平成9年2月10日より
経済コラムマガジン

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99/12/6(第142号)
大企業のリストラ
  • リストラの背景
    世間ではリストラが話題になっており、本誌でもこれを取上げる。とりあえず今週号では主に大企業のリストラについて述べることにする。
    日本でのリストラは、人員の整理を意味している。もちろん「リストラ」の意味するところは、リストラクチャリング、つまり「再構築」のことである。企業が、需要構造の変化などの経営環境の変化に応じるために、経営資源を再配置することが本来の「リストラ」である。ところが日本では、「リストラ」は人減らしと同じと考えることが定着している。

    これは日本の企業が大きな過剰人員を抱えているからと考える。新しい分野への進出にも、過剰人員をまず整理することが必要と考えられているのである。また、新分野への進出には現在の従業員では無理と判断していることもある。一方、人員整理と言うとマイナスのイメージがあり、経営者の責任を問われかねないと言う事情も考えられるのである。しかし本当の理由は、単純に競争の激化により収益が悪化し、人件費の削減が迫られていることと思われる。特に中高年の人員の過剰が問題になっているのである。
    日本の企業の人員の過剰は、生産現場より、間接部門に目立つ。事務部門、つまりホワイトカラーが過剰なのである。このためか、日本の企業の自己資本利益率は世界的に見ても極めて低い。

    筆者は、10年ほど前に、いきなりエクソンの本社がニューヨークからヒユーストンに引越したのを知り驚いた。ところがもっと驚いたのは、エクソンの本社の人員が200人くらいと言う話である。たしかにエクソンと日本の大企業の本社機能の配置方法に違いがあり、単純に比較できないが、日本の企業でエクソンほどの規模ならば、役員と秘書だけでも200人を軽く超えると思われる。とにかく日本の企業の間接部門は大きいのである。たしかにこの理由の一つは、終身雇用にこだわる日本の企業が、生産部門の合理化に伴う余剰人員を間接部門で引受けたことも挙げられる。

    たしかに日本の企業の間接部門のホワイトカラーの人数は多い。ところでホワイトカラーの生産物は経営判断に必要な「情報」、つまりインフォメーションである。それだけにホワイトカラー部門の適正規模を考えること自体も難しいが、ただ人数が増えるにつれ「情報」の伝達も、一人当りの生産性は落ちる可能性が大きいと考えられる。したがってこの部門に対するリストラの圧力は今後も強まる一方と考えられる。

    日本には「窓際族」と言う言葉があり、大きな企業ならどの企業も多かれ少なかれこのような人々を抱えている。しかしこれらの人々の能力が特別劣ると言うことではない。ただ人員として過剰と言うことである。筆者の友人の会社は有力企業であるが、彼から、彼の会社の「窓際族」は三列になっていると言う話を以前聞いたことがある。日本の大企業は、余剰の人員も簡単には整理をしなかったのである。ここから話はちょっとずれるが、このようなコストがかかる間接部門を抱えながら、どうしてこれまで日本企業が世界に伍してやってこられたのかが不思議であろう。

    これは「謎」である。たしかに一つの理由は比較的分かりやすい。日本企業の生産現場がそれだけ優れていたことである。問題はこれ以外の理由である。ここで筆者は、少ない利益でも我慢する株主の存在を指摘したい。しかしこれは株主の行動が不合理と言う訳ではない。バブル期の以前、日本では継続的に地価が上昇し、企業の株価もそれを反映し、長期に渡り上昇を続けたのである。株主にとって株価が上昇している限り文句を言わなかったのである。

    ところがバブル崩壊後、地価は下落に転じ、これらの状況が変わった。一部の有力企業を除き、全体では株価は依然低い水準である。このような企業には、当然株主からの圧力が今後強くなると考えられる。さらにこれに最近の円高が加わった。つまり今、企業は、間接部門のリストラに加え、生産現場の一段の合理化を迫られることになっている。


  • 大企業のリストラの実態
    今日、有力な大企業がリストラを次々に実行したり、計画をしている。世間では「こんな企業までもがリストラか」と半分驚きの声がある。しかし大企業のリストラの実態は、まだまだ世間で受取られているほどには深刻なものではないと筆者は思っている。たしかにリストラの対象になっている本人にとっては重大なことかもしれないが、中堅以下の企業のリストラに比べるとずっと恵まれているのが実態である。

    大企業、特に一部に株式を上場している企業の場合、リストラと言っても、対象者は、まず子会社や関連会社に出向や再就職をするケースが多い。給料も元の給料が保証される場合が多く、これらの会社の給料水準が低い場合は、差額を親会社が負担することになる。たしかに最近ではこれらの会社が受入れられる人員が限度に来ている場合が増えている。このような場合、代理店や特約店、または取引先に再就職を会社が斡旋するのが次の段階である。

    そして再就職先が確保できないと言う段階に来た企業は、ここで始めて希望退職を募ることになる。しかし希望退職の場合は、退職金の割増など、できる限り良い条件を用意するのが普通である。特に世間体を気にする企業ほど好条件を提示する。つまり形式的にも円満な退職を目指すことになる。一方的な解雇と言うことは極力避ける。

    しかし希望退職を応募した場合も、実際にこれに応じる人々は、会社の狙いとは違うケースが多い。最近、筆者の知っている会社の場合もそうであった。会社としては50才前後の中間管理職の退職を狙っていたが、実際希望退職に応じてきたのは55才を越えた人が多かった。後何年かすれば退職する人々である。しかし会社の方もそれで予定の人数が確保できたと言うことで納得する他はなかった。また退職する方は、多少予定より早く退職することになったが、割増退職金に加え色々な優遇措置があり、それほど不満がないのである。このように今のところ、大企業のリストラは実にのんきなものである。実際、大企業のリストラをめぐりストライキなどで揉めたと言うケースは、今のところほとんど皆無である。

    リストラを行うにしても、大企業は神経を使っているのが普通である。最近、企業をめぐるスキャンダルの発端はほとんどが内部からの告発である。野村証券の総会屋事件もそうであった。この事件は次に第一勧銀に飛火し、最後は大蔵省と日銀への接待汚職に発展したのである。
    実際、会社としては管理部門のスリム化を目論んでも、簡単にはできないのが実状である。特に最近では株主代表訴訟が流行になっており、会社の色々な情報を握っている管理部門の人員の安易なリストラなど、とてもできないのである。現在のところ、大企業とっては、あくまでも円満退職によるリストラしか方法がないのである。しかしこのような方法がいつまで続けられるか時間の問題ではないかとも、筆者は最近考えている。



来週号では中堅以下の企業のリストラを取上げる。こちらの方は深刻である。


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99/11/29(第141号)「商工ローンと日本人」
99/11/22(第140号)「あやしい常識」
99/11/15(第139号)「金融のさらなる量的緩和」
99/11/8(第138号)「為替変動と日銀」
99/11/1(第137号)「ニセ札とインフレ」
99/10/25(第136号)「もう一つの実質金利の実体」
99/10/18(第135号)「もう一つの実質金利」
99/10/11(第134号)「もう一つの調整インフレ」
99/10/4(第133号)「日銀の独立性(その2)」
99/9/27(第132号)「日銀の独立性(その1)」
99/9/20(第131号)「社会的欲求と日本経済」
99/9/13(第130号)「欲求と日本経済成長の関係」
99/9/6(第129号)「日本経済と欲求の限界(その2)」
99/8/30(第128号)「日本経済と欲求の限界(その1)」
99/8/9(第127号)「エコノミストの格付け(その3)」
99/8/2(第126号)「エコノミストの格付け(その2)」
99/7/26(第125号)「エコノミストの格付け(その1)」
99/7/19(第124号)「規制緩和と通産省」
99/7/12(第123号)「供給サイドの経済学」
99/7/5(第122号)「インターネットと日本経済(その2)」
99/6/28(第121号)「インターネットと日本経済(その1)」
99/6/21(第120号)「銀行員とリスク(その2)」
99/6/14(第119号)「銀行員とリスク(その1)」
99/6/7(第118号)「銀行のバブル期の行動」
99/5/31(第117号)「日本の銀行とリスク」
99/5/24(第116号)「需給ギャップと景気回復」
99/5/17(第115号)「経済の構造改革」
99/5/10(第114号)「サマータイムと日本人」
99/5/3(第113号)「地価動向と景気回復」
99/4/26(第112号)「お金持ちとリスク」
99/4/19(第111号)「日本のお金持ち」
99/4/12(第110号)「寡占と所得の分配」
99/4/5(第109号)「寡占市場の話」
99/3/29(第108号)「完全競争市場の話」
99/3/22(第107号)「独占市場の話」
99/3/15(第106号)「本誌の経済予想とその間違い」
99/3/8(第105号)「景気の現状(99年春)」
99/3/1(第104号)「立派な社会と景気回復」
99/2/22(第103号)「現代の日本経済と投資」
99/2/15(第102号)「需給ギャップと投資」
99/2/8(第101号)「99年度の経済を見通す」
99/2/1(第100号)「公共投資の将来を考える」
99/1/25(第99号)「今後の景気対策を考える(その2)」
99/1/18(第98号)「景気の見通しを考える」
99/1/11(第97号)「今後の景気対策を考える(その1)」
98/12/28(第96号)「不況の原因と消費税減税を考える」
98/12/21(第95号)「米国経済の光と影を考えるーーその2」
98/12/14(第94号)「米国経済の光と影を考えるーーその1」
98/12/7(第93号)「自自連立政権を考える」
98/11/30(第92号)「公共投資と経済を考えるーーその2」
98/11/23(第91号)「緊急経済対策を考える」
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98/11/9(第89号)「「空気」を考えるーーその2」
98/11/2(第88号)「「空気」を考えるーーその1」
98/10/26(第87号)「景気対策論議を考える」
98/10/19(第86号)「為替レートの今後のトレンドを考える」
98/10/12(第85号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその3」
98/10/5(第84号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその2」
98/9/28(第83号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその1」
98/9/21(第82号)「為替レートのトレンドを考える」
98/9/14(第81号)「バブルの清算と公金投入を考える」
98/9/7(第80号)「公金投入の整合性を考える」
98/8/31(第79号)「政治と経済の混乱を考える」
98/8/10(第78号)「今回の不況の原因を考える」
98/8/3(第77号)「新政権の人事を考える」
98/7/27(第76号)「小淵新自民党総裁誕生を考える」
98/7/20(第75号)「橋本総理退陣を考える」
98/7/13(第74号)「マスコミの驕りを考えるーーその2」
98/7/6(第73号)「マスコミの驕りを考えるーーその1」
98/6/29(第72号)「参院選と経済を考える」
98/6/22(第71号)「為替介入の背景を考える」
98/6/15(第70号)「橋本総理と円安を考える」
98/6/8(第69号)「日本の金融を考える」
98/6/1(第68号)「経済への関心を考える」
98/5/25(第67号)「世論と経済政策を考えるーーその2」
98/5/18(第66号)「世論と経済政策を考えるーーその1」
98/5/11(第65号)「アンケートと経済政策を考える」
98/5/4(第64号)「今回の景気対策を考える」
98/4/27(第63号)「消費の限界を考えるーーその2」
98/4/20(第62号)「消費の限界を考えるーーその1」
98/4/13(第61号)「恒久減税を考える」
98/4/6(第60号)「今回の自民党の景気対策を考える」
98/3/30(第59号)「米国の対日経済要求を考える」
98/3/23(第58号)「新日銀総裁の就任を考える」
98/3/16(第57号)「今回の不況の深刻さを考える」
98/3/9(第56号)「日米の景気対策を考える」
98/3/2(第55号)「日経新聞と経済を考えるーーその2」
98/2/23(第54号)「日経新聞と経済を考えるーーその1」
98/2/16(第53号)「貸し渋りと景気を考える」
98/2/9(第52号)「政治と経済を考える」
98/2/2(第51号)「官僚と経済を考える」
98/1/26(第50号)「「小さな政府」を考えるーーその3」
98/1/19(第49号)「「小さな政府」を考えるーーその2」
98/1/12(第48号)「「小さな政府」を考えるーーその1」
97/12/22(第47号)「需要不足の日本経済を考える」
97/12/15(第46号)「景気の現状と対策を考えるーーその8」
97/12/8(第45号)「景気の現状と対策を考えるーーその7」
97/12/1(第44号)「京都会議と経済を考える」
97/11/24(第43号)「景気の現状と対策を考えるーーその6」
97/11/17(第42号)「景気の現状と対策を考えるーーその5」
97/11/10(第41号)「景気の現状と対策を考えるーーその4」
97/11/3(第40号)「景気の現状と対策を考えるーーその3」
97/10/27(第39号)「景気の現状と対策を考えるーーその2」
97/10/20(第38号)「景気の現状と対策を考えるーーその1」
97/10/13(第37号)「市場の心理を考える」
97/10/6(第36号)「公共事業とマスコミを考える」
97/9/29(第35号)「リクルート事件と経済を考える」
97/9/22(第34号)「ロッキード事件と経済を考える」
97/9/15(第33号)「住宅と貯蓄を考える(その2)」
97/9/8(第32号)「住宅と貯蓄を考える(その1)」
97/9/1(第31号)「労働組合と経済を考える」
97/8/25(第30号)「競争時代の賃金を考える」
97/8/18(第29号)「米国経済の生産性の向上を考える」
97/8/11(第28号)「米国の景気を考える(その2)」
97/8/4(第27号)「米国の景気を考える(その1)」
97/7/28(第26号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その2)」
97/7/21(第25号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その1)」
97/7/14(第24号)「香港返還と中国経済を考える(その2)」
97/7/7(第23号)「香港返還と中国経済を考える(その1)」
97/6/30(第22号)「日本の米国債保有を考える」
97/6/23(第21号)「投機と市場を考える」
97/6/16(第20号)「規制緩和と日米関係を考える」
97/6/9(第19号)「ビックバンと為替を考える」
97/6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」
97/5/26(第17号)「内需拡大と公共工事を考える(その1)」
97/5/19(第16号)「金利と為替を考える」
97/5/12(第15号)「規制緩和と景気を考える」
97/5/5(第14号)「為替の変動を考える」
97/4/28(第13号)「日本の物価と金利を考える(その2)」
97/4/21(第12号)「日本の物価と金利を考える(その1)」
97/4/14(第11号)「日本の土地価格を考える」
97/4/7(第10号)「当マガジン経済予測のレビュー」
97/3/31(第9号)「日本の株式を考える」
97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レートの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レートの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レートを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」

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