する懸念である。この他にも色々意見があった。しかし筆者の感想では、多少的外れのものが多かったと思われる。

    本誌のこのシリーズの主旨は、「今日の不況に対する対策は、財政政策を中心に行うべきだ。しかし各方面から、財政赤字は限界まで来ていると言う意見が強くなっいる。そのため十分な景気対策がなされておらず、却ってこれが問題である。」こと、そして「日本財政赤字は決して限界にきてはおらず、思いきった対策行うべきである。そこでもし財源が問題になるのなら『国債の日銀引受による、財源確保』と言う手段ある。」と言うことである。たしかに「国債の日銀引受」についてはインフレの問題がつきまとう。しかし日本経済の場合には、物価の動向を見ながら政策を進めれば、激しいインフレと言う事態を起こさずに、目的は達成できるのではないかと言うのが先週号までの論旨である。

    そこで読者の方からは指摘がなかったが、「国債の日銀引受」に伴うその他の問題点を筆者なりにピックアップし、この問題をより深く検討してみることにする。第一に「為替と金利の動向」である。

    正直言って、為替の動きは読みにくい。理屈の上では日銀の国債引受の時点では為替への影響はないはずである。しかし市場は、その先を読み、円安になる可能性が強い。実際、政府は日銀の国債引受で手に入れた資金で、市中の既発の国債を買入れたり、あるいは景気対策として財政支出を行う。いずれにしても市中に資金が放出されることになる。これによって金利は低下し、流通する「円」が豊富になる。これは「円安」の要因となる。

    しかし話はそんなに単純ではない。日本政府がこの対策を始めると、日本の景気は上向くと世界の投資家は考え、日本への投資を増やす動きが出てくると思われる。つまり株や国債を求めた資金が日本に流入するのである。特に国債は、原則として新規の発行がなくなるため、価格は高騰し、利回りが低下することがはっきりしているから、投資対象としては絶好である。この海外からの資金流入は「円高」の要因となる。

    つまり為替の動きは、これらの「円安」と「円高」の要因の綱引きで決まることになる。筆者は、トータルではやはり円安になると考えるが、断定的には言えない。仮に円安になるとしても、どの水準まで円安が進むか簡単には予想できない。問題は、円安が3年前のアジアの経済に打撃を与えたように、各国の経済に影響を及す段階まで進むことである。円安の進行の度合によっては、政府はこの政策を中断することにもなる。

    また金利の低下が異常に進み、資産価格が異常に上昇する気配が出てくることもあり得る。もっともこれについては、地価などが下落を続けている現状では、簡単に起ることではなく、多少の資産価格の上昇はむしろ景気にプラスと考える。問題は、バブル期のような現象が起ることである。つまり同様の現象が起るようなら、政府はこの政策を中断することにもなる。

    筆者は、政府が「物価上昇(インフレ)」、「為替」、「金利」を動向をにらみながら、政府は日銀の国債引受で手に入れた資金を使う必要があると考える。先程、新規の国債の発行は必要がなくなると言った。しかし市中に資金がダブつき、問題を起こす可能性がある場合には、逆にある程度国債を発行して、資金を回収する場面もあり得るのである。

    筆者のアイディアは日銀の国債引受で政府は600兆円の財源を確保し、これを景気対策と国債の償還に使うことである。しかし物価上昇や為替の動向によっては、600兆円の全ては使うことができない事態があると言うことである。要は、政府や世論がどこまでの物価上昇率まで容認し、各国がどこまでの円安を容認するかに、この政策の限度はかかっていると言える。筆者は、日本経済の現状を見れば、かなりの所までこの政策は行えると考えている。また、この政策を遂行している途中で、経済の自律的な回復が見られる場合には、政策規模を縮小したり、中断することも考えられる。つまりこの政策を進めるに当っては、政府には柔軟な運営が望まれるのである。


  • その他の問題
    次も筆者の唱える「日銀の国債引受」に伴う、この他の問題を取上げる。一つは日銀との関係である。日銀は、物価や金利の動向を見ながら金融政策を行っている。しかし政府が日銀の国債引受で手に入れた資金を勝手に使えば、日銀の政策が邪魔されることが考えられる。ちょうど日本に中央銀行が二つ存在するようなものである。筆者も、このような問題を重視する人々が多いことは理解している。

    筆者の考える解決方法は、金融政策を政府と日銀が一体となって行うことである。世間では「日銀の独立性」が大事と言う意見が強いが、筆者は元々、政府の政策と整合性のない日銀の政策はあり得ないと言う考えである。つまり「日銀の独立性」なんてあり得ないことである。自民党でも「改正日銀法」の再改正について最近動きだした。目的は「目標インフレ率の導入」と、そしてこの「日銀の独立性の見直し」である。当然の動きである。

    もう一つの問題は「財政規律」の問題である。政府は日銀の国債引受で、制約の受けない大金を手にすることになる。当然、金の使い方に規律ななくなることが考えられる。実際、第二次大戦の前には各国とも国債を大量に発行し、その資金で軍備の拡張に走ったのである。もっともこれによって世界大不況から各国の経済が立直ったのも事実であるが。たしかに「財政規律」は難しい問題である。これについては来週号でも触れることにする。


    読者から色々な意見を頂いた。その中で「マンデルフレミング理論では、財政政策は非効率的と言う指摘があるがどう思われるか」と言う質問があった。マンデルは昨年のノーベル経済学賞を受けた経済学者である。しかし残念ながら筆者は、この学者の理論についてはほとんど何も知らない。ただ記憶に間違いがないなら、彼が固定相場論者と言うことくらいの知識である。たぶん彼の主張は、景気対策として、固定相場では、金融政策より財政政策の方が有効であり、変動相場の場合には逆に財政政策より金融政策が有効と言うことであろう。

    しかしマンデルフレミング理論もあくまでも一つの仮説に過ぎない。またいついかなる国の経済にも有効と言うことではなかろう。また理論があまりにも大雑把過ぎるのである。彼はカナダの経済学者である。たしかにカナダのような米国と国境を接し、米国との依存関係が強い国では、財政政策を行っても、その効果が米国に流れて行ってしまう可能性は十分にある。

    マンデルの理論がそのまま日本にもあてはまるかと言うとこれは難しい。たしかに日本は変動相場制であるが、現在行われているゼロ金利政策と言う金融政策だけで景気が回復させることはとても無理である。もっともマンデルも、今日のような日本経済の現状を前提に理論を組み立てたわけではないはずである。



来週号ではインフレの功罪について述べたい。

政府は、10日の閣議で「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法案」を決定した。喜ばしいことである。地表から40m以上深い所には地権者の権利が及ばなくするのである。この大深度地下を利用した地下鉄の建設は本誌の一貫した主張である。青函トンネルやユーロトンネルの建設で、この種の技術は日本には十分ある。世界的にも、北朝鮮では地下100mに地下鉄が走っていると言う話である。また中目黒の事故を見ても、公道の地下に無理をして造った地下鉄は、カーブが多く、危険が大きくスピードを出すことができない。
惜しむらくは、このような考えが15年前に認められておれば良かったのである。大深度地下鉄によって宅地の開発がもっと郊外に広範囲に広がっておれば、バブル期の経済も単なるマネーゲームだけに終わるようなこともなかったと思われるのである。全ての公共投資を無駄と言う考えが広く浸透しており、このような有益なアイディアもこれまで埋没してきたのである。
筆者は、まず東京経由の成田と羽田を結ぶ高速地下鉄の建設を提案したい。


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00/3/6(第153号)「資金供給の増大とインフレ」
00/2/28(第152号)「澱んだ資金の経済への影響」
00/2/21(第151号)「もう一つの累積債務の解決方」
00/2/14(第150号)「政府の累積債務に関わる問題」
00/2/7(第149号)「ペイオフ延期騒動と日経新聞」
00/1/31(第148号)「「ペイオフ強行派」への反論」
00/1/24(第147号)「「ペイオフ解禁」の延期」
00/1/17(第146号)「有力エコノミストの対談」
00/1/10(第145号)「新年度の経済を見通す」
99/12/20(第144号)「為替の話あれこれ(その1)」
99/12/13(第143号)「中堅以下の企業のリストラ」
99/12/6(第142号)「大企業のリストラ」
99/11/29(第141号)「商工ローンと日本人」
99/11/22(第140号)「あやしい常識」
99/11/15(第139号)「金融のさらなる量的緩和」
99/11/8(第138号)「為替変動と日銀」
99/11/1(第137号)「ニセ札とインフレ」
99/10/25(第136号)「もう一つの実質金利の実体」
99/10/18(第135号)「もう一つの実質金利」
99/10/11(第134号)「もう一つの調整インフレ」
99/10/4(第133号)「日銀の独立性(その2)」
99/9/27(第132号)「日銀の独立性(その1)」
99/9/20(第131号)「社会的欲求と日本経済」
99/9/13(第130号)「欲求と日本経済成長の関係」
99/9/6(第129号)「日本経済と欲求の限界(その2)」
99/8/30(第128号)「日本経済と欲求の限界(その1)」
99/8/9(第127号)「エコノミストの格付け(その3)」
99/8/2(第126号)「エコノミストの格付け(その2)」
99/7/26(第125号)「エコノミストの格付け(その1)」
99/7/19(第124号)「規制緩和と通産省」
99/7/12(第123号)「供給サイドの経済学」
99/7/5(第122号)「インターネットと日本経済(その2)」
99/6/28(第121号)「インターネットと日本経済(その1)」
99/6/21(第120号)「銀行員とリスク(その2)」
99/6/14(第119号)「銀行員とリスク(その1)」
99/6/7(第118号)「銀行のバブル期の行動」
99/5/31(第117号)「日本の銀行とリスク」
99/5/24(第116号)「需給ギャップと景気回復」
99/5/17(第115号)「経済の構造改革」
99/5/10(第114号)「サマータイムと日本人」
99/5/3(第113号)「地価動向と景気回復」
99/4/26(第112号)「お金持ちとリスク」
99/4/19(第111号)「日本のお金持ち」
99/4/12(第110号)「寡占と所得の分配」
99/4/5(第109号)「寡占市場の話」
99/3/29(第108号)「完全競争市場の話」
99/3/22(第107号)「独占市場の話」
99/3/15(第106号)「本誌の経済予想とその間違い」
99/3/8(第105号)「景気の現状(99年春)」
99/3/1(第104号)「立派な社会と景気回復」
99/2/22(第103号)「現代の日本経済と投資」
99/2/15(第102号)「需給ギャップと投資」
99/2/8(第101号)「99年度の経済を見通す」
99/2/1(第100号)「公共投資の将来を考える」
99/1/25(第99号)「今後の景気対策を考える(その2)」
99/1/18(第98号)「景気の見通しを考える」
99/1/11(第97号)「今後の景気対策を考える(その1)」
98/12/28(第96号)「不況の原因と消費税減税を考える」
98/12/21(第95号)「米国経済の光と影を考えるーーその2」
98/12/14(第94号)「米国経済の光と影を考えるーーその1」
98/12/7(第93号)「自自連立政権を考える」
98/11/30(第92号)「公共投資と経済を考えるーーその2」
98/11/23(第91号)「緊急経済対策を考える」
98/11/16(第90号)「公共投資と経済を考えるーーその1」
98/11/9(第89号)「「空気」を考えるーーその2」
98/11/2(第88号)「「空気」を考えるーーその1」
98/10/26(第87号)「景気対策論議を考える」
98/10/19(第86号)「為替レートの今後のトレンドを考える」
98/10/12(第85号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその3」
98/10/5(第84号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその2」
98/9/28(第83号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその1」
98/9/21(第82号)「為替レートのトレンドを考える」
98/9/14(第81号)「バブルの清算と公金投入を考える」
98/9/7(第80号)「公金投入の整合性を考える」
98/8/31(第79号)「政治と経済の混乱を考える」
98/8/10(第78号)「今回の不況の原因を考える」
98/8/3(第77号)「新政権の人事を考える」
98/7/27(第76号)「小淵新自民党総裁誕生を考える」
98/7/20(第75号)「橋本総理退陣を考える」
98/7/13(第74号)「マスコミの驕りを考えるーーその2」
98/7/6(第73号)「マスコミの驕りを考えるーーその1」
98/6/29(第72号)「参院選と経済を考える」
98/6/22(第71号)「為替介入の背景を考える」
98/6/15(第70号)「橋本総理と円安を考える」
98/6/8(第69号)「日本の金融を考える」
98/6/1(第68号)「経済への関心を考える」
98/5/25(第67号)「世論と経済政策を考えるーーその2」
98/5/18(第66号)「世論と経済政策を考えるーーその1」
98/5/11(第65号)「アンケートと経済政策を考える」
98/5/4(第64号)「今回の景気対策を考える」
98/4/27(第63号)「消費の限界を考えるーーその2」
98/4/20(第62号)「消費の限界を考えるーーその1」
98/4/13(第61号)「恒久減税を考える」
98/4/6(第60号)「今回の自民党の景気対策を考える」
98/3/30(第59号)「米国の対日経済要求を考える」
98/3/23(第58号)「新日銀総裁の就任を考える」
98/3/16(第57号)「今回の不況の深刻さを考える」
98/3/9(第56号)「日米の景気対策を考える」
98/3/2(第55号)「日経新聞と経済を考えるーーその2」
98/2/23(第54号)「日経新聞と経済を考えるーーその1」
98/2/16(第53号)「貸し渋りと景気を考える」
98/2/9(第52号)「政治と経済を考える」
98/2/2(第51号)「官僚と経済を考える」
98/1/26(第50号)「「小さな政府」を考えるーーその3」
98/1/19(第49号)「「小さな政府」を考えるーーその2」
98/1/12(第48号)「「小さな政府」を考えるーーその1」
97/12/22(第47号)「需要不足の日本経済を考える」
97/12/15(第46号)「景気の現状と対策を考えるーーその8」
97/12/8(第45号)「景気の現状と対策を考えるーーその7」
97/12/1(第44号)「京都会議と経済を考える」
97/11/24(第43号)「景気の現状と対策を考えるーーその6」
97/11/17(第42号)「景気の現状と対策を考えるーーその5」
97/11/10(第41号)「景気の現状と対策を考えるーーその4」
97/11/3(第40号)「景気の現状と対策を考えるーーその3」
97/10/27(第39号)「景気の現状と対策を考えるーーその2」
97/10/20(第38号)「景気の現状と対策を考えるーーその1」
97/10/13(第37号)「市場の心理を考える」
97/10/6(第36号)「公共事業とマスコミを考える」
97/9/29(第35号)「リクルート事件と経済を考える」
97/9/22(第34号)「ロッキード事件と経済を考える」
97/9/15(第33号)「住宅と貯蓄を考える(その2)」
97/9/8(第32号)「住宅と貯蓄を考える(その1)」
97/9/1(第31号)「労働組合と経済を考える」
97/8/25(第30号)「競争時代の賃金を考える」
97/8/18(第29号)「米国経済の生産性の向上を考える」
97/8/11(第28号)「米国の景気を考える(その2)」
97/8/4(第27号)「米国の景気を考える(その1)」
97/7/28(第26号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その2)」
97/7/21(第25号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その1)」
97/7/14(第24号)「香港返還と中国経済を考える(その2)」
97/7/7(第23号)「香港返還と中国経済を考える(その1)」
97/6/30(第22号)「日本の米国債保有を考える」
97/6/23(第21号)「投機と市場を考える」
97/6/16(第20号)「規制緩和と日米関係を考える」
97/6/9(第19号)「ビックバンと為替を考える」
97/6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」
97/5/26(第17号)「内需拡大と公共工事を考える(その1)」
97/5/19(第16号)「金利と為替を考える」
97/5/12(第15号)「規制緩和と景気を考える」
97/5/5(第14号)「為替の変動を考える」
97/4/28(第13号)「日本の物価と金利を考える(その2)」
97/4/21(第12号)「日本の物価と金利を考える(その1)」
97/4/14(第11号)「日本の土地価格を考える」
97/4/7(第10号)「当マガジン経済予測のレビュー」
97/3/31(第9号)「日本の株式を考える」
97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レートの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レートの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レートを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」

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