平成9年2月10日より
経済コラムマガジン

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99/7/26(第125号)


エコノミストの格付け(その1)
  • エコノミストとマスコミの関係
    文芸春秋の8月号に「人気エコノミスト20人本当の実力」と言う特集があり、エコノミストの格付けを行っている。格付けを実行しているのは経済ジャーナリスト東谷暁(ひがしたにさとし)氏を中心とするグループである。詳細を知りたい方は是非文芸春秋の8月号を買っていただきたい。

    たしかにここ数年、日本の大半のエコノミストの言動は異常であった。96年景気が回復しかけたが、この過程で住宅建設は既にピークに達しており、これ以上の景気回復には輸出の増加ぐらいしか手段がなくなっていた。ところが政府は、景気は自律回復していると判断ミスを行い、財政再建を政策の中心に据え、翌年度の緊縮予算の方針を決定した。筆者の考えでは追加の景気対策が必要な状況にもかかわらず、まったく反対の政策を進めたのである。

    驚くことに、日本のエコノミストのほとんどは、財政再建は当然であると政府の経済政策に賛成を示し、なかにはこの程度の緊縮予算はまだ甘い、もっと大胆に削減すべきと主張する者さえいた。この緊縮予算に当初から一貫して反対していたのはリチャード・クー氏と金森久雄氏ぐらいである。

    97年度に入って、景気が後退してきても、楽観的なエコノミストはすぐに持ち直すから、財政再建路線は堅持すべきとのんきなことを言っていた。しかし日本のエコノミストの迷走はまだまだ続いた。景気後退がはっきりし、拓銀や山一が破綻した頃から、今度は一斉に景気対策が必要と主張を変え始めた。しかし彼等の主張はピントがづれており、「公共投資は効果が限られるから、景気対策には減税を行え」と言っていた。ところが2兆円の特別減税が行われたが全く効果がなかった。すると「特別減税では効果が限られるから恒久減税を行え」とまたまた主張を微妙に変えたのである。

    またエコノミストの多くは、当初「悪い銀行は潰せ」と言っていたが、長銀の事実上の破綻により国有化が決まる頃には、今度は銀行に公的資金を大胆に投入するよう主張し始めた。このような日本のエコノミストの一貫性のない言動を聞いていると東谷暁氏でなくても、エコノミストの格付が必要と考えるのは当然である。

    しかし彼等の言動の変転を冷静に観察すると別の事柄に気が付く。彼等の言動が変わるタイミングはマスコミの論調が変わるのと軌を一にしているのである。とりあえず景気対策を行えと言い始めたのも、企業の広告宣伝費の支出が減少し始めた頃である。マスコミも背に腹をかえられなくなったのである。つまり日本の有名エコノミストの多くはマスコミや経済新聞に飼われたタレントと考えると分かりやすい。タレントだからプロデューサの意向を汲んで発言しているのである。もっとも中には稀に、自分の立場を忘れ、テレビの生番組で不規則発言をするエコノミストがいる。このようなエコノミストは、それ以降ぷっつりとテレビには登場しなくなる。扱いにくいタレントと評価されるからであろう。

    しかし同様のことは他の分野の評論家にも言える。今日、プロデューサの意図とは別に、自分の意見を述べることができるような存在感のある評論家は極めて少ない。わずかに立花隆氏くらいのものであろう。しかし氏も佐藤孝行氏の総務庁長官就任時のコメント以来、めっきりテレビには登場しなくなったのである。彼も扱いにくい評論家と思われているのであろうか、気になるところである。またタレントとしてのエコノミストや評論家には二種類いる。一つはここまで話をしてきたようにマスコミの意向を汲み、主張をコロコロ変える者達である。彼等はいつでも主張を変えられるよう、発言にはあいまいな表現を使う。彼等は遊泳術に長けているのである。もう一つのグループは、内容が正しいかを別にして、年がら年中同じ同じことを主張している者達である。プロデューサはこの二種類を巧みに組み合わせて番組を作るのである。もっとも後者の場合は、主張を一旦変えるともうお呼びがかからなくなる。

    エコノミストは、プロデューサの意向を汲み、踊ってみせれば、名も知られ、書いた本も売れることによって、経済的メリットも受けられると言う仕組みである。以前、テレビ番組の中で田原総一郎氏は「番組の中で景気対策には減税が必要と発言していたエコノミストが、番組終了後、田原さん減税をやっても何の効果もありませんよ」と言って来たと憤慨していた。しかしこのようなエコノミストを育てたのも当のマスコミと言うことを、忘れてもらってはこまるのである。


  • 格付に対する異義
    文芸春秋の8月号の格付に話を戻す。格付そのものには、筆者は半分は賛成し、半分は全く反対である。東谷氏等の格付の対象はバブル期前後からの発言である。しかし筆者は、むしろここ2、3年の言論を重視したい。バブル生成期とその崩壊の経済は、日本だけではなく世界的にもあまり例のないものであった。地価や株価の上昇による資産効果や、逆にこれらが下落したことによる逆資産効果の経済への影響と言うものが初めて注目された時代であり、経済を論じること自体が難しかった。また、当時米国経済も不安定な状態であり、日本経済も国内の均衡だけを考えるわけにはいかなかった。したがって立場によって見方が異なっても仕方がない状況であった。

    筆者は、むしろ橋本内閣の間違った経済政策をどのように評価したかによって、そのエコノミストの実力と言うものが分かると考える。特にエコノミストが問題となるのは、言論が大いに混乱したここ2、3年である。これらのエコノミストの発言が世論をミスリードし、政策転換までに時間が要することになり、不況が深刻になったのも最近の話である。したがって筆者はここ2、3年の言動を中心にして格付を行うべきと考えている。

    まず東谷氏等の格付で一番の問題は、上位の二名である。三和総研の原田和明氏と東海総研の水谷研治氏である。しかし最上位の原田氏については、テレビの登場回数が多いわりには印象が薄い。

    筆者は、原田氏は自分の考えを主張するエコノミストと言うより、経済の解説者と言う認識である。また橋本政権の財政再建路線にはっきり反対を示していたわけではない。財政再建路線に危惧を示していた程度のエコノミストなら他にもけっこういたはずである。ただ原田氏が、テレビの司会者の「最近の低金利により銀行預金にメリットがない。どうしたら良いか」と言う問に対して、「 外貨建定期預金」を推奨していた。2年半ほど前の話で、本誌は当時、これを問題として取上げた。筆者は外貨預金や外債投資は基本的に金融のプロが行うものと考えている。為替の変動は大きく、金利差があっても大損することがある。機関投資家なら円安になった時点で為替予約などで利益を確定することができるが、一般の預金者はもろに為替リスクを負うことになる。たしかに原田氏以外でも、円安の局面が続き外貨建ての資金運用を推奨するエコノミストは当時いたのである。テレビは大衆が見るものである。中にはこれらの話を鵜のみにして結構損をしている人々がいるはずである。とにかく原田氏が最上位と言う格付なら、こんな格付自体を行う意味がないと筆者は考える。

    しかしこの格付の最大の問題は、原田氏の次にランクされている水谷研治氏である。氏は一貫して財政赤字を問題とする観点から発言している。もちろん橋本内閣の財政再建路線にも大賛成であった。むしろもっと財政支出を削れと言っていた。また今日の景気対策にも反対している。どうも東谷氏を中心とするグループの格付は、主張の一貫性に異常にウエートをおいているようである。そうでなければ水谷氏がこんなに高いランクにくるはずがないと考えている。しかし筆者は、主張の一貫性より、主張そのものが正しいかどうかの方がずっと重要と考える。この観点から、水谷氏に失礼であるが、筆者の格付では、水谷氏はこの格付に登場する20人のエコノミストのなかで最低である。続きは来週号。


政府日銀の為替介入に米国などが警戒感を示している。米国の言い分は「日本政府はまず内需拡大を行うのが筋である」と言うことである。もっともなことである。そして日米間ではいずれ妥協点が見い出されると思われるが、多少時間がかかるようだ。それまで為替は不安定な動きを続けることになろう。だいたい多少小さくなったと言え、経常収支が大幅黒字の国の為替を安く安定させることは難しい。現在、ユーロが多少持ち直し、米ドルの独歩安である。米国もこのままドルがどんどん安くなる状態は容認できまい。小渕内閣は、この機会を捕らえ、なるべく早く米国と為替安定で合意を取り付ける必要がある。米国はその条件として、財政支出による追加の景気対策を要求してくると思われる。

今回注目されるのは、政府日銀の為替介入に対して、米国だけではなくASEAN諸国も反発していることである。筆者は、ASEAN諸国もようやくこのことに気が付いたかと言う思いである。筆者は、ASEAN諸国の経済が長らく浮上しなかったのも、円安が続いたからと考えている。ASEAN諸国の経済は底が浅く、為替に左右される度合いが大きいのである。これを来週号で取上げ、外国のエコノミストの中で唯一格付されているポール・クルーグマン教授の分析が正しいことを示したい。

東谷氏等の格付では第3位がこのポール・クルーグマン氏であり、第4位にようやくリチャード・クー氏である。どうしてこの両氏よりも原田氏や水谷氏が上なのか、全く理解できないことである。


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99/7/19(第124号)「規制緩和と通産省」
99/7/12(第123号)「供給サイドの経済学」
99/7/5(第122号)「インターネットと日本経済(その2)」
99/6/28(第121号)「インターネットと日本経済(その1)」
99/6/21(第120号)「銀行員とリスク(その2)」
99/6/14(第119号)「銀行員とリスク(その1)」
99/6/7(第118号)「銀行のバブル期の行動」
99/5/31(第117号)「日本の銀行とリスク」
99/5/24(第116号)「需給ギャップと景気回復」
99/5/17(第115号)「経済の構造改革」
99/5/10(第114号)「サマータイムと日本人」
99/5/3(第113号)「地価動向と景気回復」
99/4/26(第112号)「お金持ちとリスク」
99/4/19(第111号)「日本のお金持ち」
99/4/12(第110号)「寡占と所得の分配」
99/4/5(第109号)「寡占市場の話」
99/3/29(第108号)「完全競争市場の話」
99/3/22(第107号)「独占市場の話」
99/3/15(第106号)「本誌の経済予想とその間違い」
99/3/8(第105号)「景気の現状(99年春)」
99/3/1(第104号)「立派な社会と景気回復」
99/2/22(第103号)「現代の日本経済と投資」
99/2/15(第102号)「需給ギャップと投資」
99/2/8(第101号)「99年度の経済を見通す」
99/2/1(第100号)「公共投資の将来を考える」
99/1/25(第99号)「今後の景気対策を考える(その2)」
99/1/18(第98号)「景気の見通しを考える」
99/1/11(第97号)「今後の景気対策を考える(その1)」
98/12/28(第96号)「不況の原因と消費税減税を考える」
98/12/21(第95号)「米国経済の光と影を考えるーーその2」
98/12/14(第94号)「米国経済の光と影を考えるーーその1」
98/12/7(第93号)「自自連立政権を考える」
98/11/30(第92号)「公共投資と経済を考えるーーその2」
98/11/23(第91号)「緊急経済対策を考える」
98/11/16(第90号)「公共投資と経済を考えるーーその1」
98/11/9(第89号)「「空気」を考えるーーその2」
98/11/2(第88号)「「空気」を考えるーーその1」
98/10/26(第87号)「景気対策論議を考える」
98/10/19(第86号)「為替レートの今後のトレンドを考える」
98/10/12(第85号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその3」
98/10/5(第84号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその2」
98/9/28(第83号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその1」
98/9/21(第82号)「為替レートのトレンドを考える」
98/9/14(第81号)「バブルの清算と公金投入を考える」
98/9/7(第80号)「公金投入の整合性を考える」
98/8/31(第79号)「政治と経済の混乱を考える」
98/8/10(第78号)「今回の不況の原因を考える」
98/8/3(第77号)「新政権の人事を考える」
98/7/27(第76号)「小淵新自民党総裁誕生を考える」
98/7/20(第75号)「橋本総理退陣を考える」
98/7/13(第74号)「マスコミの驕りを考えるーーその2」
98/7/6(第73号)「マスコミの驕りを考えるーーその1」
98/6/29(第72号)「参院選と経済を考える」
98/6/22(第71号)「為替介入の背景を考える」
98/6/15(第70号)「橋本総理と円安を考える」
98/6/8(第69号)「日本の金融を考える」
98/6/1(第68号)「経済への関心を考える」
98/5/25(第67号)「世論と経済政策を考えるーーその2」
98/5/18(第66号)「世論と経済政策を考えるーーその1」
98/5/11(第65号)「アンケートと経済政策を考える」
98/5/4(第64号)「今回の景気対策を考える」
98/4/27(第63号)「消費の限界を考えるーーその2」
98/4/20(第62号)「消費の限界を考えるーーその1」
98/4/13(第61号)「恒久減税を考える」
98/4/6(第60号)「今回の自民党の景気対策を考える」
98/3/30(第59号)「米国の対日経済要求を考える」
98/3/23(第58号)「新日銀総裁の就任を考える」
98/3/16(第57号)「今回の不況の深刻さを考える」
98/3/9(第56号)「日米の景気対策を考える」
98/3/2(第55号)「日経新聞と経済を考えるーーその2」
98/2/23(第54号)「日経新聞と経済を考えるーーその1」
98/2/16(第53号)「貸し渋りと景気を考える」
98/2/9(第52号)「政治と経済を考える」
98/2/2(第51号)「官僚と経済を考える」
98/1/26(第50号)「「小さな政府」を考えるーーその3」
98/1/19(第49号)「「小さな政府」を考えるーーその2」
98/1/12(第48号)「「小さな政府」を考えるーーその1」
97/12/22(第47号)「需要不足の日本経済を考える」
97/12/15(第46号)「景気の現状と対策を考えるーーその8」
97/12/8(第45号)「景気の現状と対策を考えるーーその7」
97/12/1(第44号)「京都会議と経済を考える」
97/11/24(第43号)「景気の現状と対策を考えるーーその6」
97/11/17(第42号)「景気の現状と対策を考えるーーその5」
97/11/10(第41号)「景気の現状と対策を考えるーーその4」
97/11/3(第40号)「景気の現状と対策を考えるーーその3」
97/10/27(第39号)「景気の現状と対策を考えるーーその2」
97/10/20(第38号)「景気の現状と対策を考えるーーその1」
97/10/13(第37号)「市場の心理を考える」
97/10/6(第36号)「公共事業とマスコミを考える」
97/9/29(第35号)「リクルート事件と経済を考える」
97/9/22(第34号)「ロッキード事件と経済を考える」
97/9/15(第33号)「住宅と貯蓄を考える(その2)」
97/9/8(第32号)「住宅と貯蓄を考える(その1)」
97/9/1(第31号)「労働組合と経済を考える」
97/8/25(第30号)「競争時代の賃金を考える」
97/8/18(第29号)「米国経済の生産性の向上を考える」
97/8/11(第28号)「米国の景気を考える(その2)」
97/8/4(第27号)「米国の景気を考える(その1)」
97/7/28(第26号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その2)」
97/7/21(第25号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その1)」
97/7/14(第24号)「香港返還と中国経済を考える(その2)」
97/7/7(第23号)「香港返還と中国経済を考える(その1)」
97/6/30(第22号)「日本の米国債保有を考える」
97/6/23(第21号)「投機と市場を考える」
97/6/16(第20号)「規制緩和と日米関係を考える」
97/6/9(第19号)「ビックバンと為替を考える」
97/6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」
97/5/26(第17号)「内需拡大と公共工事を考える(その1)」
97/5/19(第16号)「金利と為替を考える」
97/5/12(第15号)「規制緩和と景気を考える」
97/5/5(第14号)「為替の変動を考える」
97/4/28(第13号)「日本の物価と金利を考える(その2)」
97/4/21(第12号)「日本の物価と金利を考える(その1)」
97/4/14(第11号)「日本の土地価格を考える」
97/4/7(第10号)「当マガジン経済予測のレビュー」
97/3/31(第9号)「日本の株式を考える」
97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レートの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レートの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レートを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」

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