- 商工ローンの問題
今週号では商工ローンの問題を取上げるが、これについては連日マスコミで報道されており、事の成行きについて本誌が新たに付け加えるようなことは特にない。ただ本誌なりの切り口でこの問題を取上げることにする。
筆者よりもっと商工ローンの実態に詳しい方が多いと思われるが、筆者の理解している範囲内で、まず商工ローンの仕組と問題点について述べることにしたい。 融資は、銀行融資のように原則として土地などの不動産物件を担保にしたものが一般的である。しかし一方には、消費者金融、つまりサラ金のように原則として無担保の融資がある。しかしこの場合には限度額が低く、金利は高い。そして問題の商工ローンはこの中間に位置すると思われる。融資額は数百万円から一千万円前後であり、担保として連帯保証人が必要となる。担保には不動産のような物的担保と連帯保証人のような人的担保があるが、商工ローンは後者によって融資を行っているのである。
ところが、まず不思議なことは、保証人と言う担保を要求しながら、金利がべらぼうに高いのである。調査手数料などの名目で金利が加算され、実質の金利は、年利40%に近い水準であり、かろうじて法定限度内と言うことである。これは大手の消費者金融よりさらに高金利である。
商工ローンについては金利と同時に強引な取立方法が問題とされている。これは現行の法律に違反した行為である。この他に「根保証額」を商工ローンの社員がかってに記入したと言う話もある。この報道が本当なら、これも犯罪である。
しかし筆者が一番に問題にしたいのは、債権の回収を主たる債務者ではなく、保証人から行おうとしている経営方針、つまり商売の進め方である。商工ローンによっては、利息は債務者から、元本は保証人からと割切っているところもあるようだ。たしかに法律上は、連帯保証人には、主たる債務者が債務返済が不能となれば、契約の範囲内(根保証額)で、債務者に成り変わって債務を返済する、つまり代位弁済の義務がある。 しかし根保証額に関わる説明が十分になされていないこともあるが、連帯保証人がそこまで覚悟を決めて保証人を引受けているケースはまれと思われる。軽率と言えば、あまりにも軽率である。人が保証人を引受ける理由は様々であるが、人間関係の上でしょうがないとか、仕事の上で世話になったからと言うケースが多いと思われる。また保証人を引受ける人に経済的メリットがないケースも多いはずである。つまり善意で保証を行うケースが多いと考えられる。筆者は、これは極めて日本的な行為であり、商工ローンの問題のようなことは、米国ではまず起こり得ないと考えている。
- 商工ローンと社会
商工ローンの問題が表面化し、これについてマスコミは色々な問題点を取上げているが、筆者はこの問題について何か、そう言うものとは別に、異物のような「違和感」みたいなものを感じる。そして筆者はこれは何かとずっと考えてきた。そして筆者は、このようなことは日本人と欧米人の文化や行動の狭間に起こる事柄ではないかと考えるようになった。今日の日本においては、程度の差があっても、よく似た事が他でも頻繁に起こっていると言うことである。
保証人を引受ける人は債務者の知人であり、人間関係のある人々である。直接お金を貸すことには抵抗があるが、保証人になるくらいなら良いであろうと考えるのである。また多くは善意で保証人となるが、これがとんだ落とし穴となっている。問題になっている商工ローンの商売は、これらの人々の極めて日本的な善意が前提で成立っている。
ところが一旦、債務者が債務不履行になった時(多くはこの高金利では行き詰まることは分かっている)、商工ローンは一転して契約書を持出し、法律で保証人に代位弁済を迫る。最後は契約とか法律と言う極めて欧米的な方法で解決しようとするのである。商工ローンの営業は、契約する時には日本的な人間関係を当てにし、最後は欧米流の法律で迫る。つまり商工ローンは日本的なものと欧米的なものの双方からメリットを受けようとしているのである。
もちろん日本は法治国家であり、物事は法律で律せられている。しかし現実に問題が起こった場合にはまず「話し合い」があり、その結果「示談」や「和解」と言う形で解決が行われるのが普通である。裁判で徹底的に争うと言うことはめったにない。裁判所さえもよく両者に和解を奨めるのである。これは、日本のように比較的閉じられている社会では、人々の間の調和を維持することが重視されるからである。たしかにこのような日本流の解決方法は、結果があいまいなものになるかもしれない。しかしこの解決方法は、手っ取り早く、効率的である。そしてこれも日本人が考えた一種の知恵である。一方、米国のように他人の集まりのような国ではこうは行かないのである。
日本では、司法のインフラも米国のような「訴訟社会」には到底対応できない。弁護士の数も、米国の90万人に対して、日本は1万7千人である。しかしこのような日本の社会も今後は、欧米流の問題解決方法を用いる社会に近づいて行くと考えられる。現在はまさに過渡期である。そのためか今日、日本の人々はストレスを感じているはずである。しかし日本人が完全に欧米人になれるわけではなく、今後日本は極めて日本的な法律社会を目指すと言うことになろう。そのための法律の整備も必要である。
具体的な例として宅建法を取上げる。不動産のように一生のうちにめったに取引しない物については、顧客と業者の間の知識には格段の差がある。したがって宅建法では、取引主任者に「重要事項の説明」を義務付け、顧客の保護をおこなっている。一方、商工ローンで問題になっている債務の保証も、一般の人々にとってはめった出会さないことである。しかし貸金業の世界では、保証についての説明がほとんどなされていないのが実状である。つまりどれだけ説明するかは貸金業者の善意に任されているのである。したがって筆者は、貸金業についても宅建法と同様の説明を業者に義務付けるべきと考える。
商工ローン問題は社会問題となっており、出資法の上限利率も引き下げられる見通しである。しかし筆者は、人々の注目が出資法の上限金利の年40%だけに向いているのは間違いと考える。日本にはもう一つ、利息制限法と言うものがある。この法律は金利を、金額によって15〜20%に制限している。これを超える利息については貸金業者と交渉の余地があるはずである。たしかに弁護士費用はかかるが、弁護士に相談すべきである。
大手消費者金融の金利は20%台であるが、これは利息制限法の制限金利を意識したものと考えられる。つまり弁護士費用を考えると訴訟を起こしにくい水準に設定しているのである。筆者は、出資法の上限金利の引下げだけでなく、利息制限法の制限金利も引下げるべきと考える。こう主張すると必ず、そのようにすれば融資する所がなくなると言う意見が出てくる。しかしそんなことは決してない。これらの業界が空前の利益を出していることから分かるように、引下げる余地はまだまだあるはずである。
法律の知識がそれほどなくても暮らせたこれまでの日本にも、商工ローンなどの異物の出現があり、人々は法律で防備する必要が出てきた。しかし「六法全書」を常時持ちながら生活するわけにはいかない。筆者は、法律問題が起こりそうなった場合には、気軽に弁護士に相談に行くことが良いと考える。しかしなじみの弁護士がいない人も多いと思われ。その場合には、ちょっとした町には担当弁護士が相談に乗ってくれる法律相談所があり、これを利用することを奨める。費用は1時間5千円くらいである。あらかじめ電話で予約して行くのが良い。
問題となった商工ローンの社長は、テレビに登場し、今後の経営は「手形割引」を中心にやっていくと言っていた。しかし手形割引業には長年の経験と多くの知識が必要である。1年や2年で社員が辞めていく会社が、それをやって行けるか大いに疑問である。いずれにしても、商工ローンの行く末は注目される。
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