- マクロ経済動向
景気の動向には誰でも関心がある。堺屋経済企画庁長官は昨年暮れには「景気動向について、変化の胎動が感じられる」と述べ論議を呼んだ。しかし、ほとんどの経済人やエコノミストはこれに異義を唱えており、99年度のプラス成長は無理と考えている。筆者も景気はまだ底を打っていないと考えている。そこで景気の現状はどの程度なのであろうか、今週号ではこれを検証してみることにする。 経済企画庁が公表する四半期毎のGDP 速報は基本的なもので、各方面から注目を集めるが、公表されるまで3ヶ月と多少時間を要する。3月末に前年の10〜12月分が公表される。現在の1〜3月分の公表は6月末である。一方、日本経済研究センターは超短期経済予測として一ヶ月半くらい早くこの数値を予測と言う形で発表している。2月15日に発表した10〜12月のGDP予測値は前期比マイナス0.1%、年率マイナス0.5%である。依然マイナスであるが、絶対値はかなり小さくなっていることはたしかである。これは堺屋長官の発言をある程度裏付けているとも受け取られる。しかし、マイナスではあるが数値がこの程度に納まったのも、公共投資の寄与が大きかったせいであり、まだ、景気は自律的な回復の段階ではないと考えられる。 日本経済研究センターは、この発表に併せて1〜3月分の予測も行っている。今回のこれは前期比マイナス0.5%、年率マイナス1.8%と再び状況は悪化すると予測している。この原因の大きなものは民間の設備投資の一段の抑制と指摘している。ところで他のシンクタンクの多くが経済予想を各種の方程式によるシュミレーションによって行っているのに対して、日本経済研究センターの予測は各需要項目の予想値を積み上げる方式を採っている。方程式自体が日々変わる可能性のある今日では、日本経済研究センターの予測方法の方がより正確に予測できると筆者は考えている。またこのような予測方式は、より期間が短いほど精度が上がると考えられる。したがって同センターの1〜3月の予測をかなり実態に近いものと判断している。
- 各種の経済数値の動向
マクロの経済数値の予測は前述の通りであり、これ以上述べることはない。しかし、個々の経済数値を検討することによって、今後の経済の動向が垣間見ることができると考える。 ところで公表されてる直近の個々の数値にはろくな数字はない。景気動向を占う上で重視している住宅着工戸数も、1月は7万8千件と前年同月比11%も減少し、極めて不調である。これで25ヶ月連続前年水準を下回ったことになり、年率換算の着工戸数も116万戸と近年にない低水準である。 この他、1月に限っても悪い数字ならどれだけでもある。半導体生産額、粗鋼生産高、大口電力使用量、広告扱い高、リース取扱高などは全て前年同月より相当悪い。完全失業者数も298万人と最悪である。このような状況ではとても景気が底を打ったとは言えない。 今回の景気回復を遅らせている原因の一つは公共事業の消化の遅れである。補正予算は決まったが、その実行が遅れているのである。これも橋本前政権の置き土産である。98年度の当初予算が財政再建を目指した緊縮予算だったため、公共事業の事業計画そのものの策定が遅れているのである。さらに事業を実際に行う地方自治体が財源不足により、国の補助金が付いても、公共事業が実行できない状態にある。これが従来の景気対策の実行時と事情が異なる点である。このことについては先週号でも述べた事柄であるが、早急に国と地方自治体は公共事業の財源について調整を行うべきである。このままでは何のための景気対策なのか分からなくなるのである。 住宅着工戸数と並んで筆者が注目しているのは地価の動向である。しかしこれも芳しくない。国土庁発表の1月1日時点の短期地価動向調査の結果によれば、3大都市圏で3ヶ月前に比べ下落した地点の割合は、商業地、住宅地のどちらも増えている。特に商業地で上昇した地点はゼロであった。つまり地価の下落傾向は依然続いていることを示している。筆者は、この3大都市圏の地価動向の変転が、景気動向の変転につながると言うくらい重視している。とにかく3ヶ月後の調査結果が注目される。 一方、悪い徴候を示す経済数値が圧倒的に多い中で、わずかであるが明るい数値も散見される。為替が円安に推移していることがまず挙げられる。また一旦上昇した長期金利も低下し、落ち着いた動きとなっている。以前から本誌も主張しているように米国経済も順調に推移している。筆者は、米国経済は大統領選挙が来年にあり、今年は大丈夫と考えている。ただしグリーンスパン議長は来年6月に退任する見通しである。 個別の数値でも良いものがある。1月のサラリーマン世帯の消費支出が前年同月を2.6%上回った。原因は景気対策の公共工事の増加になどにより可処分所得が増えたことである。特にパソコンなどの耐久財の消費が好調である。製品の在庫率も多少低下してきており、1月の生産指数も前月比0.8%上昇となっている。倒産件数も激減している。これは政府系金融機関が貸し出しを増やしていることに加え、政府機関の信用保証枠を拡大しているからである。特に信用保証については、ブラックリストに掲載されている企業を除いては、ほとんど無審査で保証が行われているのが現状である。 たしかに住宅着工戸数は依然対前年同月比で減少しているが、昨年11,12月の住宅融資の申し込みが対前年同月比で50%近く増加しており、2月以降に着工戸数は急増することが期待される。2月以降の数値が注目される。 総合的には景気は今「ドン底」を這っている状態であろう。たしかに周りは真っ暗であるが遠くにわずかであるがほのかに明かりが見える状況と考える。一日の時間で言えば、午前の5時半くらいと思われる。筆者は、景気が本格的に回復するには、地方の公共投資が増えることと政府の追加の景気対策が是非とも必要と考えている。しかし、これに対しては「さらなる財政支出の増加は金利の上昇を招く」と言う意見を主張する人々が必ず出てくると予想される。今回の景気回復には、このような「財政均衡主義者」や狂信的な「小さな政府信奉者」が最大の障害である。彼等の主張通り財政再建路線を行い、結果的に不況となり、税収が減少し、財政がさらに悪化したのであり、彼等はこのことを意識的に忘れているのである。
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