平成9年2月10日より
経済コラムマガジン



99/4/5(第109号)


寡占市場の話
  • 寡占の種類
    市場を一社の企業が占有している状態が独占であるが、現実には純粋な独占はあまりないケースである。しかし少数の企業で市場をほぼ独占している、つまり寡占の状態はよくある。また有力な数社の大企業の周りに多数の小規模の企業が存在する場合も、実質的には寡占と呼ぶことができる。このような場合には周りの多数の小規模の企業同士は完全競争に近い状態にあり、競争的周辺部分と称されることもある。
    寡占市場は独占市場と違い、企業同士の競争は行われる。また、市場の置かれている状況により、競争の度合いも異なってくる。例えばターゲットとなるライバル企業と言うものがはっきりしている場合は、競争が熾烈を極めることもある。このような競争的な寡占市場がある一方、上位企業が協調的な場合もある。この場合には、これらの企業は事実上独占市場を形成することになる。
    寡占を生産物や取り扱う製品や商品の形態で分類することがある。一つが「製品差別型寡占」であり、もう一つが「資本集中型寡占」である。前者はほとんどの消費財やサービス、さらに小売業などが該当する。このような業界では製品の差別化が参入障壁として使われる。競争の上では自社の製品と他社の製品の違いが強調される。各社とも差別化のため多大の宣伝広告費を継続的に使い、この蓄積が参入障壁を形成することになる。通常、この寡占市場では価格競争は活発には行われない。例えばデパートにおいては同じブランドの商品を同じ価格で販売しているケースがよくある。一方、デパートは自分達の店鋪全体のイメージアップに経費を使い、このような方面での競争が激しい。
    一方、資本集中型寡占は、鉄鋼や石油化学などの素材産業によく見られる寡占の形態である。生産物には各社でそれほど差違がないことが特徴である。資本集中型寡占では「規模の経済性」が大きく働く。つまり一般的に規模が大きいプラントを持つ企業ほど、単位当たりのコストが小さく、価格競争上優位に立つ。またこの規模の経済性が大きくなるほど、小資本にとって不利となり、市場の参入は困難となる。つまり生産物の種類によって、寡占の市場での競争形態が決定されることになる。また市場に存在できる企業の数も、その市場の規模によって大体決まってくる。また資本集中型の寡占下では、低コスト維持のための稼働率確保が重要となり、どうしても過剰生産による価格競争に落ち入りやすい。
    上記で寡占の二つの形態について簡単に説明したが、総ての産業がどちらかに振り分けられると言う訳ではなく、両者の中間と言う存在も多い。自動車などはこの例であろう。たしかに規模の経済性は大きいが、他社との競争は価格だけでなく、製品の差別化の方面でも行われる。逆に、差別的競争を行っていると考えられる小売業でも、チエーン展開を行っているコンビニなどは規模の経済性が働き、資本集中型寡占の要素も兼ね備えている。
    このようにどの業界も両方の寡占の形態を持ち合わせている。どちらの色彩が強いかと言うことである。そして資本集中型寡占に近い場合には価格競争に成りやすく、製品差別型寡占に近いほど広告などによる差別化の競争が激しくなる傾向が強い。

  • 寡占下の競争
    一口に寡占と言っても、極めて企業の数が少なく独占に近い場合と、有力な企業がなくほぼ完全競争に近いケースがある。もちろんより独占に近い方が価格は高く維持され、利益も大きくなる。
    寡占下においては、市場の成長の度合いによっても競争状態が変わってくる。市場の成長率が大きくなるほど競争は激しくなる。市場が成長すると言うことは、そこに供給の空白が生じることになる。この空白を自分が埋めない場合には、ライバル企業や他からの参入者が埋めると言う事態になると互いに想定する。したがってこの空白をめぐり、自然と競争が激しくなるのである。特に規模の経済性が大きい場合には、企業間の競争は一段と激しくなる。
    反対に成熟し、ほとんど成長のない市場では、協調的な寡占となる。この一つの説明は、このような市場での競争激化が既存の企業の退出の原因となり、市場に空白が生じ、この空白をめぐる競争が発生したり、新たなる参入を招くおそれが生じることである。特に新たなる参入者が協調的でない場合には、競争の発生と言うリスクに直面する。したがってこのような業界では、あえて相手のテリトリーを侵してまで競争を仕掛けると言う雰囲気はなくなるのである。
    これまで述べて来たことを総合すると、販売する製品や商品に差違がなく、企業数が限られており、成長性のない市場ではより協調的な寡占となる。そしてこのような要素を多く持つ業界ではしばしば闇カルテルが結ばれ、独禁法上で問題になるケースが多い。これも市場の構造から来ているのである。昔からこのような業界にはよく「ミスターカルテル」と呼ばれる人物がいるものである。しかし協調はこのような業界にとっては合理的な行為なのである。
    しかし、このような業界でも、業界の秩序に従わないアウトサイダーがいるケースがある。この場合にはアウトサイダーをめぐり激しい競争が行われることになる。特に製品に差違がなく同質の場合には、価格競争がとことん限界を越えて行われることもある。
    ところで長く協調的な寡占下にあった企業は競争力がなくなってしまっているケースがある。このような業界が国際化の進展で海外の企業との競争にさらされると、たちどころに敗れてしまうのである。日本においてもこれに近い業界は容易に思いつく。

来週号では、寡占下における価格の決定について述べ、また所得の分配にも触れたい。さらに都知事選にも言及することになる。
日本の2月の失業者数は313万人に増え、失業率も4.6%に達した。今後も失業者数は増える見込みである。日本における失業で一番問題なことは「誰も真剣にこの問題を考えていないこと」である。少なくとも自分が失業することはないと考えている90%位の人々にとっては縁のない話だからである。長らく日本は「人手不足」の状態が続いていたため、失業への対応がまるで出来ていないのである。しかし筆者は「失業は極めて重大な問題」と考えている。今は、失業を個人の問題として取り上げられているが、これが社会問題化するのは時間の問題である。この失業問題については後日また述べたい。



99/3/29(第108号)「完全競争市場の話」
99/3/22(第107号)「独占市場の話」
99/3/15(第106号)「本誌の経済予想とその間違い」
99/3/8(第105号)「景気の現状(99年春)」
99/3/1(第104号)「立派な社会と景気回復」
99/2/22(第103号)「現代の日本経済と投資」
99/2/15(第102号)「需給ギャップと投資」
99/2/8(第101号)「99年度の経済を見通す」
99/2/1(第100号)「公共投資の将来を考える」
99/1/25(第99号)「今後の景気対策を考える(その2)」
99/1/18(第98号)「景気の見通しを考える」
99/1/11(第97号)「今後の景気対策を考える(その1)」
98/12/28(第96号)「不況の原因と消費税減税を考える」
98/12/21(第95号)「米国経済の光と影を考えるーーその2」
98/12/14(第94号)「米国経済の光と影を考えるーーその1」
98/12/7(第93号)「自自連立政権を考える」
98/11/30(第92号)「公共投資と経済を考えるーーその2」
98/11/23(第91号)「緊急経済対策を考える」
98/11/16(第90号)「公共投資と経済を考えるーーその1」
98/11/9(第89号)「「空気」を考えるーーその2」
98/11/2(第88号)「「空気」を考えるーーその1」
98/10/26(第87号)「景気対策論議を考える」
98/10/19(第86号)「為替レートの今後のトレンドを考える」
98/10/12(第85号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその3」
98/10/5(第84号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその2」
98/9/28(第83号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその1」
98/9/21(第82号)「為替レートのトレンドを考える」
98/9/14(第81号)「バブルの清算と公金投入を考える」
98/9/7(第80号)「公金投入の整合性を考える」
98/8/31(第79号)「政治と経済の混乱を考える」
98/8/10(第78号)「今回の不況の原因を考える」
98/8/3(第77号)「新政権の人事を考える」
98/7/27(第76号)「小淵新自民党総裁誕生を考える」
98/7/20(第75号)「橋本総理退陣を考える」
98/7/13(第74号)「マスコミの驕りを考えるーーその2」
98/7/6(第73号)「マスコミの驕りを考えるーーその1」
98/6/29(第72号)「参院選と経済を考える」
98/6/22(第71号)「為替介入の背景を考える」
98/6/15(第70号)「橋本総理と円安を考える」
98/6/8(第69号)「日本の金融を考える」
98/6/1(第68号)「経済への関心を考える」
98/5/25(第67号)「世論と経済政策を考えるーーその2」
98/5/18(第66号)「世論と経済政策を考えるーーその1」
98/5/11(第65号)「アンケートと経済政策を考える」
98/5/4(第64号)「今回の景気対策を考える」
98/4/27(第63号)「消費の限界を考えるーーその2」
98/4/20(第62号)「消費の限界を考えるーーその1」
98/4/13(第61号)「恒久減税を考える」
98/4/6(第60号)「今回の自民党の景気対策を考える」
98/3/30(第59号)「米国の対日経済要求を考える」
98/3/23(第58号)「新日銀総裁の就任を考える」
98/3/16(第57号)「今回の不況の深刻さを考える」
98/3/9(第56号)「日米の景気対策を考える」
98/3/2(第55号)「日経新聞と経済を考えるーーその2」
98/2/23(第54号)「日経新聞と経済を考えるーーその1」
98/2/16(第53号)「貸し渋りと景気を考える」
98/2/9(第52号)「政治と経済を考える」
98/2/2(第51号)「官僚と経済を考える」
98/1/26(第50号)「「小さな政府」を考えるーーその3」
98/1/19(第49号)「「小さな政府」を考えるーーその2」
98/1/12(第48号)「「小さな政府」を考えるーーその1」
97/12/22(第47号)「需要不足の日本経済を考える」
97/12/15(第46号)「景気の現状と対策を考えるーーその8」
97/12/8(第45号)「景気の現状と対策を考えるーーその7」
97/12/1(第44号)「京都会議と経済を考える」
97/11/24(第43号)「景気の現状と対策を考えるーーその6」
97/11/17(第42号)「景気の現状と対策を考えるーーその5」
97/11/10(第41号)「景気の現状と対策を考えるーーその4」
97/11/3(第40号)「景気の現状と対策を考えるーーその3」
97/10/27(第39号)「景気の現状と対策を考えるーーその2」
97/10/20(第38号)「景気の現状と対策を考えるーーその1」
97/10/13(第37号)「市場の心理を考える」
97/10/6(第36号)「公共事業とマスコミを考える」
97/9/29(第35号)「リクルート事件と経済を考える」
97/9/22(第34号)「ロッキード事件と経済を考える」
97/9/15(第33号)「住宅と貯蓄を考える(その2)」
97/9/8(第32号)「住宅と貯蓄を考える(その1)」
97/9/1(第31号)「労働組合と経済を考える」
97/8/25(第30号)「競争時代の賃金を考える」
97/8/18(第29号)「米国経済の生産性の向上を考える」
97/8/11(第28号)「米国の景気を考える(その2)」
97/8/4(第27号)「米国の景気を考える(その1)」
97/7/28(第26号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その2)」
97/7/21(第25号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その1)」
97/7/14(第24号)「香港返還と中国経済を考える(その2)」
97/7/7(第23号)「香港返還と中国経済を考える(その1)」
97/6/30(第22号)「日本の米国債保有を考える」
97/6/23(第21号)「投機と市場を考える」
97/6/16(第20号)「規制緩和と日米関係を考える」
97/6/9(第19号)「ビックバンと為替を考える」
97/6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」
97/5/26(第17号)「内需拡大と公共工事を考える(その1)」
97/5/19(第16号)「金利と為替を考える」
97/5/12(第15号)「規制緩和と景気を考える」
97/5/5(第14号)「為替の変動を考える」
97/4/28(第13号)「日本の物価と金利を考える(その2)」
97/4/21(第12号)「日本の物価と金利を考える(その1)」
97/4/14(第11号)「日本の土地価格を考える」
97/4/7(第10号)「当マガジン経済予測のレビュー」
97/3/31(第9号)「日本の株式を考える」
97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レートの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レートの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レートを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」

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