経済コラムマガジン 平成9年2月10日より
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18/5/21(986号)
北朝鮮情勢他

    北朝鮮の敗戦処理

    今週は筆者が最近関心を持った出来事をいくつか取上げる。最大の関心事はやはり米朝主脳会談の行方である。会談は6月12日に開催されることが決まり、この準備は進んでいる。ところで北朝鮮は独裁国家であり、金正恩委員長の動きが最重要である。しかしこの人物の行動は必ずしも合理的ではなく、発想が読みにくい。最近も、突然、南北閣僚級会議を中止にした。どうも韓国を軽んじているようだ。

    また北朝鮮のように閉鎖された国の情報は玉石混交である。何が正しくて何が誤っているのか判断することさえが難しい。そもそも金正恩委員長という人物はその時の気分で動いているところがある。したがっていつも理性的に行動していると思っていると判断を間違う。だから専門家と言われる人々にとっても北朝鮮の行動を予測することは難しい。だいたい米朝主脳会談なんて、ちょっと前までは誰も予想していなかった。


    筆者は、北朝鮮情勢を読むには小さな出来事や変化から全体を推理する他はないと思っている。これまで筆者が注目し参考にしたのは、トランプ大統領のツイッターや北朝鮮の美女応援団のユニフォームなどである。またトランプ陣営の人事異動も重要である。

    筆者はこのような推理を元に18/3/19(第978号)「米朝主脳会談を推理」18/3/26(第979号)「米中貿易戦争」を書いた。今のところこの推理に基づく話は概ね当っているようである。同様の手法で、今後の北朝鮮の動向を推理する。


    唐突に北朝鮮は米朝主脳会談の中止さえも示唆し、米国を揺さぶっている。しかし今の大きな流れは北朝鮮の敗戦処理である。ただし北朝鮮は無条件降伏をするつもりはなく、体制の保証など色々と条件を出している。おそらく水面下で進行している交渉の中味に北朝鮮は不満があると思われる。

    ボルトン大統領補佐官など強硬派は核放棄が確認できるまで、制裁を解除せず経済支援も行わないと明言している。これはリビア方式と呼ばれ、北朝鮮はこのボルトン補佐官の方針に反発しているという報道がある。これは本当と思われる。たしかにこれでは北朝鮮は干上がり、体制の維持がおぼつかなくなる。おそらく米側からそのうち現実的な譲歩がなされるものと筆者は見る。実際のところトランプ大統領はリビア方式は採らないと言っている。


    北朝鮮が本当に米朝主脳会談をキャンセルするか試金石となるイベントが今週予定されている。核実験場の廃棄である。もしこれが実行されるのなら、北朝鮮の主脳会談のキャンセルはないと見て良い。反対に、これが中止となれば要注意ということになる。

    たしかに2008年にも北朝鮮は「もう核開発は行わない」と核施設のクーリングタワー(冷却塔)を壊して見せた。ところがその後も密かに核兵器の開発を続けていたのである。したがって今回も信用できないという声がある。しかしボロボロのクーリングタワーと核実験場ではわけが違うと筆者は考える。また拘束していた3名の韓国系米国人を解放したりして、北朝鮮は既に持っているカードを切り始めている。今さらの主脳会談のキャンセルは考えにくい。


    金正恩委員長が習主席に会うため、短期間のうちに2度も中国を訪れている。専門家は、中国への接近は短期間での核放棄を迫る米国の圧力に対抗することが狙いと解説している。段階的に核放棄を行いたい北朝鮮を中国が助けてくれると金正恩委員長は期待しているという。中国も北朝鮮への存在感を維持するため、北朝鮮の考えを支持しているという。しかし中国はそのようには考えていないと筆者は思っている。

    筆者は、前から言っているように中国も北朝鮮の核放棄を強く願っているわけであり、本音では中国も即時の核兵器撤去に賛同していると推測する(ロシアも同様)。ただ中国の力では北朝鮮の非核化を実現できないのだから、米国に頼る他はないのである。この点では(共に中国が米国に対抗してくれるという話)、金正恩委員長が誤解している可能性はあると筆者は見ている。


    マイナス成長に危機感のない政治家

    森友・加計学園問題も取上げるが、ここでは簡単に済ます。両方とも議論が本質とかけ離れ話が段々と小さくなって、何が問題だったのかさえはっきりしなくなった。今日、移動に使った車が国会で問題になっている。ところで文書改竄事件で佐川前国税庁長官の不起訴が決まった。また国有地の安値売却問題も国に実害がないということで(森友に売却した土地は国に戻ってきている)、これも不起訴になる可能性がある。不起訴に対して不服の審査請求が出るかもしれないが、問題が終息に向かっているのはたしかであろう。


    18年1〜3月の実質経済成長率がマイナスに転落した。前期比で0.2%(年率で0.6%)のマイナスであった。とにかく日本の経済成長率が極めて低いことは、筆者はずっと指摘してきた。内閣府は「野菜やガソリンの値上げで消費者心理が一時的に悪化したから」と説明している。

    しかしマイナス成長は一時的ではなく、このゼロ近辺の成長率はこの先も続くものと筆者は見ている。したがって何事かが起れば、その分マイナスに沈むことになる。大きなトラブルを抱えていない普通の国の中で、経済成長率が最も低いのが日本である。しかもこの低成長が何年も続いている。


    日本の低成長は、経済政策が変わらない限りこのまま続くのである。筆者が一番驚くのは、このマイナスとなった経済成長を問題にする声がほとんど上がらないことである。この状態に慣れ切ったのか、マスコミもこの問題を全く取上げない。

    筆者は、経済政策を変えれば日本経済はもっと成長するとずっと主張してきた。しかし低成長が問題にならないのだから、今のところこのような話をまともに聞く人もほとんどいない。もしこれが問題と認識されるとしたなら、2期連続して成長率がマイナスになった場合であろう。この可能性はある。


    自民党のポスト安倍世代のリーダと目されている政治家が、全て財政再建派(財政規律派)という話が出ている(日経新聞5月16日朝刊)。具体的には、岸田政調会長、小渕優子特命小委員会会長、小泉進次郎筆頭副幹事長、河野外務大臣などである。説明を省略するが、この他にも石破元地方創成大臣や野田聖子総務大臣も財政規律派と目される。

    おそらくこれらの政治家の全ては消費増税の推進派と思われる。またこれらの政治家の後には支援者がいる。どうしてこれらの政治家が財政再建至上主義という思想に染まったのか謎である。まさか財務省が有望な政治家を昔から洗脳して来たとまでは言わないが不思議なことである。

    今年の秋には自民党の総裁選が行われるが、安倍一強体制は揺らいでいる。安倍総理としても総裁三選を確実なものにするには、これらの財政規律派政治家の意向を全て切捨てるわけには行かない。それにしてもトラブル続きで財務省がピンチに陥っている今日、何故、日経新聞がこのような記事をわざわざ載せたのかも注目される。安倍総理に対するプレッシャーという見方もできる。


    前記のように日本経済がマイナス成長になったのに、これらの政治家には危機感が全くない。そもそも先週号で説明したように、13年に日銀が異次元の金融緩和(国債の保有枠の撤廃)を始めたことによって財政再建は既に終了している。今日に到っての財政再建なんて一周遅れの発想であり、経済や財政に関し無知ということを示している(マスコミや御用学者の言っていることを鵜呑みにしている)。ポスト安倍と目されている全ての政治家は、現実を見て物事を考えるという思考力が決定的に欠けている(低い物価上昇率や日銀の金融緩和前から日本の金利水準は世界一低かったという現実)。

    米中貿易協議で、米国は中国に今年6月から来年6月にかけ、1,000億ドルの対米黒字の削減を要求した。さらにその翌年にはこれを2,000億ドルに増やすという。ただ米政府は、表向きにはこの話を否定している。どのような決着になるか不明であるが対中折衝が終われば、次は日本である。当然、日本には内需拡大による黒字削減を米国は迫って来ると思われる。そもそも貿易赤字国の米国が減税しているのに、貿易黒字国の日本が消費増税なんて考えられない。



来週号から筆者の財政政策をまとめて取上げる。

日大のアメフト部の事件が案外と大きくなった。まず今の時代に、このような監督がいることが信じられない。またこの監督は常務理事で大学の人事を左右するナンバー2という。したがって問題はアメフト部に止まらない可能性がある。「日大」自体がブラックという話が出てきても不思議はない。やっと19日になって日大の監督は辞任を表明したが、これでことが収まるのか注目される。



18/5/14(第985号)「環境の激変に対応できない財務官僚」
18/4/30(第984号)「「ノーパンしゃぶしゃぶ」事件の顛末」
18/4/23(第983号)「日米主脳会議に対する筆者の感想」
18/4/16(第982号)「通商摩擦は中国の敗北」
18/4/9(第981号)「米中の通商摩擦の行方」
18/4/2(第980号)「森友学園問題の真相」
18/3/26(第979号)「米中貿易戦争」
18/3/19(第978号)「米朝主脳会談を推理」
18/3/12(第977号)「トランプ政権の脆弱な経済スタッフ」
18/3/5(第976号)「米国でのシニョリッジ政策」
18/2/26(第975号)「世界的な「金余り」の実態」
18/2/19(第974号)「VIX指数の不正操作」
18/2/12(第973号)「VIX指数暴落か」
18/2/5(第972号)「日本政府の貸借対照表」
18/1/29(第971号)「日本の経済論壇の病根」
18/1/22(第970号)「再びノストラダムスの大予言」
18/1/15(第969号)「今年のキーワードは「渾沌」」
17/12/25(第968号)「狙いは需要創出政策の阻止」
17/12/18(第967号)「経済論議混迷の根源はNAIRU」
17/12/11(第966号)「日本の経済の専門家はおかしい」
17/12/4(第965号)「需要で日本の経済成長は決まる」
17/11/27(第964号)「続・「今から嘘をつくぞ」の決まり文句」
17/11/20(第963号)「PB黒字化は本当に国際公約か」
17/11/13(第962号)「これからの重大な政治課題」
17/11/6(第961号)「旧民進党の研究」
17/10/26(第960号)「48回衆議員選の分析」
17/10/16(第959号)「北朝鮮の国営メディアと同じ」
17/10/9(第958号)「総選挙の結果の予想」
17/10/2(第957号)「総選挙と消費増税」」
17/9/25(第956号)「解散は早い方が良い」」
17/9/18(第955号)「制裁の狙いと効果」」
17/9/11(第954号)「北朝鮮への「圧力と対話」」
17/9/4(第953号)「北朝鮮の核を考える」
17/8/28(第952号)「日本のテレビ局をBPOに告発」
17/8/14(第951号)「日本の構造改革派の変遷」
17/8/7(第950号)「今回の内閣改造について」
17/7/31(第949号)「加計問題の教訓」
17/7/24(第948号)「加計問題と日本のマスコミ」
17/7/17(第947号)「消化不良の参考人招致の質議」
17/7/10(第946号)「前川前事務次官の参考人招致」
17/7/3(第945号)「官邸への報復」
17/6/26(第944号)「加計学園の獣医学部新設騒動」
17/6/19(第943号)「小池都知事の不安煽り政治」
17/6/12(第942号)「米国のパリ協定離脱」
17/6/5(第941号)「テロ等準備罪(共謀罪)の話」
17/5/29(第940号)「安倍総理の憲法改正の提案」
17/5/22(第939号)「半島有事への日本の備え」
17/5/15(第938号)「朝鮮半島の非核化」
17/5/1(第937号)「予備自衛官の大幅増員を」
17/4/24(第936号)「理解されないシムズ理論の本質」
17/4/17(第935号)「シムズ理論と「バカの壁」」
17/4/10(第934号)「経済再生政策提言フォーラムとシムズ理論」
17/4/3(第933号)「シムズ理論の裏」
17/3/27(第932号)「シムズ理論とシムズ教授」
17/3/20(第931号)「シムズ理論とアベノミクス」
17/3/13(第930号)「アメリカの分断を考える」
17/3/6(第929号)「移民と経済成長」
17/2/27(第928号)「トランプ大統領のパリ協定離脱宣言」
17/2/20(第927号)「トランプ現象の研究」
17/2/13(第926号)「為替管理ルールの話」
17/2/6(第925号)「日米主脳会議への対策はアラスカ原油輸入」
17/1/30(第924号)「そんなに変ではないトランプ大統領」
17/1/16(第923号)「今年の展望と昨年暮れの出来事」


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