平成9年2月10日より
経済コラムマガジン


毎週、経済などをテーマに独特の切り口で論評。最新号はトップページ。

97/4/14(第11号)
  • 政府関係者が「為替の安定」を唱える度に為替は円安にふれる。それも道理で、「為替の安定」を額面通り受け取れば、金利の高い海外に投資するほうが有利と考え、外債投資が増え、円安となるからである。実際、先月テレビである証券会社の営業担当者が今月外債投資を増やすと言っていた。いずれ「円高」になると予想する筆者には信じられないが、「金利差があるから円安になる」と言うのは世間では常識のようだ。台本を読んでいると思われるが、テレビのレポ-タ-が「今日は日米の金利差が5%を超えたため、外債投資が増え、一段と円安が進んだ」と言う話を聞く度に首をかしげる他はない。
    金利差が5%あっても「円」が年間で5%つまり、6円位高くなれば「ちゃら」である。また債券には価格変動のリスクがある。一年後の為替に変動がなくても、価格が5%下落しても「ちゃら」である。価格が5%下落すると言うことは、現在の米国債7%で計算すると年間で0.35%以上利回りが上昇すれば損することになる。ところが米国債の利回り先月から今月にかけて0.5%ほど上昇している。つまり先月米国債を買った人は既に「日米の金利差分以上」を一ヵ月で損している。さらに今後、米国では、金利の再引き上げが予想されている。したがって筆者には、現時点の米国債投資は「玉砕覚悟の投資」と感じられる。さしずめ、マスコミと一部エコノミストの言動は「進軍ラッパ」である。


  • 外債投資を個人だけでなく、生保などの機関投資家も行っているらしい。資産の分散の観点から個人が、外債を購入すると言うならわかるが、大きなリスクを背負って機関投資家が外債を買うと言うのが理解できない。「円高」であった2年前なら為替変動のリスクも小さかったが、現在円もかなり安くなってきており、米国の金利も上昇傾向の今頃になってなぜ「米国債への投資」なのかよくわからない。バブルの時代の「地価がどんどん上がるからまた土地買う」と言う発想と同じではないか。

  • テレビであるエコノミストが「日米の金利差」にコメントし、為替の動きには「名目金利」だけでなく「実質金利」も影響するとでの解説していた。つまり「米国の卸物価は安定しており」逆に「日米の実質金利も差が大きくなっている」ため為替が「円安」になっていると言う説明である。確かに実質金利の差が大きくなっていることは、筆者も承知しているが、これが米国企業の生産性向上によるものなら納得できる。しかし、筆者は、これが去年から今年にかけての急激なドル高によるもの輸入物価の下落によると考えているため、円安・ドル高の流れが止まれば、「実質金利の差」は再び小さくなると予想している。さらに「実質金利の差」で為替の動きを説明するにはある程度長い期間を前提にする場合である。昨日・今日の為替変動の説明に「実質金利」を持ってくること自体ばかげている。
    また、為替水準の長期的トレンドを見るなら、両国の卸物価指数を考慮すべきである。この数値は日本の方が小さいのだから、反対にこの分毎年円が高くなるのが自然である(3/3(第5号)「為替レ-トの動向を考える(その2)」を参照)。いずれにしても、昨今の為替の動きは「金利差」で説明するより、「証券会社の営業マンの営業活動の成果」と考える方が正しく理解できる。金利差による説明はその「セ-ルスト-ク」の一つである。昔からずっと(円高の時代から)金利差はあったのだから、今ごろ急に気がついたように強調するのはおかしい。


  • 「日米の金利差」により、外債投資といった場合、外債を購入すること自体が目的ではなく、購入することによる利益が目的である。よくわからない国の債券への投資を行うにはよほどの利益が期待できないとできないはずである。一方日本の国債は金利は低い。ところがその日本の国債が買われており、利回りが低下し続けている。短期間の間に0.4%(2.5%から2.1% へ)くらい低下しており、これから国債価格の上昇率を逆算すれば、約16%くらい上昇していることになる。つまり、前述したことと合わせば、金利の高い米国債を購入した投資家は損をしており、低金利の日本国債を購入した投資家は大きな利益を得ているのだ。
    このように「金利差で資金が移動する」と言ったデマに近い話を信じ投資を行うことが、いかに危険で根拠が薄弱なものかご理解できよう。さらに、米国債以外の外債を購入した場合は、流動性に難があることもあり、最悪の場合は「売るに売れない」事態も十分考えられる。


  • しかし、筆者は今からの日本の国債投資を奨めているはわけではない。実際、日本の国債価格は歴史的な低利回りになっている。価格高騰の理由は色々考えられるが、別の機会に述べてみたい。ただ、この推移には大変注目している。まるで「国債が仕手化」しているように見られるからである。

日本の土地価格を考える
  • 日本の土地価格については、「もう底をつき、今後は少しずつ上昇する」「底についたが当分横這いであろう」「まだまだ底に達していない。まだ下がりつづける。」と色々な意見がある。そこで、今週は日本の地価の動向を筆者 なりに予想してみる。結論から申せば「土地の下落も最終局面に来ており、場所によってはそろそろ横這もしくは上昇に転ずる」と考えている。理由は3/31(第9号)「日本の株式を考える」で述べた通りであるが、それを列記すれば次の通りである。
    1. 政府の土地の流動化策が出され、不良資産処理が一歩進む。
    2. 都市部の容積率の緩和策などで都心の土地の割安感が出てくる。
    3. サイクル的には不動産もそろそろ動き出して良いと考えられる。
    4. バブル景気に湧く地域から見れば、日本の土地、特に東京の土地が割安と感じられ、土地取得の動きが活発化する。
    さらにこれに追加すれば、「金利の低下」「金融ビッグバンによる金融拠点としての東京の見直し」「バブル期に計画されたビル建設が一段落し、ビル供給が細っている」「政府の土地の流動化策の追加(土地税制の改訂などが考えられる)」などが考えられる。
    ではいつ頃からその動きが現われるかであるが、筆者は最後の「政府の土地の流動化策の追加」に注目している。案は現在も検討されていると考えられるが、この具体策が出てくるころから土地の動きが顕在化しいくると予想する。

  • しかし「地価の上昇」があるとしても、今回はその地域が限定されると予想される。つまり土地ならどこでも上がると言うわけでなく、一等地と言われる所だけが、ピンポイント的に活発に取り引きされるのである。「日本列島改造計画時」には全国の土地が取り引きの対象となった。ブ-ムが去って、地方の土地の処置にこまった不動産開発業者は、これにこり、前回のバブル時には大都市圏の土地に投資を集中させた。したがって次に土地の投資ブ-ムが来たら、この流れはもっと極端になると考えられる。
    また、金融機関も前回のバブルでこりており、土地投資にはあまり積極的にはなれまい。つまりバブル 的なものが起こるとしても、それは「ミニバブル」「ミニミニバブル」と言ったものであろう。しかし、一等地の地価が上昇すれば、二等地・三等地の地価にも良い影響は与え、混迷する「金融機関の不良債権問題」にもある程度助けにはなるであろう。

  • 土地取り引きの活発化を示す例はあまり聞かないが、テレビの「ワイドショ-」で放送された「原宿駅前テント村立ち退き騒動」が注目される。筆者は一つの事例で、全体の動きを論ずることは好まないが、後で振り返ったたらこのようなことが、一つの現象の発端であったと言うこともあるので、興味が持たれる。この騒動についてはご存じの方も多いと思われるが、大体の経緯を述べると次の通りである。
    1. 原宿駅前の空き地にテントを建て商売をしていた業者に2月に急に「立ち退き要請」が地主側からあった。(契約は毎月更新されていた)
    2. どうも最近地主が変わったらしく、新しい地主はそこにビルを建てるらしい。
    3. 業者側はそれではこまると弁護士を立て闘う予定
    と言うことらしいが、それ以降の経過は放送されていないので、よくわからない。筆者が注目したのは、業者が払っている使用料の高さである。一店舗当り一月110万円位とのことである。一月に110万円払っても、利益があるのだから、やはり東京の一等地と言うものは収益力があると感心させられる。またここには20店舗くらいのテントがあり、それから計算すると地主も年間で2億円くらいの使用料収入があったと思われる。土地の広さははっきりしないが、新しい地主はそこにビルを建てた方がさらに大きな利益が期待できると判断したのであろう。ひょっとしたら「容積率の緩和策」もあり、ビルを建てても採算に乗るようになったのかもしれない。いずれにしても、注目される事例ではある。

  • 今後の筆者の予想する地価の動向は以上の通りであるが、参考までに、超長期にわたる地価動向の予想はこれとちょっと異なる。30年以上のスパンで見るなら、日本の地価はやはり下落するのではないかと考える。主な理由は次の通りである。
    1. 日本の人口は2,007年をピ-クに減少に転ずる。都会はもう少し後にピ-クを向かえるが、人口の減少は土地需要の減少につながる。
    2. 世界的に見て、現在の日本の地価は異常に高い。一説によれば今の日本の土地代金で米国が四つ買えるそうである。いずれはこれが調整される動きが出てくる。(土地の高い日本から土地の安い海外に工場が移ると言うのも一つの動きであろうし、世界的には人口は増えるのだから日本以外の国では土地の価格が上昇すること考えられる)
    日本の地価が高い原因は色々考えられるが、筆者は一番が「戦後の地方から都会への大量の人の流入」と考えている。したがって反対に、人口の減少は土地の価格の下落の要因となるであろう。また世界の地価動向との比較では「為替水準」も考慮する必要がある。仮に遠い将来、日本経済が活力をなくし、円安が進めば、土地価格の総額も国際的に見ても妥当な線に近づくと思われる。
    いずれにしても、超長期にわたる経済の予測には不確実なことがつきまとうので、はっきりしたことは言えない。ただ経済の底流にはこうゆう要素もあると考えているだけである。



日常的に起こる経済問題をトーク形式で解説
日頃忙しいビジネスマンへのオンラインマガジン



97/4/7(第10号)「当マガジン経済予測のレビュ-」
97/3/31(第9号)「日本の株式を考える」
97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レ-トの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レ-トの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レ-トを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」