平成9年2月10日より
経済コラムマガジン

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00/2/14(第150号)
政府の累積債務に関わる問題
  • 日本の長期債務残高の現状
    国の債務残高が増大している。国債残高だけでも99年度末には335兆円に達する見通しである。これに各種の借入金と地方の債務が加われば、600兆円を超える。そして2,000年度末の国と地方の債務残高は645兆円になると予想されている。これは国民一人当り500万円を越えており、対GDP比は130%前後となる。特に後者の数値は先進七カ国の中で最高水準である。このためか世間では、これ以上の財政支出による景気対策は限界とか、すぐに財政再建を始めるべきと言う声が大きくなっている。また膨大な公的債務残高に人々は将来の不安を感じており、これが日本の小子化の原因だと言う極端な意見もある。

    一方、むしろ日本の財政状況は極めて健全と言う意見もある。たしかに債務残高は大きいが、資産も大きい。つまり日本の純債務は決して大きくないと言う主張である。OECD(経済開発協力機構)の統計では、日本の純債務のGDP比は21%であり、先進七カ国の中では最低である。すなわち日本の財政が一番健全であることを示している。ちなみにドイツは50%、米国は46%である。

    両者の意見は真っ向から対立していが、筆者は、現在のところ後者の方が正しいと考える。ところでOECDの統計に対しては、日本の財政赤字を問題にする人々は、日本政府が所有している資産の内容を問題にすると思われる。しかし筆者は、各国とも資産については同じような問題があると考え、少なくとも日本の財政債務の残高だけが異常と考える根拠はないと思っている。一つ問題点を指摘すれば、最近の債務残高の増え方がちょっと大きいと言うことである。もっともこれには、橋本前政権の経済政策の失敗よる税収の落込みと、景気対策のための財政支出の増大と言う特殊要因がある。

    しかし債務問題で最大の問題点は、債務残高自体の大きさではなく、債務問題の存在をことさら強調し、財政の再建を唱える意見や勢力が大きくなることである。来年度の予算案も中途半端な規模であり、決して景気を下支えするには十分ではない。これも財政事情が厳しいと言った意見の影響であろう。地方債発行が限度まで来ている地方はもっとひどい。地方では対前年でマイナスの予算が予想される。都に到っては、大手金融機関への外形標準課税構想と言いだすしまつである。これでは景気対策を行っているのか、景気の足を引張っているのか分らないのである。

    ただし「累積債務問題は問題でない」と言っているだけでは説得力が乏しい。そこでこの問題を解決する方法、あるいは道筋と言うものを示して、理解を得るのが良いと思われる。本誌では、今週号から取りあえず二つの解決方法を提案することにしたい。


  • 債務残高と相続税
    政府の財政赤字の累積問題は、それほど重要とは思わなかったので、これまで本誌ではほとんど取上げてこなかった。例外は97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」であり、ちょうど3年も前のことである。そして解決方法の一つをそこで述べた。今週号では、これについてもっと詳しく、具体的に述べることにする。ただしここからしばらくは、話を分りやすくするため債務を国債に限って話を進めることにする。

    国債残高は、現在のツケを責任のないはずの子々孫々に渡すものと言われている。しかしこれは正確ではない。子々孫々は生まれながら、労せず公共物を使用できるのである。もし子々孫々の税金で国債を消却するなら、その負担は公共物の使用料とも考えられる。さらに子々孫々は国債と言う負債を受継ぐと同時に、国債と言う資産を引継ぐのである。特に日本のように国債のほとんどが国内で消化されている国では、日本人が国債と言う借金を返済し、同じ日本人がそれを受取ることになる。つまり国債の消却は異世代間のやりとりの問題ではなく、むしろ同世代の者同士の問題である。

    ところで日本には、所得のようにフローに掛かる税金の他にストックに掛かる税金がある。代表的なのは相続税である。日本の相続税は昔から過酷と言う評判である。三代で財産もステッテンになると言う話もある。したがってこの話が正しく、もし相続財産が国債だけと言うなら三代つまり100年くらいで、相続税だけで国債は消却が可能と言うことになる。つまり累積債務問題は100年のうちに自然に解決することとなる。国債の残高が増大しても、相続財産が増えるため、相続税が増えるのである。しかし現実は多少違うようである。

    ここから話を相続税全般に広げる。順調に伸びていた相続税額も最近は伸び悩んでいる。原因の一つはバブル崩壊による資産価格の下落である。この他の伸び悩みの理由として、筆者は、日本人の平均寿命が伸びていることと、相続税対策が巧みになっていることを指摘したい。特に後者は問題である。例えば意味のない財団を設立し、そこに資産を寄付すると言った行為が目立つ。明らかに相続税対策である。客観的に見て、相続税対策を行う場合とそうでない場合には、相続税額に大きな開きが生じることが問題である。ちなみに平成9年度の相続税額はたったの2兆円である。

    ところで資産家の資産が、消費されていたり投資や寄付されているのなら、経済の循環上で問題はない。問題は資産が預金されている場合や壺に保管されている場合である。特に後者の場合には完全に経済の循環から漏れてしまうのである。また預金されている場合も問題がない訳ではない。以前のように金融機関に集まった資金が投資に回されていた時代は良かったが、現在のように融資が預金額の伸びに追い付かない状況では、金融機関も国債を購入せざるを得ないのである。つまりその分の有効需要は減ることになる。一方、政府もこれによって不足する有効需要を補うための国債を発行せざるを得ない状況である。

    ここで日本は二つの方法の中からの選択に迫られる。一つは、現状のように国民の持っている澱んだ資金を国債で吸上げ、これを財政支出の財源とする方法である。もう一つは相続税の課税を適正にし、税収を増やし、その分国債の発行額を減らす方法である。これについては澱んだ資金を税金として徴収するのであるから経済への影響も軽微と考えられる。たしかに澱んだ資金が減ることは金利上昇の要因となるが、国債発行額が減るのでこの動きは相殺されると考えられる。結論として、国の累積債務問題の一つの解決方法はこの相続税の執行の適正化である。もっともこれには相当の時間を要することはたしかである。

    話はちょっと変わる。バブル崩壊で金融機関は大量の不良債権を抱えたが、一方では地価が高い時代に土地を売却した人もいるのである。この大量の資金が今銀行に眠っているのである。このような現象は諸外国ではちょっとないことであろう。したがって日本では、国債を発行して、この資金を経済の循環に戻すことが行われているのであり、このような国債の大量発行は決して異常なことではない。

    ところで相続税には色々問題がある。相続税は税率が高いことだけが問題にされているが、それ以外にも色々時代に合わないところもある。しかしこれについては別の機会に述べたい。しかし少なくとも税理士が活躍すれば、納税額に大きな違いが生じると言う税の執行状態自体がおかしい。また、今後、相続税対策として資産を海外に移転させる者も増えると思われる。これに対する対策も必要となろう。

    続いて、前述したような税法の適正な執行以外で、相続税収を増やす方法を提案する。それは積極的に国富を増大させ、相続資産額を大きくすることである。一つの方法は農地を宅地に変えることである。例えば関東平野の農地のほとんどを宅地に変えるのである。宅地にするためには大規模な交通インフラの整備を行う必要がある。筆者は、大深度地下を使った高速地下鉄の建設を念頭に置いている。宅地として使える農地は宅地として使い、地方で農業にしか使えない土地は農業に使うべきと言う考えである。地方には休耕田として使われていない土地が沢山あるのである。そして宅地が大量に増えれば、たとえ都心の地価が多少下落しても、全体では資産は増大するはずである。このような相続財産を大きくする政策によって、将来、相続税収も増えることになる。

    ここまで述べたように相続税収の増加は国の長期債務問題解決にとってプラスである。もちろん相続税だけで債務問題が解決すると思わないが、相続税の増収によって、債務の金利増加分くらいは全てカバーされることがはっきりするのなら、国の債務残高を問題とする声も小さくなると考える。



来週号では、もう一つの累積債務問題を解決する方法について述べる。こちらの方が重要である。
これは先週号でも述べたことであるが、「週刊東洋経済」の論調が最近おかしい。何事かあるのであろうか。


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00/2/7(第149号)「ペイオフ延期騒動と日経新聞」
00/1/31(第148号)「「ペイオフ強行派」への反論」
00/1/24(第147号)「「ペイオフ解禁」の延期」
00/1/17(第146号)「有力エコノミストの対談」
00/1/10(第145号)「新年度の経済を見通す」
99/12/20(第144号)「為替の話あれこれ(その1)」
99/12/13(第143号)「中堅以下の企業のリストラ」
99/12/6(第142号)「大企業のリストラ」
99/11/29(第141号)「商工ローンと日本人」
99/11/22(第140号)「あやしい常識」
99/11/15(第139号)「金融のさらなる量的緩和」
99/11/8(第138号)「為替変動と日銀」
99/11/1(第137号)「ニセ札とインフレ」
99/10/25(第136号)「もう一つの実質金利の実体」
99/10/18(第135号)「もう一つの実質金利」
99/10/11(第134号)「もう一つの調整インフレ」
99/10/4(第133号)「日銀の独立性(その2)」
99/9/27(第132号)「日銀の独立性(その1)」
99/9/20(第131号)「社会的欲求と日本経済」
99/9/13(第130号)「欲求と日本経済成長の関係」
99/9/6(第129号)「日本経済と欲求の限界(その2)」
99/8/30(第128号)「日本経済と欲求の限界(その1)」
99/8/9(第127号)「エコノミストの格付け(その3)」
99/8/2(第126号)「エコノミストの格付け(その2)」
99/7/26(第125号)「エコノミストの格付け(その1)」
99/7/19(第124号)「規制緩和と通産省」
99/7/12(第123号)「供給サイドの経済学」
99/7/5(第122号)「インターネットと日本経済(その2)」
99/6/28(第121号)「インターネットと日本経済(その1)」
99/6/21(第120号)「銀行員とリスク(その2)」
99/6/14(第119号)「銀行員とリスク(その1)」
99/6/7(第118号)「銀行のバブル期の行動」
99/5/31(第117号)「日本の銀行とリスク」
99/5/24(第116号)「需給ギャップと景気回復」
99/5/17(第115号)「経済の構造改革」
99/5/10(第114号)「サマータイムと日本人」
99/5/3(第113号)「地価動向と景気回復」
99/4/26(第112号)「お金持ちとリスク」
99/4/19(第111号)「日本のお金持ち」
99/4/12(第110号)「寡占と所得の分配」
99/4/5(第109号)「寡占市場の話」
99/3/29(第108号)「完全競争市場の話」
99/3/22(第107号)「独占市場の話」
99/3/15(第106号)「本誌の経済予想とその間違い」
99/3/8(第105号)「景気の現状(99年春)」
99/3/1(第104号)「立派な社会と景気回復」
99/2/22(第103号)「現代の日本経済と投資」
99/2/15(第102号)「需給ギャップと投資」
99/2/8(第101号)「99年度の経済を見通す」
99/2/1(第100号)「公共投資の将来を考える」
99/1/25(第99号)「今後の景気対策を考える(その2)」
99/1/18(第98号)「景気の見通しを考える」
99/1/11(第97号)「今後の景気対策を考える(その1)」
98/12/28(第96号)「不況の原因と消費税減税を考える」
98/12/21(第95号)「米国経済の光と影を考えるーーその2」
98/12/14(第94号)「米国経済の光と影を考えるーーその1」
98/12/7(第93号)「自自連立政権を考える」
98/11/30(第92号)「公共投資と経済を考えるーーその2」
98/11/23(第91号)「緊急経済対策を考える」
98/11/16(第90号)「公共投資と経済を考えるーーその1」
98/11/9(第89号)「「空気」を考えるーーその2」
98/11/2(第88号)「「空気」を考えるーーその1」
98/10/26(第87号)「景気対策論議を考える」
98/10/19(第86号)「為替レートの今後のトレンドを考える」
98/10/12(第85号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその3」
98/10/5(第84号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその2」
98/9/28(第83号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその1」
98/9/21(第82号)「為替レートのトレンドを考える」
98/9/14(第81号)「バブルの清算と公金投入を考える」
98/9/7(第80号)「公金投入の整合性を考える」
98/8/31(第79号)「政治と経済の混乱を考える」
98/8/10(第78号)「今回の不況の原因を考える」
98/8/3(第77号)「新政権の人事を考える」
98/7/27(第76号)「小淵新自民党総裁誕生を考える」
98/7/20(第75号)「橋本総理退陣を考える」
98/7/13(第74号)「マスコミの驕りを考えるーーその2」
98/7/6(第73号)「マスコミの驕りを考えるーーその1」
98/6/29(第72号)「参院選と経済を考える」
98/6/22(第71号)「為替介入の背景を考える」
98/6/15(第70号)「橋本総理と円安を考える」
98/6/8(第69号)「日本の金融を考える」
98/6/1(第68号)「経済への関心を考える」
98/5/25(第67号)「世論と経済政策を考えるーーその2」
98/5/18(第66号)「世論と経済政策を考えるーーその1」
98/5/11(第65号)「アンケートと経済政策を考える」
98/5/4(第64号)「今回の景気対策を考える」
98/4/27(第63号)「消費の限界を考えるーーその2」
98/4/20(第62号)「消費の限界を考えるーーその1」
98/4/13(第61号)「恒久減税を考える」
98/4/6(第60号)「今回の自民党の景気対策を考える」
98/3/30(第59号)「米国の対日経済要求を考える」
98/3/23(第58号)「新日銀総裁の就任を考える」
98/3/16(第57号)「今回の不況の深刻さを考える」
98/3/9(第56号)「日米の景気対策を考える」
98/3/2(第55号)「日経新聞と経済を考えるーーその2」
98/2/23(第54号)「日経新聞と経済を考えるーーその1」
98/2/16(第53号)「貸し渋りと景気を考える」
98/2/9(第52号)「政治と経済を考える」
98/2/2(第51号)「官僚と経済を考える」
98/1/26(第50号)「「小さな政府」を考えるーーその3」
98/1/19(第49号)「「小さな政府」を考えるーーその2」
98/1/12(第48号)「「小さな政府」を考えるーーその1」
97/12/22(第47号)「需要不足の日本経済を考える」
97/12/15(第46号)「景気の現状と対策を考えるーーその8」
97/12/8(第45号)「景気の現状と対策を考えるーーその7」
97/12/1(第44号)「京都会議と経済を考える」
97/11/24(第43号)「景気の現状と対策を考えるーーその6」
97/11/17(第42号)「景気の現状と対策を考えるーーその5」
97/11/10(第41号)「景気の現状と対策を考えるーーその4」
97/11/3(第40号)「景気の現状と対策を考えるーーその3」
97/10/27(第39号)「景気の現状と対策を考えるーーその2」
97/10/20(第38号)「景気の現状と対策を考えるーーその1」
97/10/13(第37号)「市場の心理を考える」
97/10/6(第36号)「公共事業とマスコミを考える」
97/9/29(第35号)「リクルート事件と経済を考える」
97/9/22(第34号)「ロッキード事件と経済を考える」
97/9/15(第33号)「住宅と貯蓄を考える(その2)」
97/9/8(第32号)「住宅と貯蓄を考える(その1)」
97/9/1(第31号)「労働組合と経済を考える」
97/8/25(第30号)「競争時代の賃金を考える」
97/8/18(第29号)「米国経済の生産性の向上を考える」
97/8/11(第28号)「米国の景気を考える(その2)」
97/8/4(第27号)「米国の景気を考える(その1)」
97/7/28(第26号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その2)」
97/7/21(第25号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その1)」
97/7/14(第24号)「香港返還と中国経済を考える(その2)」
97/7/7(第23号)「香港返還と中国経済を考える(その1)」
97/6/30(第22号)「日本の米国債保有を考える」
97/6/23(第21号)「投機と市場を考える」
97/6/16(第20号)「規制緩和と日米関係を考える」
97/6/9(第19号)「ビックバンと為替を考える」
97/6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」
97/5/26(第17号)「内需拡大と公共工事を考える(その1)」
97/5/19(第16号)「金利と為替を考える」
97/5/12(第15号)「規制緩和と景気を考える」
97/5/5(第14号)「為替の変動を考える」
97/4/28(第13号)「日本の物価と金利を考える(その2)」
97/4/21(第12号)「日本の物価と金利を考える(その1)」
97/4/14(第11号)「日本の土地価格を考える」
97/4/7(第10号)「当マガジン経済予測のレビュー」
97/3/31(第9号)「日本の株式を考える」
97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レートの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レートの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レートを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」

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