平成9年2月10日より
経済コラムマガジン



99/3/8(第105号)


景気の現状(99年春)
  • マクロ経済動向
    景気の動向には誰でも関心がある。堺屋経済企画庁長官は昨年暮れには「景気動向について、変化の胎動が感じられる」と述べ論議を呼んだ。しかし、ほとんどの経済人やエコノミストはこれに異義を唱えており、99年度のプラス成長は無理と考えている。筆者も景気はまだ底を打っていないと考えている。そこで景気の現状はどの程度なのであろうか、今週号ではこれを検証してみることにする。
    経済企画庁が公表する四半期毎のGDP 速報は基本的なもので、各方面から注目を集めるが、公表されるまで3ヶ月と多少時間を要する。3月末に前年の10〜12月分が公表される。現在の1〜3月分の公表は6月末である。一方、日本経済研究センターは超短期経済予測として一ヶ月半くらい早くこの数値を予測と言う形で発表している。2月15日に発表した10〜12月のGDP予測値は前期比マイナス0.1%、年率マイナス0.5%である。依然マイナスであるが、絶対値はかなり小さくなっていることはたしかである。これは堺屋長官の発言をある程度裏付けているとも受け取られる。しかし、マイナスではあるが数値がこの程度に納まったのも、公共投資の寄与が大きかったせいであり、まだ、景気は自律的な回復の段階ではないと考えられる。
    日本経済研究センターは、この発表に併せて1〜3月分の予測も行っている。今回のこれは前期比マイナス0.5%、年率マイナス1.8%と再び状況は悪化すると予測している。この原因の大きなものは民間の設備投資の一段の抑制と指摘している。ところで他のシンクタンクの多くが経済予想を各種の方程式によるシュミレーションによって行っているのに対して、日本経済研究センターの予測は各需要項目の予想値を積み上げる方式を採っている。方程式自体が日々変わる可能性のある今日では、日本経済研究センターの予測方法の方がより正確に予測できると筆者は考えている。またこのような予測方式は、より期間が短いほど精度が上がると考えられる。したがって同センターの1〜3月の予測をかなり実態に近いものと判断している。

  • 各種の経済数値の動向
    マクロの経済数値の予測は前述の通りであり、これ以上述べることはない。しかし、個々の経済数値を検討することによって、今後の経済の動向が垣間見ることができると考える。
    ところで公表されてる直近の個々の数値にはろくな数字はない。景気動向を占う上で重視している住宅着工戸数も、1月は7万8千件と前年同月比11%も減少し、極めて不調である。これで25ヶ月連続前年水準を下回ったことになり、年率換算の着工戸数も116万戸と近年にない低水準である。
    この他、1月に限っても悪い数字ならどれだけでもある。半導体生産額、粗鋼生産高、大口電力使用量、広告扱い高、リース取扱高などは全て前年同月より相当悪い。完全失業者数も298万人と最悪である。このような状況ではとても景気が底を打ったとは言えない。
    今回の景気回復を遅らせている原因の一つは公共事業の消化の遅れである。補正予算は決まったが、その実行が遅れているのである。これも橋本前政権の置き土産である。98年度の当初予算が財政再建を目指した緊縮予算だったため、公共事業の事業計画そのものの策定が遅れているのである。さらに事業を実際に行う地方自治体が財源不足により、国の補助金が付いても、公共事業が実行できない状態にある。これが従来の景気対策の実行時と事情が異なる点である。このことについては先週号でも述べた事柄であるが、早急に国と地方自治体は公共事業の財源について調整を行うべきである。このままでは何のための景気対策なのか分からなくなるのである。
    住宅着工戸数と並んで筆者が注目しているのは地価の動向である。しかしこれも芳しくない。国土庁発表の1月1日時点の短期地価動向調査の結果によれば、3大都市圏で3ヶ月前に比べ下落した地点の割合は、商業地、住宅地のどちらも増えている。特に商業地で上昇した地点はゼロであった。つまり地価の下落傾向は依然続いていることを示している。筆者は、この3大都市圏の地価動向の変転が、景気動向の変転につながると言うくらい重視している。とにかく3ヶ月後の調査結果が注目される。
    一方、悪い徴候を示す経済数値が圧倒的に多い中で、わずかであるが明るい数値も散見される。為替が円安に推移していることがまず挙げられる。また一旦上昇した長期金利も低下し、落ち着いた動きとなっている。以前から本誌も主張しているように米国経済も順調に推移している。筆者は、米国経済は大統領選挙が来年にあり、今年は大丈夫と考えている。ただしグリーンスパン議長は来年6月に退任する見通しである。
    個別の数値でも良いものがある。1月のサラリーマン世帯の消費支出が前年同月を2.6%上回った。原因は景気対策の公共工事の増加になどにより可処分所得が増えたことである。特にパソコンなどの耐久財の消費が好調である。製品の在庫率も多少低下してきており、1月の生産指数も前月比0.8%上昇となっている。倒産件数も激減している。これは政府系金融機関が貸し出しを増やしていることに加え、政府機関の信用保証枠を拡大しているからである。特に信用保証については、ブラックリストに掲載されている企業を除いては、ほとんど無審査で保証が行われているのが現状である。
    たしかに住宅着工戸数は依然対前年同月比で減少しているが、昨年11,12月の住宅融資の申し込みが対前年同月比で50%近く増加しており、2月以降に着工戸数は急増することが期待される。2月以降の数値が注目される。
    総合的には景気は今「ドン底」を這っている状態であろう。たしかに周りは真っ暗であるが遠くにわずかであるがほのかに明かりが見える状況と考える。一日の時間で言えば、午前の5時半くらいと思われる。筆者は、景気が本格的に回復するには、地方の公共投資が増えることと政府の追加の景気対策が是非とも必要と考えている。しかし、これに対しては「さらなる財政支出の増加は金利の上昇を招く」と言う意見を主張する人々が必ず出てくると予想される。今回の景気回復には、このような「財政均衡主義者」や狂信的な「小さな政府信奉者」が最大の障害である。彼等の主張通り財政再建路線を行い、結果的に不況となり、税収が減少し、財政がさらに悪化したのであり、彼等はこのことを意識的に忘れているのである。

本誌も創刊後2年以上経過した。これまで数々の経済の見通しを行ってきたが、中には間違ったものもある。来週号ではこれらを取り上げ、なぜ間違ったかについて反省、あるいは言い訳を行いたいと考えている。
日本の株式も上昇している。昨年夏場の金融危機前の水準にあと一歩である。しかし筆者は、日本の株価は地価の動向に左右される割合が大きいと考えている。したがって本格的に株価が上昇に転ずるには、地価が底を打つことが必要と考える。



99/3/1(第104号)「立派な社会と景気回復」
99/2/22(第103号)「現代の日本経済と投資」
99/2/15(第102号)「需給ギャップと投資」
99/2/8(第101号)「99年度の経済を見通す」
99/2/1(第100号)「公共投資の将来を考える」
99/1/25(第99号)「今後の景気対策を考える(その2)」
99/1/18(第98号)「景気の見通しを考える」
99/1/11(第97号)「今後の景気対策を考える(その1)」
98/12/28(第96号)「不況の原因と消費税減税を考える」
98/12/21(第95号)「米国経済の光と影を考えるーーその2」
98/12/14(第94号)「米国経済の光と影を考えるーーその1」
98/12/7(第93号)「自自連立政権を考える」
98/11/30(第92号)「公共投資と経済を考えるーーその2」
98/11/23(第91号)「緊急経済対策を考える」
98/11/16(第90号)「公共投資と経済を考えるーーその1」
98/11/9(第89号)「「空気」を考えるーーその2」
98/11/2(第88号)「「空気」を考えるーーその1」
98/10/26(第87号)「景気対策論議を考える」
98/10/19(第86号)「為替レートの今後のトレンドを考える」
98/10/12(第85号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその3」
98/10/5(第84号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその2」
98/9/28(第83号)「経済の「あいまいさ」を考えるーーその1」
98/9/21(第82号)「為替レートのトレンドを考える」
98/9/14(第81号)「バブルの清算と公金投入を考える」
98/9/7(第80号)「公金投入の整合性を考える」
98/8/31(第79号)「政治と経済の混乱を考える」
98/8/10(第78号)「今回の不況の原因を考える」
98/8/3(第77号)「新政権の人事を考える」
98/7/27(第76号)「小淵新自民党総裁誕生を考える」
98/7/20(第75号)「橋本総理退陣を考える」
98/7/13(第74号)「マスコミの驕りを考えるーーその2」
98/7/6(第73号)「マスコミの驕りを考えるーーその1」
98/6/29(第72号)「参院選と経済を考える」
98/6/22(第71号)「為替介入の背景を考える」
98/6/15(第70号)「橋本総理と円安を考える」
98/6/8(第69号)「日本の金融を考える」
98/6/1(第68号)「経済への関心を考える」
98/5/25(第67号)「世論と経済政策を考えるーーその2」
98/5/18(第66号)「世論と経済政策を考えるーーその1」
98/5/11(第65号)「アンケートと経済政策を考える」
98/5/4(第64号)「今回の景気対策を考える」
98/4/27(第63号)「消費の限界を考えるーーその2」
98/4/20(第62号)「消費の限界を考えるーーその1」
98/4/13(第61号)「恒久減税を考える」
98/4/6(第60号)「今回の自民党の景気対策を考える」
98/3/30(第59号)「米国の対日経済要求を考える」
98/3/23(第58号)「新日銀総裁の就任を考える」
98/3/16(第57号)「今回の不況の深刻さを考える」
98/3/9(第56号)「日米の景気対策を考える」
98/3/2(第55号)「日経新聞と経済を考えるーーその2」
98/2/23(第54号)「日経新聞と経済を考えるーーその1」
98/2/16(第53号)「貸し渋りと景気を考える」
98/2/9(第52号)「政治と経済を考える」
98/2/2(第51号)「官僚と経済を考える」
98/1/26(第50号)「「小さな政府」を考えるーーその3」
98/1/19(第49号)「「小さな政府」を考えるーーその2」
98/1/12(第48号)「「小さな政府」を考えるーーその1」
97/12/22(第47号)「需要不足の日本経済を考える」
97/12/15(第46号)「景気の現状と対策を考えるーーその8」
97/12/8(第45号)「景気の現状と対策を考えるーーその7」
97/12/1(第44号)「京都会議と経済を考える」
97/11/24(第43号)「景気の現状と対策を考えるーーその6」
97/11/17(第42号)「景気の現状と対策を考えるーーその5」
97/11/10(第41号)「景気の現状と対策を考えるーーその4」
97/11/3(第40号)「景気の現状と対策を考えるーーその3」
97/10/27(第39号)「景気の現状と対策を考えるーーその2」
97/10/20(第38号)「景気の現状と対策を考えるーーその1」
97/10/13(第37号)「市場の心理を考える」
97/10/6(第36号)「公共事業とマスコミを考える」
97/9/29(第35号)「リクルート事件と経済を考える」
97/9/22(第34号)「ロッキード事件と経済を考える」
97/9/15(第33号)「住宅と貯蓄を考える(その2)」
97/9/8(第32号)「住宅と貯蓄を考える(その1)」
97/9/1(第31号)「労働組合と経済を考える」
97/8/25(第30号)「競争時代の賃金を考える」
97/8/18(第29号)「米国経済の生産性の向上を考える」
97/8/11(第28号)「米国の景気を考える(その2)」
97/8/4(第27号)「米国の景気を考える(その1)」
97/7/28(第26号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その2)」
97/7/21(第25号)「内需拡大と整備新幹線を考える(その1)」
97/7/14(第24号)「香港返還と中国経済を考える(その2)」
97/7/7(第23号)「香港返還と中国経済を考える(その1)」
97/6/30(第22号)「日本の米国債保有を考える」
97/6/23(第21号)「投機と市場を考える」
97/6/16(第20号)「規制緩和と日米関係を考える」
97/6/9(第19号)「ビックバンと為替を考える」
97/6/2(第18号)「内需拡大と公共工事を考える(その2)」
97/5/26(第17号)「内需拡大と公共工事を考える(その1)」
97/5/19(第16号)「金利と為替を考える」
97/5/12(第15号)「規制緩和と景気を考える」
97/5/5(第14号)「為替の変動を考える」
97/4/28(第13号)「日本の物価と金利を考える(その2)」
97/4/21(第12号)「日本の物価と金利を考える(その1)」
97/4/14(第11号)「日本の土地価格を考える」
97/4/7(第10号)「当マガジン経済予測のレビュー」
97/3/31(第9号)「日本の株式を考える」
97/3/24(第8号)「たまごっちと携帯電話を考える」
97/3/17(第7号)「政府の景気対策を考える」
97/3/10(第6号)「オリンピックと景気を考える」
97/3/3(第5号)「為替レートの動向を考える(その2)」
97/2/24(第4号)「為替レートの動向を考える(その1)」
97/2/17(第3号)「日本の金利水準と為替レートを考える」
97/2/10(第2号)「国と地方の長期債務残高を考える」
97/2/1(第1号)「株価下落の原因を考える」「今後の景気動向を考える」

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